「新卒の3人に1人が3年以内に離職する」とよく言われますが、その根拠は毎年厚生労働省が公表している新規学卒就職者の離職状況です。
今回は、2020年に発表されたデータを用いて、学歴別、規模別、産業別の離職率をグラフにまとめてみました。
なお、発表されている最新データは、平成29年3月卒業者が対象となっています。
まず、結論の部分から先に紹介しておくと、新規学卒就職者の就職後3年以内の、学歴別の離職率は以下のとおりです。
- 大学卒:32.8%
- 短大卒:43.0%
- 高校卒:39.5%
- 中学卒:59.8%
データを見ると、「新卒の3人に1人が3年以内に離職する」という話は、実は大卒に限った話であることがわかります。
中卒の場合はなんと約60%、簡単に言えば5人のうち3人が、3年以内に離職しているということです。

離職率の定義
まず、離職率の定義について、Wikipedia「離職率」を引用します。
離職率は、ある時点で仕事に就いていた労働者のうち、一定の期間(たとえば、ひと月、ないし、1年なり3年)のうちに、どれくらいがその仕事を離れたかを比率として表わす指標。
この値が極端に高ければ、労働者がその仕事に定着しにくく、入れ替わっていくことが常態化していることが含意され、逆に極端に低ければ、労働者がその仕事に定着し、転職や産業間の労働力移動が行なわれにくくなっていることが示唆される。
つまり、離職率の定義は以下のようになります。
- 離職率の定義
- 一定の期間内でどれくらいの割合の社員が辞めたのかを示す率
「新卒の3人に1人が3年以内に退職している」とよく言われますが、この定義が示すように、離職率に関して、期間が3年と決まっているわけではありません。
また、最近は、企業が自社のウェブサイトで離職率を示していることがありますが、どれくらいの期間における離職率なのかを確認することは重要です。
1年以内の離職率が低くても、期間を長く設定すると、離職率が高くなる場合があります。
例えば、10人が入社して1年間に1人だけ退職、しかし3年間で9人が退職したとなれば、1年以内の離職率は10%ですし、3年以内の離職率は90%です。
極端な例を出しましたが、企業が自社のウェブサイトで離職率を示していても、集計期間が記載されていなければ離職率の比較はできないということです。
3年以内の離職率に関する調査結果
それでは「新規学卒者の3年以内の離職状況」をグラフにして見ていきます。
新卒の3年以内離職率
以下は本来であればグラフが表示されます。
もしグラフが表示されていない場合はページの更新をしてください。
大卒の場合の離職率は3割なので「新卒の3人に1人が3年以内に退職している」というのは大卒に限った話のようです。
短大卒・高卒の場合は10人のうち4人、中卒になると10人のうち6人が3年以内に離職するという高い数値になっています。
3年以内の離職率のうち、1年目、2年目、3年目の離職率を示したのが以下のグラフです。
大卒の場合、3年以内の離職率は32.8%ですが、実はそのうちの4割弱の11.6%、中卒に関しては3年以内の離職率59.8%の約6割の36.5%が、1年以内に離職しています。
つまり、企業の視点から離職防止対策を考えたとき、最初の1年以内の離職を防ぐための方策が重要と言えます。
事業所規模別・3年以内の離職率
次に、事業所の規模別の離職率を見てみます。なお、ここからは大卒の離職率を取り上げていきます。
まず、規模が大きくなると、離職率が下がっています。
30人未満の会社では離職率5割、3年以内に半分が退職していると考えると、ただでさえ小規模の会社なのに辛いところでしょう。
この調査結果はイメージどおりではありますが、それでは、なぜ規模が大きくなると離職率が下がるのでしょうか?
あくまで推測ですが、人数が多い職場では、人間関係が多層化し、離職を悩んでも良き相談相手が1人くらいは存在し、フォローが行き届いた結果離職を思いとどまる人がいる、ということかと考えます。
人が集まれば合う人・合わない人はいますし、良い人もいれば悪い人もいます。
ただ、人数が多いと、仮に合わない人と付き合わなくても仕事はできる、嫌なことがあってもフォローしてくれる人がいる、そんなところでしょう。
もちろん、ただでさえ人手不足の世の中なので、離職防止対策を頑張っている会社が多いでしょうし、そのような会社は実際に離職率が低く、評判を呼び採用活動も有利に進めることができるのは間違いありません。
産業別・3年以内の離職率
最後に、産業別・業種別の離職率を見てみます。平均よりも離職率の高い業種については黄色にしています。
こうして見ると離職率の高い業種って多いですね・・・
このうち、離職率ワースト5となる産業は以下のとおりです(その他は除外してます)。
業種 | 離職率 |
---|---|
宿泊業・飲食サービス業 | 52.6% |
生活関連サービス業・娯楽業 | 46.2% |
教育・学習支援業 | 45.6% |
小売業 | 39.3% |
医療、福祉 | 38.4% |
なんと、宿泊業・飲食サービス業の離職率は52.6%、つまり2人に1人は3年以内に離職、そして毎年ワースト1位です。
それ以降の順位は毎年細かく入れ替わっていますが、このワースト5の業種は不動なんですよね・・・
ちなみに、生活関連サービス業・娯楽業というのはわかりにくいかもしれません。
こういった産業別については、標準産業分類というものに基づくことになっており、この生活関連サービス業・娯楽業には、かなり雑多ではありますが、以下の業種が含まれています。
- 洗濯、理容美容
- 旅行業
- 家事サービス
- 冠婚葬祭業
- 結婚相談業など
まとめ
最後に産業別の離職率のデータを示しましたが、御社が離職率の多い業種だからといって諦める必要はありません。
むしろ、職場環境を堂々とアピールできる状況にして、離職率を会社のウェブサイトなどで積極的に公開すれば良いわけです。
「正直、離職率が高い業界でありブラック業種だと思われています」「しかし当社は快適な職場環境づくりに励んでおり、離職率は○○%です。他社とは全く違います。」とアピールする方が「アットホームな職場です」なんて言うよりも全然訴求力が違う気がします。
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