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「新卒の3人に1人が3年以内に離職する」とよく言われますが、その根拠は、毎年厚生労働省が公表している新規学卒就職者の離職状況です。
今回は、2022年10月に厚生労働省により発表されたデータを用いて、学歴別、規模別、産業別の離職率をグラフにまとめてみました。
なお、発表されている最新データは、平成31年3月卒業者が対象となっています。
まず、結論の部分から先に紹介しておくと、新規学卒就職者の就職後3年以内の、学歴別の離職率は以下のとおりです。
- 大学卒:31.5%
- 短大卒:41.9%
- 高校卒:35.9%
- 中学卒:57.8%
データを見ると、「新卒の3人に1人が3年以内に離職する」という話は、実は大卒に限った話であることがわかります。四捨五入すれば、短大卒と高校卒は4割、中学卒は6割になるわけですし。
しかし、10人のうち5人以上が、3年以内に離職している中学卒の離職率は異常な数値と言えます。

離職率の定義
まず、離職率の定義について、Wikipedia「離職率」を引用します。
離職率は、ある時点で仕事に就いていた労働者のうち、一定の期間(たとえば、ひと月、ないし、1年なり3年)のうちに、どれくらいがその仕事を離れたかを比率として表わす指標。
この値が極端に高ければ、労働者がその仕事に定着しにくく、入れ替わっていくことが常態化していることが含意され、逆に極端に低ければ、労働者がその仕事に定着し、転職や産業間の労働力移動が行なわれにくくなっていることが示唆される。
つまり、離職率の定義は以下のようになります。
- 離職率の定義
- 一定の期間内でどれくらいの割合の社員が辞めたのかを示す率
「新卒の3人に1人が3年以内に退職している」とよく言われますが、この定義が示すように、離職率に関して、期間が3年と決まっているわけではありません。
また、最近は、企業が自社のウェブサイトで離職率を示していることがありますが、どれくらいの期間における離職率なのかを確認することは重要です。
1年以内の離職率が低くても、期間を長く設定すると、離職率が高くなる場合があります。
例えば、入社した10人を対象として見ても、1年間に1人だけ退職、しかしその後の3年間で9人が退職したとなれば、1年以内の離職率は10%ですし、3年以内の離職率は90%です。
極端な例を出しましたが、企業が自社のウェブサイトで離職率を示していても、集計期間が記載されていなければ離職率の比較はできないということです。
新卒の3年以内離職率
それでは「新規学卒者の3年以内の離職状況」をグラフにして見ていきます。
以下は本来であればグラフが表示されます。
もしグラフが表示されていない場合はページの更新をしてください。
大卒の場合の離職率は3割なので「新卒の3人に1人が3年以内に退職している」というのは大卒に限った話のようです。
短大卒・高卒の場合は10人のうち4人、中卒になると10人のうち6人が3年以内に離職するという高い数値になっています。
1年目、2年目、3年目の離職率
3年以内の離職率のうち、1年目、2年目、3年目の離職率を示したのが以下のグラフです。
大学卒の場合、3年以内の離職率は31.2%ですが、実はそのうちの
- 4割弱の11.8%が、1年以内に離職
し、なんと、中学卒に関しては3年以内の離職率57.8%のうち
- 約6割の36.9%が、1年以内に離職
している状況です。
つまり、企業の視点から離職防止対策を考えたとき、最初の1年以内の離職を防ぐための方策が重要と言えます。
事業所規模別の3年以内の離職率
次に、事業所の規模別の離職率を見てみます。なお、ここからは大学卒の離職率を取り上げていきます。
まず、事業所規模が大きくなると、離職率が下がっています。
30人未満の会社では離職率5割と、3年以内に半分が退職していると考えると、ただでさえ小規模の会社なのに辛いところでしょう。
この調査結果はイメージどおりではありますが、それでは、なぜ規模が大きくなると離職率が下がるのでしょうか?
あくまで推測ですが、人数が多い職場の場合
- 人間関係が多層化し、離職を悩んでも良き相談相手が1人くらいは存在し、フォローが行き届いた結果離職を思いとどまる人がいる
- 仮に合わない人と接しなくても仕事はできる、最悪異動も可能
といったフォローが会社としてできる、といったことが考えられます。
業種別の3年以内の離職率
最後に、業種別の離職率を見てみます。平均よりも離職率の高い業種については黄色にしています。
このうち、離職率ワースト5となる産業は以下のとおりです(「その他」は除外)。
業種 | 離職率 |
---|---|
宿泊業・飲食サービス業 | 49.7% |
生活関連サービス業・娯楽業 | 47.4% |
教育・学習支援業 | 45.5% |
医療、福祉 | 38.6% |
小売業 | 36.1% |
不動産業・物品賃貸業(同率5位) | 36.1% |
なんと、宿泊業・飲食サービス業の離職率は49.7%、つまり2人に1人は3年以内に離職、そして毎年ワースト1位です。
それ以降の順位は毎年細かく入れ替わっていますが、このワースト5の業種は不動なんですよね・・・今回は同率で「不動産業・物品賃貸業」が入っていますが。
ちなみに、生活関連サービス業・娯楽業というのはわかりにくいかもしれません。
国の統計は標準産業分類に基づくことが大半であり、この生活関連サービス業・娯楽業には、かなり雑多ではありますが、以下の業種が含まれています。
- 洗濯、理容美容
- 旅行業
- 家事サービス
- 冠婚葬祭業
- 結婚相談業など
まとめ
最後に業種別の離職率のデータを示しましたが、御社が離職率の多い業種だからといって諦める必要はありません。
むしろ、職場環境を堂々とアピールし、業種別平均より低い(はずの)離職率を会社のウェブサイトなどで積極的に公開することをオススメします。
データに基づきアピールする方が「アットホームな職場です」なんて言うよりも全然訴求力が違うと思いませんか?
- 毎年のように改正される労働法令への対応に頭を悩ませている
- 総務や経理などの他の業務を兼務しているので、人事労務業務だけに時間を割けない
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