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試用期間の長さ、賃金、社会保険、解雇等に関する基礎知識

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試用期間 = お試し期間という言葉の印象のためか、以下のようなご質問を多くいただきます。

  • とりあえず試しに雇ってみて、ダメだったらすぐクビにしていい?
  • じっくりと適性を見たいから試用期間を1年や2年など長くしてもいい?
  • 試用期間内であれば本採用を拒否しても解雇扱いにならないよね?

これらはすべて間違いです。

また、試用期間 → 本採用という流れのためか、本採用から雇用契約になると誤解している人もいます。

今回は、トラブル・誤解の多い試用期間に関する基本的な知識を解説します。

試用期間とは

試用期間とは、入社後一定期間の間に、労働者の人物・能力を評価して本採用するか否かを判断・決定するための「試みの期間」です。

ただし、試用期間について、現行法上、明確な法的規制は存在しません

そのため、個別の契約ごとの具体的な解釈の問題となるわけですが、判例では「解約権留保特約のある雇用契約」とされています(雇用指針より)。

解説:解約権留保特約のある雇用契約
  • 判例では、試用期間を設けた雇用契約は、契約締結と同時に雇用の効力が確定し、ただ試用期間中は不適格であると認めたときはそれだけの理由で雇用を解約しうるという解約権留保特約のある雇用契約であるとしている。
  • 当該解約権の留保は、後日における調査や観察に基づく最終決定を留保する趣旨で設定されるものと解され合理性があり、留保解約権に基づく解雇は、通常の解雇よりも広い範囲における解雇の自由が認められるとしている。
  • しかしながら、試用期間中の労働者が他の企業への就職機会を放棄していること等を踏まえると、留保解約権の行使は、解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存在し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許されるとしている。

ここで重要なのは、

  • 雇用契約の開始は、試用期間後の本採用からではなく、試用期間開始時である

という点です。試用期間と解雇の関係は後述します。

試用期間の長さ

会社によって試用期間の長さは1か月、3か月、6か月と様々であり、試用期間に関する定めがない会社もあります。

以下の記事で解説していますが、データでは、試用期間の長さとして最も多いのが、新卒採用・中途採用のいずれも3か月、次に多いのが6か月以上となっています。

なお、たまに「試用期間は14日でしょ?」と、試用期間と試の試用期間を混同している方もいますが、併せて以下の記事で解説しています。

関連:試用期間の長さは3か月 or 6か月? 限度はどれくらい?

試用期間における社会保険の取扱い

なぜか「試用期間中は社会保険に加入させる必要はない」と思い込んでいる人がいますが、それは間違いです

あくまで、試用期間は会社が定めるものです。

解約権留保の特約があっても既に雇用契約は締結している状況であり、社会保険の加入の対象となります。

以下の記事で解説していますが、社会保険の除外対象となる代表的な例は、パートやアルバイトなどの短時間労働者です。

関連:正社員とパートの違いを法律面・実態面から詳細解説

試用期間と最低賃金

社会保険と同様に、なぜか「試用期間中は賃金がどれだけ安くてもいい」と思い込んでいる人がいますが、それも間違いです

また驚いたことに「社労士から最低賃金を下回ってもいいとアドバイスされた」と発言する人に会ったこともありますが、大間違いです。

おそらく、以下の最低賃金法第7条の一部分を勝手に拡大解釈したのだろうと推測しますが、法律は正確に理解しましょう。

最低賃金法第7条(最低賃金の減額の特例)
使用者が厚生労働省令で定めるところにより都道府県労働局長の許可を受けたときは、次に掲げる労働者については、当該最低賃金において定める最低賃金額から当該最低賃金額に労働能力その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める率を乗じて得た額を減額した額により第4条の規定を適用する。
(略)
二  試の使用期間中の者

この条文をざっくりと説明すると「試の使用期間中の者」ついては、都道府県労働局長の許可があれば、最低賃金より低い賃金も可能ということです。

ポイントは「許可」です。

詳しくは以下の記事で解説していますが、許可とは「原則禁止だが特別な場合には許します」という意味であり、原則禁止なのです。

関連:許可と認可の違いをわかりやすく解説! 許認可番号なんてない!

以下で解説しているとおり、最低賃金法違反には罰則があるためご注意ください。

関連:最低賃金制度の基礎知識:2種類の最低賃金、対象者、都道府県別の金額一覧

試用期間と解雇

冒頭で、試用期間について「解約権留保特約のある雇用契約」と解説しましたが、問題は、留保解約権の行使がどこまで認められるのかという点であり、判例では以下のように示されています。

  • 留保解約権に基づく解雇は、通常の解雇よりも広い範囲における解雇の自由が認められる
  • 一方、試用期間中の労働者は他の企業への就職機会を既に放棄している状態にあることから、解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存在し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許される

試用期間中に解雇できる場合・解雇できない場合について、以下の記事で裁判例を用いて解説しています。

関連:試用期間中に解雇できる場合・解雇できない場合

まとめ

試用期間については「試す」という言葉のイメージが強く、誤解が生じやすいため要注意です。

また、試用期間は法的な根拠がないが故に、就業規則で試用期間の長さなど取り扱いをきちんと定めておくことが重要です

実際「従業員の採用と退職に関する実態調査」の調査では、「試用期間のルールを何によって定めているのか」という設問があり、回答は以下のとおりです。

  • 就業規則:79.2%
  • その他の社内規程:9.3%
  • 労働協約:8.8%
  • 慣行であり、特に文書の規程等はない:7.5%

以上のように、試用期間は圧倒的に就業規則による定めが多い状況です。

簡単なように見えますが、意外と法的に難解な試用期間の定めについては、社労士に相談することをオススメします。

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