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当事務所では、年次有給休暇を積極的に取得させるように顧問先にアドバイスしています。
- 従業員のためにですよね?
とよく言われますが、それは当然あるものの、実は会社にとっても大きなメリットがあるからです。
今回は、なぜ会社にとって年次有給休暇の取得を推進することが重要なのかを解説します。
なお、思い込みやイメージではなく、データを踏まえて正しい状況を説明するのが当事務所のスタンスなので、今回は「令和5年就労条件総合調査結果」を用います。
有給休暇取得率は62.1%と前年から上昇
令和4年の1年間に企業が付与した年次有給休暇日数(繰越日数を除く)は、
- 労働者1人平均付与日数は17.6日
- 労働者1人が取得した年次有給休暇の日数は10.9日
であり、令和4年の年次有給休暇の取得率は62.1% となり、昭和59年以降過去最高となっています。
以下は本来であればグラフが表示されます。
もしグラフが表示されていない場合はページの更新をしてください。
なお、調査対象に変更があり、H19以前の調査対象は「本社の常用労働者数が30人以上の民営企業」、H20以後は「常用労働者数が30人以上の民営企業」となっており、厳密な時系列の推移とは異なります。
規模別の年次有給休暇取得率:大規模ほど大きいように見えるが実は微差
次に、企業の従業員規模別の年次有給休暇取得率が以下のグラフです。
規模が小さくなるほど取得率が低くなっています。
しかし、割合だけを見ると大きな差のように見えるかもしれませんが、実は違います。
まず、年次有給休暇の付与日数の法的な最大値は、繰越日数を除くと年20日です。
以下は、規模別の労働者1人平均取得日数ですが、1,000人以上の規模の会社と30-99人規模の会社を比べると、12.0 - 9.6 = 2.4と年間で2日半程度の差しかないことがわかります。
労働者1人平均取得日数 | |
---|---|
1,000人以上 | 12.0日 |
300-999人 | 11.1日 |
100-299人 | 10.5日 |
30-99人 | 9.6日 |
産業別の年次有給休暇取得率:業種間で取得率の差が大きい
最後に、産業別(業種別)の年次有給休暇取得率が以下のグラフです。
なお、年次有給休暇の取得率が、
- 平均を超えている業種は青色
- 平均を下回る業種は赤色
で示しています。
最も年次有給休暇取得率が高かったのは、
- 複合サービス事業:74.8%
そして最も年次有給休暇取得率が低かったのは、
- 宿泊業、飲食サービス業:49.1%
となっています。宿泊業、飲食サービス業が低いのは例年どおりです。
なお、複合サービス業とは、日本標準産業分類によると、郵便局、協同組合(他に分類されないもの)として以下が該当します。
- 管理,補助的経済活動を行う事業所(87協同組合)
- 農林水産業協同組合
- 事業協同組合(他に分類されないもの)
まとめ:なぜ会社にとっても有給休暇の取得が重要なのか?
さて、記事の冒頭で「年次有給休暇を積極的に取得させるように顧問先にアドバイスしている」と書きましたが、それはなぜでしょうか?
年次有給休暇の取得は従業員の権利であり、会社側が取得を推進すれば、当然従業員のためになります。
しかし、それ以上に会社にとっても年次有給休暇の取得の促進は以下の点から重要性が増しています。
- 従業員からの休暇の要望が強い、ときには賃金以上に
- 退職時に年次有給休暇の取得に関するトラブルがよく起こる
実際のトラブル事例は顧問先にお伝えしていますが、そもそも年次有給休暇の法定付与日数は年20日間、月単位に換算すると1.6日/月と月に2日にも満たない日数です。
月にたった1日半程度の休暇日数を付与したくないという会社に人が定着するでしょうか?
そして、月にたった1日半程度の休暇日数を会社がケチって、従業員とトラブルを起こすのはアホみたいじゃないですか?
であれば、たかだか年20日程度の年次有給休暇については取得率100%を達成し、採用でアピールしたり、従業員の定着に活かす方がはるかに良いと思いませんか?
なお、年次有給休暇に関してはいまだに許可する・許可しないといったトラブルも多いようですし、以下の記事で年次有給休暇に関する基本を詳細に解説していますのでご参考ください。
- 毎年のように改正される労働法令への対応に頭を悩ませている
- 総務や経理などの他の業務を兼務しているので、人事労務業務だけに時間を割けない
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