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介護をする従業員が取得できる「介護休暇」の対象者・日数・取得単位・賃金などに関する基礎知識を解説します。なお「介護休暇」と「介護休業」は異なるので要注意です。
介護休暇とは
介護休暇とは、育児・介護休業法により、要介護状態にある対象家族の介護や世話を行う従業員が取得できる休暇制度です。
介護や世話とは以下を含みます。
- 対象家族の通院等の付添い
- 対象家族が介護サービスの提供を受けるために必要な手続の代行
- その他の対象家族に必要な世話
- 育児・介護休業法 第16条の5(介護休暇の申出)
- 要介護状態にある対象家族の介護その他の世話を行う労働者は、1の年度において5労働日(要介護状態にある対象家族が2人以上の場合、10労働日)を限度として、当該世話を行うための休暇(以下「介護休暇」という。)を取得できる。
そして会社は、従業員から介護休暇の申出があった場合、業務の繁忙などを理由に拒むことはできません。
- 育児・介護休業法 第16条の6(介護休暇の申出があった場合における事業主の義務等)
- 事業主は、労働者から介護休暇の申出があったときは、当該申出を拒むことができない。
要介護状態の判断基準
また、育児・介護休業法に定める「要介護状態」とは、
- 負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態
のことをいい、要介護認定を受けていなくても、介護休業の対象となり得ます。常時介護を必要とする状態については、厚生労働省が判断基準を示しており、この基準に従って判断することになります。
参考:対象家族が要介護状態にあるかどうかは、どのように判断されるのですか。- 厚生労働省ウェブサイト
対象となる家族
対象家族は、配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。
配偶者には事実婚を含みます。また「子」の範囲は、法律上の親子関係がある子(養子含む)のみです。
介護休業と介護休暇の違い
混同されやすいので念のため補足しておくと、今回解説するのは、介護「休暇」です。
介護「休業」という似た名称の別の制度があるためややこしいのですが、「休業」と「休暇」で言葉を間違えないように注意してください。
簡単に違いを整理すると以下のとおりです。
- 介護休業:93日を限度とした休業(育児・介護休業法第11条)
- 介護休暇:年5日(2人以上の場合は年10日)を限度とした休暇(育児・介護休業法第16条の5)
介護休業の詳細は以下の記事で解説しています。
介護休暇の対象者:申出ができる従業員の条件
介護休暇は、正社員やパートなど雇用区分にかかわらず、原則としてすべての従業員が取得できます。ただし、以下に該当する従業員は介護休暇の申出ができません。
- 日雇い労働者
- 入社6か月未満の労働者(労使協定が必要)
- 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者(労使協定が必要)
- 半日単位・時間単位で介護休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者(労使協定が必要)
ただし、4に該当する従業員は、できないのは半日単位・時間単位の取得ができないだけであって、1日単位の介護休暇の取得は可能です。会社は1日単位の取得の申出があれば拒否できません。
また、2〜4の条件は労使協定が必要であり、労使協定を締結していなければ会社は拒否できません。
上の条件以外、例えば「有期契約労働者、配偶者が専業主夫・主婦の場合は認めない」など会社が独自に介護休暇を取得できない条件を設定することは法違反となります。
介護休暇の日数
介護休暇の日数は、対象家族が1人の場合は年5日、対象家族が2人以上の場合は最大10日です。
対象家族が3人いても10日が限度です。
そして会社は、年次有給休暇の日数とは別に付与しなければなりません。
介護休暇の取得単位
介護休暇の取得単位は、1日または1時間単位です。
時間単位の取得が可能となったのは2021(令和3年)1月1日からです。以前は1日または半日単位の取得が義務でした。
もちろん、1日単位、半日単位、時間単位の取得のすべてを会社として認めても構いませんが、時間単位の取得が可能な場合、あまり半日単位の取得のニーズはないでしょう。実際、勤務時間で午前と午後の時間が半々でない場合、半日単位の取得には以下のような工夫が必要になります。
- 労使協定によって異なる時間数を半日と定める
- 半々となるように時間調整を行う
- 時間単位の取得を認める
介護休暇の時間単位の取得については、以下の記事で解説していますのでご参考ください。
関連:令和3年1月より⼦の看護休暇・介護休暇は時間単位でも取得可能
介護休暇中の賃金
介護休業と同様、会社は、介護休暇を取得する従業員に対して賃金を支払う義務はありません。
もちろん、有給でも構いませんが、中小企業に限らず大企業でも賃金なしという会社が多い印象です。
無給にすると、従業員は「介護休暇」ではなく「年次有給休暇」を利用したいという要望があるかもしれませんが、どちらを利用するかは従業員に任せましょう。
ただし、有給・無給は会社の裁量次第ですが、後々のトラブルを防ぐために、就業規則にきちんと規定しておくことが大事です。
なお、介護休暇を取得した従業員に対して、賞与、昇給等で不利益な算定を行うことは禁止されています(育児・介護休業法第16条の7)。
まとめ
当事務所で従業員に対して就業規則の説明を行うと、最も多く質問を受けるのが休暇・休業制度です。
休暇は就業規則の絶対的必要記載事項であり、指針でも、介護休暇制度について就業規則に規定することが求められています。実務的には、多くの会社が、就業規則と別に育児・介護休業規程を整備しているはずです。
従業員の関心が高い内容であり、法律に沿った運用をしておかなければ違反になるため、この機会に、就業規則と育児・介護休業規程をきちんと見直しておきましょう。
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