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【まとめ】意外と多い法定休暇の種類と義務の内容

有給休暇、産休、育休といった休暇・休業制度は認知度が高くなってきましたが、法定の制度、つまり法令による義務的な制度がどれくらいあるかご存じですか?

認知されると、今度は、企業の実務上、実際の取得の要否で揉めるわけですが、それではどの休暇・休業が義務で、何が任意なのか、何が有給・何が無給でもよいのか、補助の有無などご存じでしょうか?

今回は、経営者・人事担当者が知っておきたい休暇・休業制度の種類、賃金の要否、制度の内容について解説します。

法律で義務づけられている休暇・休業制度

法定の休暇・休業制度、つまり法律で付与することが義務づけられている制度は以下のとおりです。

  1. 年次有給休暇
  2. 産前産後休業
  3. 生理休暇
  4. 育児休業
  5. 介護休業
  6. 子の看護休暇
  7. 介護休暇
  8. 裁判員休暇

これらの休暇・休業制度は、法律で義務づけられているため、会社の就業規則にあろうがなかろうが、申出があれば付与しなければなりません。

冗談のような本当の話ですが「当社の就業規則では育児休業を定めていないので、従業員は育児休業を取得できない」と真剣な表情で断言する社長を見たときはびっくりしました。。。

ただ、人事労務管理をきちんとしている会社は、これらの休暇・休業制度について就業規則の中にきちんと規定しています。

その理由は、法律の中では明示されていない項目や手続きについて、就業規則の中で規定し整理しておかなければ、会社・従業員の双方が勝手に、都合よく解釈して、実際に必要になったときに揉めるためです。

それでは具体的に各休暇・休業制度を見ていきます。

1. 年次有給休暇

年次有給休暇は、労働基準法第39条(年次有給休暇)で規定されています。

名称のとおり、賃金の支払い義務があります

以下の記事で詳しく解説していますが、就業規則を定める上で重要なポイントは、何日前までに申請を行うのかという事前申請をきちんと記載しておくことです。

参考:年次有給休暇の対象、条件、付与日数、罰則等の詳細解説

2. 産前産後休業

いわゆる産休と呼ばれるもので、労働基準法第65条で規定されており、産前の休業と産後の休業があります

正社員のみならず、パートやアルバイトのような短時間労働者を含め、すべての出産予定の労働者に権利として付与されていることに注意が必要です。

労働基準法第65条(産前産後)
  1. 使用者は、6週間(多胎妊娠の場合にあっては14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
  2. 使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。

年次有給休暇と異なり、法律では有給・無給の規定をしていません

つまり、無給でも構わないわけですが、その場合は、就業規則にきちんと無給と規定することが大事です。

なお、健康保険に加入していれば、賃金の約2/3相当の出産手当金が支給されます。

さらに、申出をすることで、会社負担分を含め社会保険料が免除されます。これは会社側・労働者側双方へのメリットと言えます。

関連:産前産後休業の条件・期間・賃金・手当の基礎知識

3. 生理休暇

産休と同様に、生理休暇についても、正社員のみならず、パートタイム労働者を含めすべての女性労働者に法律上の権利として付与されています

また、就労ができない場合は「必要な日数」だけ休暇させなければならないため、会社側が何日までなどの制限を課すことはできません。

労働基準法第68条(生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置)
使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない。

ただし、生理休暇についても、法律では有給・無給に関する規定をしていません

つまり、無給で構いませんし、多くの企業では無給としているようです。

ちなみに、当事務所の顧問先で女性比率の高い職場では、月1日に限って有給とすることで女性従業員に配慮を示している会社もあります。

重要なポイントは、無給にしても、1日のみ有給としそれ以降は無給にするにしても、就業規則にその旨をきちんと規定することが大事です。

4. 育児休業

一般的に「育休」と略されますが、正式名称は「育児休業」です。育児「休暇」ではありません。

1歳までの子を養育する労働者であれば、男性でも女性でも労働者は請求ができ、請求があれば会社は育児休業を付与しなければなりません。

育児介護休業法第5条(育児休業の申出)
労働者は、その養育する1歳に満たない子について、その事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができる。
育児介護休業法第6条(育児休業申出があった場合における事業主の義務等)
事業主は、労働者からの育児休業申出があったときは、当該育児休業申出を拒むことができない。

育児休業についても、法律では有給・無給の規定をしていません

つまり、無給で構いませんが、その場合は、就業規則にきちんと無給と規定することが大事です。

ただし、育休中の労働者は、雇用保険から、最初の半年間は月給の67%、半年以降は月給の50%相当の育児休業給付金を受けることができます

また、会社側にも、労働者の休業期間中は届出をすることで、会社負担分を含め社会保険料が免除されるというメリットがあります。

育児休業について、原則の考え方はそれほど難しくないのですが、度重なる法改正、政治的な駆け引きによって、対象者の除外、期間の延長など例外事項が多く、制度の詳細な理解は社労士でも困難なものになっており、詳しくは以下の記事で解説しています。

関連:育児休業の対象者・期間・賃金等の基礎知識

5. 介護休業

介護休業とは、要介護状態にある対象家族を介護する労働者から請求があったときに、会社が付与しなければならないものです

後述しますが、「介護休業」と「介護休暇」は別の制度であるためご注意ください

育児介護休業法第11条(介護休業の申出)
労働者は、その事業主に申し出ることにより、介護休業をすることができる。
育児介護休業法第12条(介護休業申出があった場合における事業主の義務等)
事業主は、労働者からの介護休業申出があったときは、当該介護休業申出を拒むことができない。

