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労務トラブルがあったら、すべて労働基準監督署からの行政指導を受けると誤解している人がいます。
労働基準監督署は当事者同士の民事的な争いには原則として関わりません。では、すべて裁判になるのかというのもまずいだろうということで、制度化されたのが個別労働紛争解決制度です。
今回は、国が運営する個別労働紛争解決制度と具体的な助言・指導の事例をご紹介します。
無料で利用できる制度なので、人事労務担当者は突然連絡を受けて慌てないように、制度の概要くらいは知っておきましょう。
個別労働紛争とは
個別労働紛争とは、労働者個人と使用者との間の労働関係上の紛争のことです。
これに対して、労働組合が関係する場合は集団的労使紛争と言います。
以下の記事では最新の統計をグラフにしてまとめているのでご参考ください。
民事上の個別労働紛争の相談件数は25万件を推移し、高止まりしている状況でしたが、近年上昇を続け、27万件を突破した状況です。つまり、会社と労働者の人事労務におけるトラブルが増えているということです。
関連:労働相談は4年連続で120万件超、12年連続でいじめ・嫌がらせが最多
個別労働紛争解決制度の概要・流れ
個別労働紛争を解決するための制度として、平成13年に「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」が施行され、民事上の相談にも国は対応しています。
きちんとした会社であれば、経営者や人事担当者が個別の労働紛争について、会社内部でトラブル解決のための自主的な調整・解決を行うわけですが、人事労務管理の個別化、雇用形態の多様化などもあって、個々の労働者と事業主との間の紛争が増え、自主的な解決ができない状況となってきたことから、このような解決制度が構築されています。
個別労働紛争解決システムの流れは以下のとおりです。
また都道府県に設置されている労働局による助言・指導の手続きの流れは以下のとおりです。
参考:個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん)より
個別労働紛争解決制度の対象
個別労働紛争の最終的な解決手段は裁判です。裁判には時間と費用がかかります。
一方、この個別労働紛争解決制度の場合、利用料は無料です。つまり、労働関係の問題が生じた場合、労働者は利用しやすいという特徴があります。
もちろん、相談内容が労働基準法等の法違反に該当する場合は、労働基準監督署による行政指導が行われます。
しかし、民事上の個別労働紛争については、あくまで紛争当事者同士が話し合って解決するものであり、労働基準監督署は関係ありません。
そのため、個別労働紛争解決制度は当事者同士の話し合いを促すことが目的となっています。
個別労働紛争解決制度の紛争の範囲
対象となる紛争の範囲は「労働条件その他労働関係に関する事項」となっており、具体的には以下のようなものです。
- 解雇、雇止め、配置転換・出向、昇進・昇格、労働条件の不利益変更などの労働条件に関する紛争
- いじめ・嫌がらせなどの職場環境に関する紛争
- 会社分割による労働契約の承継、同業他社への就業禁止などの労働契約に関する紛争
- 募集・採用に関する紛争
- その他、退職に伴う研修費用の返還、営業車など会社の所有物の破損についての損害賠償をめぐる紛争
そして、以下の記事で紹介しているデータのとおり、近年の個別労働紛争で最も多いのが「いじめ・嫌がらせ」、いわゆる「パワハラ」です。
関連:労働相談は4年連続で120万件超、12年連続でいじめ・嫌がらせが最多
「仕事は嫌いではないけど会社は嫌い」という言葉をよく聞きますが、人間関係というのは難しいものです。
ましてや上司・部下という立場が異なると、言葉は同じでも、そのニュアンスや表情によって受け取り方がかなり変わります。
パワハラの当事者の方は「そんなつもりじゃなかった」とよく言いますが、結局は日頃の人間関係と人柄によるということです。
セクハラ問題でもこの種の議論はよくありましたが、正しい、正しくない、の問題というよりも、日頃からの人間関係に落ち着いてしまいます。
なお、パワハラの定義、会社に求められる安全配慮義務については以下の記事で解説していますのでご参考ください。
- 毎年のように改正される労働法令への対応に頭を悩ませている
- 総務や経理などの他の業務を兼務しているので、人事労務業務だけに時間を割けない
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