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賃金不払の総額は約102億円、1事案における最大支払金額は2.3億円

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厚生労働省が発表した令和5年度の賃金不払残業の是正結果によると、

  • 賃金不払の総額は、約102億円(101億9,353万円)
  • 対象労働者数は、181,903人

であり、単純計算すると、労働者1人当たり約5.6万円となります。

賃金不払は、企業が本来払うべきもの、言い換えると、労働者がもらい損ねていたものであり、その総額が約102億円というものすごい金額になっているわけです。

「うちの会社はそんなに残業時間がないから大丈夫」と言う人がいますが、実はこの金額は決して非現実的な数字ではありません

だって、労働者1人当たり約5.6万円の不払いですし😅

今回は、発表内容に加えて、賃金不払問題がどの企業にも当てはまる決して他人事ではない理由を解説します。

なお、この発表は、賃金不払残業に関する労働者からの申告などの各種情報に基づき、全国の労働基準監督署が企業への監督指導を1年間行った結果として公表されているものです。

賃金不払事案の件数・対象労働者数・金額

全国の労働基準監督署で取り扱った賃金不払事案の件数、対象労働者数及び金額は以下のとおりですが、ものすごい件数、対象労働者数、金額になっています。

  • 件数:21,349件
  • 対象労働者数:181,903人
  • 金額:101億9,353万円

賃金不払残業の是正指導を受けた企業数は、1,069企業。

このうち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、115企業。

そして、その対象労働者数は、6万4,968人。

なお、この発表内容は、支払額が1企業で合計100万円以上となった事案がまとめられたものです。

100万円未満でも当然労働基準監督署による是正指導は行われますので、実際の数はもっと大きなものになります。

実は1企業当たりの賃金不払の平均額609万円はありえる現実

以前までは、以下のように1企業当たりの賃金不払の平均額も発表されていたのですが、今はその数字がわかりません・・・

ただ、令和3年の調査では、1企業当たりの賃金不払の平均額609万円。

イメージしにくい大きな金額ですが、実はそれほど非現実的な数字ではありません。

まず、現在、労働基準法に定められている賃金の時効は5年(当面は3年)です

単純な計算間違いや労働時間管理の問題という理由はさておき、仮に、月の所定労働日数は20日、時給は1,000円の従業員が1日30分の時間外労働をしていて、これが未払いになっていたとしましょう。

この場合、この従業員の月の未払い額は、月1万円になります。当面の時効3年で計算してみると、

  • 3年分の未払い額の合計額は、36万円
  • 従業員10人の小さな会社であっても、合計360万円の賃金不払い

とかなり大きな額になってしまいます。たった1日30分の時間外労働であってもです。

また、2020年4月からの労働基準法改正により賃金の時効は、当面は3年であるものの、今後原則の5年となっていきます。

そのため、先程の例を用いて時効5年で計算すると、従業員1人当たりの賃金不払額は60万円、従業員10人で合計600万円となります

あらら、1企業当たりの賃金不払の平均額と同じように、600万円になりました😅

関連:賃金の消滅時効期間が2年から3年に変更(2020年4月から)

賃金不払のリスク

1企業当たりの平均額が609万円が、実はそんなに非現実的な数字ではないことを解説しましたが、なぜこのような賃金不払が生じるのでしょうか?

賃金不払が生じる主な原因は、不適切な労働時間管理、すなわち労働時間の把握・管理方法が客観的にできていないということです。

客観的な時間管理の方法として、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間など方法は何を選択しても良いのですが、その記録が客観的と言えるものなの、ここがポイントになります。

「営業など外勤の多い会社ではタイムカードを押すことができない」と自己申告制にせざるを得ないと思い込んでいる会社もいまだに多く存在します。

しかし、現代のようにほとんどの人がスマートフォンを持ち、クラウドサービスを用いた勤怠管理サービスが数多くある中で、そんな言い訳は通じません。

まとめ

賃金不払の話になると、当社はきちんと払っているので大丈夫と自信満々に答える人がいますが「賃金不払のリスク」で書いたように、労働時間の適切な把握・管理ができていなければ、賃金不払のリスクを抱えた状態になっています。

人事労務の知識があっても運用が疎かになっている企業はまだまだ多い状況です。不安があれば、人事労務を専門にする社労士に相談するようにしましょう。

なお、労働時間の定義や労働時間の把握・管理方法については、以下の記事で解説していますのでご参考ください。

参考:賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和5年)を公表します

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