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退職金は、賃金や賞与と比べて高額であり、トラブルになりやすいことから、きちんと制度設計をしておく必要があります。
そして、制度設計の際に重要なのが全体的な動向の把握です。
今回は、従業員10〜299人の東京都内の中小企業を対象にした退職金制度の状況をまとめた調査結果を紹介・解説します。
中小企業に特化した退職金制度に関する調査は珍しいため、中小企業の人事労務担当者には大いに参考になるでしょう。
中小企業の退職金制度の有無
退職金制度について「制度あり」と回答した企業は71.5%、「制度なし」と回答した企業は28.3%です。
ウェブサイト上で追える最も古い調査結果となる平成22年の調査から時系列にまとめた結果が以下のグラフです。
以下は本来であればグラフが表示されます。
もしグラフが表示されていない場合はページの更新をしてください。
近年は減少傾向だったのですが、今回は増加に転じています。採用難の影響でしょうか?
いずれにしても、この推移からわかるのは、
- 7割と多くの中小企業に退職金制度がある
ということです。たまに「退職金制度なんて大企業だけのもの」と思い込んでいる中小企業の社長がたまにいますが、それは誤解であるとわかります。
なお、「制度あり」の企業のうち、72.5%が「退職一時金のみ」と回答しており、まだまた一時期払いの企業が多いことがわかります。
中小企業における退職金の積立方法
退職一時金制度の積立方法としては、「社内準備」と回答した企業が62.0%で最も多く、次いで「中小企業退職金共済制度」と回答した企業が49.5%となっています。
また、退職年金の場合は、確定拠出企業年金(企業型)、確定給付企業年金の2つで9割以上を占めています。
退職金の算出方法
退職一時金の算出方法として、最も多いのが「退職金算定基礎額 × 支給率」で43.5%。
大きく引き離されて、次が「勤務年数に応じた一定額」の25.0%、いわゆる定額制と言われるものです。
退職金制度を人事制度の一部として考えたときに最も効果があるのはポイント制なのですが、まだまだ少数派のようです。
退職金算定基礎額の算出方法
前述のとおり、退職金の算出方法として圧倒的に多かったのが「退職金算定基礎額 × 支給率」ですが、その退職金算定基礎額は、
- 退職時の基本給:45.0%
- 退職時の基本給 × 一定率:30.8%
と約7割を超える状況です。
「基本給を上げると退職金が増える」とよく言われますが、この調査結果からもその実態がよくわかります。
そもそも基本給と退職金を連動させる必然性はありません。会社がそのように退職金制度を設計しただけの話なのですが・・・
退職金受給のための最低勤続年数
退職一時金受給のための最低勤続年数、つまり何年目から退職金の支給対象となるのかという点については「3年」と回答した企業が、
- 自己都合退職(51.5%)
- 会社都合退職(32.4%)
と、双方とも最も多くなっています。石の上にも3年、ということでしょうか?
なお、当事務所でも多くの退職金規程を見ていますが、ほとんどの企業で退職金の対象として最低勤続年数を3年としており、経験的にも同じ状況です。
退職金の特別加算制度
退職金の特別加算制度とは、退職金規程によって定められた退職金の計算方法にプラスして、会社が特別に支給するものです。
調査結果によると、特別加算企業制度がある企業は38.0%となっています。
また、特別加算企業制度があると回答した企業の81.7%が「功労加算」、19.8%が「役付加算」となっています。
当事務所がこれまで見てきた企業では、ほとんどに功労加算の規定があったのですが、特別加算企業制度がある企業が5割を切るほど少ないのは正直驚きました。
まとめ
賃金や退職金の制度設計の際に、同一業種や同一規模の企業の賃金水準等を参考に検討したいという要望は多くあります。
ただ、多くの統計が大企業中心であり、中小企業に特化した調査結果は珍しいというのが実情です。
今回の調査結果は、東京都内の中小企業を対象にしていますが、東京以外の企業にも大いに参考になるでしょう。
以下の記事では中小企業の退職金の相場の支給額についてまとめているので、併せてご参考ください。
関連:中小企業の退職金相場の調査結果:定年時は学歴に関係なく約1千万円以上
また、退職金に関する基礎的な内容については以下をご参考ください。
- 毎年のように改正される労働法令への対応に頭を悩ませている
- 総務や経理などの他の業務を兼務しているので、人事労務業務だけに時間を割けない
といった悩みを抱える企業の経営者・人事労務担当者向けに、公開型のブログでは書けない、本音を交えた人事労務に関する情報・ノウハウ、時期的なトピックに関するメールマガジンを「無料」で配信しています。
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