対象家族の範囲は、

  • 事実婚を含む配偶者
  • 父母
  • 配偶者の父母
  • 祖父母、兄弟姉妹、孫(同居・扶養要件はH29.1に撤廃)

であり、対象家族1人につき3回まで、通算93日までとなっています。

介護休業についても、法律では有給・無給の規定をしていません

つまり、無給で構いませんが、その場合は、就業規則にきちんと無給と規定することが大事です。

ただし、介護休業中の労働者は、雇用保険から賃金の約67%相当の介護休業給付を受けることができます

詳細は以下の記事で解説しています。

関連:介護休業の条件・期間・賃金・手当の基礎知識

6. 子の看護休暇

子の看護休暇とは、6歳までの子を養育する労働者が、

  • 子の病気や怪我をしたときの看護
  • 子の予防接種や健康診断

のために請求したときに、1年に5日まで、子が2人以上の場合は10日まで、会社が付与しなければならないものです。

ただし、子の看護休暇についても、法律では有給・無給の規定をしていません

つまり、無給で構いませんが、その場合は、就業規則にきちんと無給と規定することが大事です。

育児介護休業法第16条の2(子の看護休暇の申出)
小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者は、その事業主に申し出ることにより、1の年度において5労働日(その養育する小学校就学の始期に達するまでの子が2人以上の場合にあっては、10労働日)を限度として、負傷し、若しくは疾病にかかった当該子の世話又は疾病の予防を図るために必要なものとして厚生労働省令で定める当該子の世話を行うための休暇を取得することができる。
育児介護休業法第16条の3(子の看護休暇の申出があった場合における事業主の義務等)
事業主は、労働者から申出があったときは、当該申出を拒むことができない。

詳細は以下の記事で解説しています。

関連:子の看護休暇の対象者・日数・取得単位・賃金等の基礎知識

7. 介護休暇

介護休暇とは、要介護状態にある対象家族を介護する労働者が請求したときに、1年に5日まで、対象家族が2人以上の場合は10日まで、会社が付与しなければならないものです。

名称が似ていますが、介護休業とは別の制度です。制度の内容としては、子の看護休暇と同様の考え方です。

ただし、介護休暇についても、法律では有給・無給の規定をしていません

つまり、無給で構いませんが、その場合は、就業規則にきちんと無給と規定することが大事です。

育児介護休業法第16条の5(介護休暇の申出)
要介護状態にある対象家族の介護その他の世話を行う労働者は、その事業主に申し出ることにより、1の年度において5労働日(要介護状態にある対象家族が2人以上の場合にあっては、10労働日)を限度として、当該世話を行うための休暇を取得することができる。
育児介護休業法第16条の6(介護休暇の申出があった場合における事業主の義務等)
事業主は、労働者からの申出があったときは、当該申出を拒むことができない。

詳細は以下の記事で解説しています。

関連:介護休暇の対象者・日数・取得単位・賃金等の基礎知識

8. 裁判員休暇

裁判員休暇は、平成21年5月21日より開始された裁判員制度に対応するための休暇制度です。

従業員が裁判員として裁判に参加する場合、または裁判員候補者として裁判所に出頭する場合、公民権の行使に該当するため、必要な日数・必要な時間を付与しなければなりません。

従業員が裁判員として仕事を休んだことを理由に解雇などの不利益な扱いをすることは、裁判員法第100条により禁止されています。

実務的に問題となるのは、有給なのか無給なのかという点ですが、この点については、最高裁判所のウェブサイト「裁判員制度Q&A」で以下のように示されています。

質問
裁判員又は裁判員候補者として裁判所に行くために会社を休む場合、有給休暇扱いにしてもらえるのでしょうか。
回答
  • 裁判員の仕事に必要な休みをとることは法律で認められています(労働基準法7条)が、裁判員の仕事に従事するための休暇制度を設けることは義務付けられておりませんので、各企業の判断に委ねられることになります。
  • 企業等にお勤めの方に裁判員として裁判に参加していただくためには、裁判員としての仕事を行うための特別な有給休暇制度を作っていただくことが重要であると考えられますので、裁判所としては、法務省・検察庁、弁護士会とも連携し、各種経済団体、企業等に対し、休暇制度の導入の検討をお願いしているところです。

まとめ

今回は、経営者・人事担当者は必ず抑えておくべき法定の休暇・休業制度、必要な手続きについて解説しましたが、意外と法定休暇・休業の多さに驚きませんでしたか?

こうして一覧にしてみると、実はほとんどが無給でよく、しかも公的機関による補助がある制度が多いと思いませんか?

法律で義務づけられているため、請求があれば、会社は必ず休暇・休業を付与しなければならないわけですが、逆に言えば、請求が不要な産後休業を別として、請求がなければ付与しなくても構いません(押しつけるものでもありませんし)。

ただ、法定の休暇・休業制度をきちんと周知しておかないと教えてもらえなかった、会社は取得させたくないのか、と痛くもない腹を探られるのも困ります。後々トラブルになるのは避けるべきですし。

会社の実務にとって重要なことは、後々のトラブルを避けるために制度を理解し、補助を受けるための手続きとして、就業規則をきちんと整備しておくことです。

なお、休暇・休業制度については従業員の関心が高いため、制度設計の際にはご注意ください。

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