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長時間労働が疑われる事業場に対する労働基準監督署による指導結果が公表され、調査対象の74.0%の事業場で労働基準関係法令違反が認められたということです。
なお、以下の数字は、令和3年4月から令和4年3月までの監督指導の結果によるものです。
労働基準監督署の指導対象
今回発表された労働基準監督署による監督指導の対象は以下のとおり。
- 時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場
- 長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場
指導対象となった事業場数は32,025、このうち23,638事業場(全体の74.0%)で労働基準関係法令違反があったということです。
なお、たまに「うちのような零細企業に労働基準監督署は調査に来ない」と思っている方がいますが、それは大きな間違いです。
今回の指導対象となった事業場数32,025の内訳は以下のとおりです。
- 事業場規模 1 - 9人:8,817(27.5%)
- 事業場規模 10 - 29人:13,639(42.6%)
- 事業場規模 30 - 49人:4,132(12.9%)
- 事業場規模 50 - 99人:2,438(7.6%)
- 事業場規模 100 - 299人:1,975(6.2%)
- 事業場規模 300人以上:1,024(3.2%)
円グラフにしてみると一目瞭然ですが、指導対象の約8割が50人未満の事業場(円グラフの緑の部分)となっており、むしろ小規模の企業こそ指導の対象となっている状況です。
以下は本来であればグラフが表示されます。
もしグラフが表示されていない場合はページの更新をしてください。
1. 違法な時間外労働
ここからは労働基準監督署による指導事項と違反内容を見ていきます。
まず、違法な時間外労働があったとして是正勧告を受けたのが、10,986事業場で対象の34.3%。
そのうち、時間外・休日労働の実績が最も長い労働者の時間数が
- 月80時間を超えるもの:4,158事業場(37.8%)
- うち、月100時間を超えるもの:2,643事業場(24.1%)
- うち、月150時間を超えるもの:562事業場( 5.1%)
- うち、月200時間を超えるもの:121事業場( 1.1%)
となっています。違法な時間外労働というのは、
- 36協定を締結していない
- 36協定を締結してもその上限の時間数を超えている
- 法定の時間外・休日労働の上限時間(月100時間未満、複数月平均80時間)を超えている
といったものです。
ちなみに是正勧告を受けると、一定の期限内に是正した結果を報告する必要があります。
2. 賃金不払残業
賃金不払残業があったとして是正勧告を受けたのが、2,652事業場で対象の8.3%。
賃金不払残業の説明は必要ないでしょう。時間外労働・休日労働をさせたのにその分の賃金を払っていないということです。
なお、この数字に計算誤り等は含まれていません。つまり「そもそも払うつもりがなかった」という悪質な違反がこの数字です。
3. 過重労働による健康障害防止措置が未実施
過重労働による健康障害防止措置が未実施であったとして是正勧告を受けたのが、6,202事業場で対象の18.8%。
このうち、健康障害防止のため指導票を交付した事業場として
- 過重労働による健康障害防止措置が不十分なため改善を指導したもの:13,015事業場(40.6%)
- 労働時間の把握が不適正なため指導したもの:5,105事業場(15.9%)
となっています。
そもそも、なぜ「時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場」が労働基準監督署の指導対象となっているかという点にも関係しますが、
- 脳・心臓疾患の発症前1か月間におおむね100時間
- または発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外・休日労働が認められる場合
は、業務と発症との関連性が強いとの医学的知見があります。
そのため、長時間労働の風土がある会社は、時間外・休日労働を月80時間以内に抑えること、また、それ以前に客観的な労働時間の把握が重要となります。
なお「過重労働による健康障害防止措置」は人事労務初心者にはわかりにくいかもしれません。
過重労働による健康障害防止措置の主な違反は以下のとおりです。
- 衛生委員会を設置していない(労働安全衛生法第18条違反)
- 健康診断を行っていない(労働安全衛生法第66条違反)
- 申出があったにもかかわらず、医師による面接指導を実施していない(労働安全衛生法第66条の8違反)
- 客観的な方法その他の適切な方法により労働時間の状況を把握していない(労働安全衛生法第66条の8の3違反)
関連:71.9%が法令違反・過重労働に対する労基署の重点調査事項
まとめ
発表内容の最後は以下の文言で締めくくられています。
- 今後も長時間労働の是正に向けた取組を積極的に行うとともに、11月の「過重労働解消キャンペーン」期間中に重点的な監督指導を行います。
長時間労働が恒常化している企業は業務改善など対応が急務です。
長時間労働が蔓延し、業務の関係上・取引先との関係上仕方ないと割り切っているような時代遅れの会社もまだまだあるようですが、そんな会社は徹底的に指導を受けることになります。
ただ、仮に労働基準監督署の監督指導を受けなくても、この深刻な人手不足の時代に長時間労働の状態を放置していれば、離職が増加し、人は採用できずと、結局は淘汰されていくわけですが。
- 毎年のように改正される労働法令への対応に頭を悩ませている
- 総務や経理などの他の業務を兼務しているので、人事労務業務だけに時間を割けない
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