最近は、年次有給休暇を積極的に取得させるように顧問先にアドバイスしています。今回は、なぜ会社にとって有給休暇の消化が重要なのかを解説します。
なお、思い込みやイメージではなく、データを踏まえて正しい状況を説明するのが当事務所のスタンスなので、今回は「令和2年就労条件総合調査結果」を用います。
有給休暇消化率は56.3%:前年から上昇
労働者1人が取得した年次有給休暇の日数は10.1日、調査対象となった労働者1人平均付与日数は18.0日であったことから、平成31年・令和元年の年次有給休暇の消化率は56.3% となっています。
年次有給休暇消化率の推移については以下の図のとおりで、近年で半分の50%を超えたのは、平成29年、なんと平成11年の50.5%以来18年ぶりという状況でした。その後は、50%を超えつつ、少しずつ上昇しています。
以下は本来であればグラフが表示されます。
もしグラフが表示されていない場合はページの更新をしてください。
なお、調査対象に変更があり、H19以前の調査対象は「本社の常用労働者数が30人以上の民営企業」、H20以後は「常用労働者数が30人以上の民営企業」となっており、厳密な時系列の推移とは異なります。
規模別の年次有給休暇消化率:大規模ほど大きいように見えるが実は微差
次に、企業の従業員規模別の年次有給休暇消化率が以下のグラフです。
規模が小さくなるほど消化率が低くなっています。
しかし、割合だけを見ると大きな差のように見えるかもしれませんが、実は違います。
まず、年次有給休暇の付与日数の法的な最大値は、繰越日数を除くと年20日です。
以下は、規模別の労働者1人平均取得日数ですが、1,000人以上の規模の会社と30-99人規模の会社を比べると、年間で3日程度の差しかないことがわかります。
労働者1人平均取得日数 | |
---|---|
1,000人以上 | 11.9日 |
300-999人 | 9.5日 |
100-299人 | 9.2日 |
30-99人 | 8.7日 |
産業別の年次有給休暇消化率:業種間で消化率の差が大きい
最後に、産業別(業種別)の年次有給休暇消化率が以下のグラフです。なお、年次有給休暇の消化率が平均を超えている業種は黄色で示しています。
最も年次有給休暇消化率が高かったのは、
- 電気・ガス・熱供給・水道業:76.8%
そして最も年次有給休暇消化率が低かったのは、
- 宿泊業、飲食サービス業:41.2%
どちらの業種も前年の調査結果と同様の結果となっています。
まとめ:なぜ会社にとっても有給休暇の消化が重要なのか?
さて、記事の冒頭で「年次有給休暇を積極的に取得させるように顧問先にアドバイスしている」と書きましたが、それはなぜでしょうか?
年次有給休暇の取得は従業員の権利であり、会社側が取得を推進すれば、当然従業員のためになります。
しかし、それ以上に会社にとっても年次有給休暇の取得の促進は以下の点から重要性が増しています。
- 従業員からの休暇の要望が強い、ときには賃金以上に
- 退職時に年次有給休暇の消化に関するトラブルがよく起こる
実際のトラブル事例は顧問先にはよくお知らせしていますが、そもそも年次有給休暇の法定付与日数は年20日間、月単位に換算すると1.6日/月と月に2日にも満たない日数です。
月にたった1日半程度の休暇日数を付与したくないと言うような会社に人が定着するでしょうか?
しかも、ようやく取得率50%を超えるようなお寒い状況にあるのがこの国の実情です。
であれば、たかだか年20日程度の年次有給休暇については消化率100%を達成し、採用や従業員の定着に活かす方が良いと思いませんか?
なお、年次有給休暇に関してはいまだに許可する・許可しないといったトラブルも多いようですし、以下の記事で年次有給休暇に関する基本を詳細に解説していますのでご参考ください。
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