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賃金の消滅時効期間が2年から3年に変更(2020年4月から)

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2020年(令和2年)4月1日から、労働基準法の改正に伴い、賃金の消滅時効期間が2年から原則5年(当面3年)になります。

未払い賃金の消滅時効期間は、2年から3年に

労働基準法の改正部分は以下の3点です。

  1. 労働者名簿等の書類の保存期間を5年間に延長
  2. 付加金の請求を行うことができる期間を5年間に延長
  3. 賃金請求権の消滅時効期間を5年間に延長

ただし、経過措置として、上の3点に該当する労働基準法第109条、第114条及び第115条の規定の適用について、消滅時効期間は、当分の間、3年間とされています

これら3点について以下1つ1つ解説していきます。

労働者名簿等の書類の保存期間の延長

  • 労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類保存期間について、5年間に延長することとすること。

具体的には以下の労働基準法第109条が改正されています。ただし、経過措置があるため、この部分は当分の間、変更なしです。

労働基準法第109条(記録の保存)
使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を3年間保存しなければならない。

付加金の請求を行うことができる期間の延長

  • 付加金の請求を行うことができる期間について、違反があった時から5年に延長することとすること。

具体的には以下の労働基準法第114条が改正されています。

労働基準法第114条(付加金の支払)
裁判所は、賃金を支払わなかった使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあった時から2年以内にしなければならない。

賃金請求権の消滅時効期間の見直し等

  • 賃金(退職手当を除く。)の請求権の消滅時効期間を5年間に延長するとともに、消滅時効の起算点について、請求権を行使することができる時であることを明確化することとすること。

具体的には以下の労働基準法第115条が改正されているのですが、少々ややこしい部分があるので解説しておきます。

労働基準法第115条(時効)
この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は2年間、この法律の規定による退職手当の請求権は5年間行わない場合においては、時効によって消滅する。

まず、労働基準法第115条の時効について、以下のようにまとめることができます。今回の改正は、このうち「賃金(退職手当を除く。)の請求権」のみです。

  • 賃金(退職手当を除く。)の請求権の時効:2年間 → 改正により5年間(当分の間3年間)
  • 災害補償その他の請求権の時効:2年間(改正なし)
  • 退職手当の請求権の時効:5年間(改正なし)

そして、災害補償その他の請求権とは、以下に関する請求権のことです。

  • 災害補償
  • 年次有給休暇
  • 帰郷旅費:契約解除の日から14日以内
  • 退職時の証明:労働者が請求した場合、遅滞なく交付
  • 金品の返還(賃金を除く):権利者が請求した場合、7日以内に返還

2020年4月以前の未払い賃金の取り扱い

本改正では、経過措置として

  • この法律の施行前に労働基準法第114条に規定する違反があった場合の付加金の請求期間及び賃金(退職手当を除く。)の支払期日が到来した場合の当該賃金の請求権の消滅時効の期間については、なお従前の例によることとすること。

とされています。簡単に言えば、施行日である2020年4月以前に支払期日となっていた賃金、例えば2020年3月に支払われる賃金の消滅時効期間は、2年のままということです。

2025年を目処に、賃金の消滅時効期間は5年となる?

また、本改正の検討事項として、

  • 政府は、この法律の施行後5年を経過した場合において、この法律による改正後の規定について、その施行の状況を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。

とされています。冒頭に書いたとおり、本改正では、賃金の消滅時効期間を2年から5年に変更、ただし、経過措置として当分の間は3年とする、という構成になっています。

そもそも、賃金請求権の消滅時効については、労働基準法第115条が設けられる際に、その根拠となった民法の短期消滅時効(使用人の給料等に関する短期消滅時効)の1年では労働者保護に欠ける等の観点から、2年間と定められていたわけです。

しかし、2017年の民法の一部改正(民法一部改正法、2020年4月施行)により、1年間の短期消滅時効が廃止され、一般債権に係る消滅時効については、

  1. 債権者が権利を行使することができることを知った時(主観的起算点)から5年間行使しないとき
  2. または、権利を行使することができる時(客観的起算点)から10年間行使しないとき

に時効によって消滅するとされました。

そのため、民法一部改正法の契約上の債権の消滅時効期間が最低5年になったのに、労働基準法の賃金請求権の消滅時効が2年のままではおかしいのではないか、このような発想から改正に至るものです。

今回は「当分の間は3年とする経過措置」が設けられましたが、本来の考え方からは5年でないと辻褄が合わないわけです。

施行後5年となる2025年を目処に検討となっていますが、こうした背景、そして今回の改正に際して労使による喧々諤々の議論があったことを考えると、改正民法に合わせて時効が5年となることはほぼ確定であろうと考えています。

参考:労働基準法の一部を改正する法律案

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