退職金は、一般的に賃金や賞与と比べて高額であり、トラブルになりやすいことから、きちんと制度設計をしておく必要があります。
そして、制度設計の際には全体的な動向の把握も重要です。
今回は、従業員10〜299人の東京都内の中小企業を対象にした、学歴・勤続年数ごとの退職金の相場をまとめた調査結果を紹介・解説します。
中小企業に特化した退職金制度に関する調査は珍しいため、中小企業の人事労務担当者には大いに参考になるでしょう。
中小企業の退職金の相場:どの学歴でも1千万円超
この調査は、学校を卒業してすぐに入社し普通の能力と成績で勤務した場合の退職金水準を、モデル退職金として示しており、結果は以下のとおりです。

上の表の会社都合の退職金額をわかりやすくグラフにしてみると以下のとおり。
以下は本来であればグラフが表示されます。
もしグラフが表示されていない場合はページの更新をしてください。
定年時の退職金を見てみると以下のとおり。学歴に関わらず、定年時の退職金は1千万円を超えていることがわかります。
- 高校卒:10,314千円
- 高専・短大卒:10,260千円
- 大学卒:11,189千円
なお、調査結果の中には、退職一時金のみの企業、退職一時金と退職年金を併用している企業に関するモデル退職金の調査結果もあるので、関心のある方はご参考まで。
年齢よりも勤続年数が重視
この調査結果を見ると、年齢や学歴よりも勤続年数の方が重視されている傾向がわかります。
例えば、学歴が高校卒で勤続年数15年(年齢33歳)の場合、
- 自己都合退職の退職金:1,684千円
- 会社都合退職の退職金:2,091千円
年齢を基準にして、大学卒の場合と比較すると、勤続年数10年(年齢32歳)がほぼ一致しますが、その場合、
- 自己都合退職の退職金:1,135千円
- 会社都合退職の退職金:1,483千円
となり、学歴が高校卒で勤続年数15年(年齢33歳)の退職金の方が50〜60万円ほど高い状況になっています。
そして、この勤続年数の方が重視される傾向は中高齢になっても続きます。
例えば、高校卒の勤続年数30年(年齢48歳)と大学卒の勤続年数25年(年齢47歳)でも、やはり高校卒の退職金が高くなっています。
ただし、定年時の退職金額は大学卒の方が高いので、どこかで逆転するのでしょう。
日本はいまだに年功序列という印象を持っている方は多いかもしれませんが、実態は年齢よりも勤続年数の方が重視されていることがわかります。
参考:中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)(東京都労働相談情報センター)
まとめ
冒頭にも書いたとおり、中小企業に特化した調査結果というのは珍しいのが実情であり、東京都内の調査ではありますが、東京都以外の会社にも大いに参考になるものでしょう。
また、あなたの会社の現在の退職金額とこの調査結果の金額が大きく異なっている場合でも参考にならないと思うのは早計です。
この調査結果ではモデル所定内賃金で除した支給月数を示しているため、支給月数をベースに制度設計することもありえます。
様々な統計や調査結果は溢れていますが、要は使い方です。
なお、中小企業における退職金制度の調査結果については以下をご参考ください。
関連:中小企業の退職金制度の調査結果:退職金ありは65.9%
また、退職金に関する基本的な内容については以下の記事で解説しています。
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