Work Life Fun

労働基準法・労働協約・就業規則・労働契約の優先順位と関係性をわかりやすく解説

※当サイトはリンクに広告ページが含まれている場合があります

今回は、人事労務管理を行う上で避けては通れない労働基準法・労働協約・就業規則・労働契約(雇用契約)の法的な関係性について解説します。

これらの関係性を理解していないと、せっかく定めた就業規則や雇用契約書の内容が無効になったり、意図しない内容が雇用契約となってしまったりするためご注意ください。

結論を先に示すと、以下の図のようになります。

労働基準法とは?

人事労務管理に関係する労働法令は多々ありますが、基本となるのが、日本国憲法を踏まえて制定された労働基準法です。

労働基準法は、労働者の労働条件の最低条件を定めた法律として、罰則付きの強行法規であり、労働に関する刑法とも言えるため、しっかりと理解しておく必要があります。

労働基準法の対象者は、すべての労働者です。正社員、パート・アルバイト、契約社員などの雇用形態に関わらず適用されます。

なお、ここでいう「労働者」に当たるかどうか(労働者性)は、契約の名称ではなく実態で判断されます。業務委託や請負として契約していても、実態次第で労働者とみなされる点は要注意です。詳しくは以下の記事をご参考ください。

関連:労働者性を判断する2つの基準と労働者の定義の解説

また、労働基準法は事業場単位で適用されます。企業、法人といった単位ではないため、以下の記事をご参考ください。

関連:労働基準法の「事業場」とは?企業・部門との違いと間違えやすい実務ポイント

労働基準法の基準に達しない労働契約はどうなる?

労働契約(雇用契約)は、雇い主である使用者と、雇われる側である労働者の契約行為です。

一般的に、契約行為は当事者間で自由になされるものですが、使用者と労働者との間には力関係の違いが生じるため、労働基準法が労働条件の最低条件を定めることで、下支えをしている形となっています。

つまり、労働基準法に定める基準に満たない「労働協約」「就業規則」「労働契約」は無効になります

ただし、労働基準法に定める基準に満たない「労働協約」「就業規則」「労働契約」であっても、その内容すべてが無効になるわけではありません。

あくまで、労働基準法の基準に満たない部分のみが無効となり、その無効になった部分は、労働基準法に定める基準が適用されます

労働基準法第13条(この法律違反の契約)
この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。

労働協約とは?

労働協約とは、使用者(会社)と労働組合が労働条件等について合意した書面による約束事です。労使協定と混同されがちですが、労働協約と労使協定は異なるものです。

労働組合法第14条(労働協約の効力の発生)
労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する労働協約は、書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印することによってその効力を生ずる。

労働協約の基準に達しない労働契約はどうなる?

労働協約に定める基準に満たない「就業規則」「労働契約」は無効になります。つまり、労働協約によって締結した内容は「就業規則」「労働契約」よりも効力が強いということです。

就業規則は、労働組合や過半数代表者の意見を「聴く」ことで成立しますが、労働協約は、会社と労働組合が「合意」して成立することからも、その重みの違いは明確です。

なお、労働協約の締結内容は、就業規則の内容に比べて労働者に不利なものになっていたとしても有効になる点は要注意です。

労働組合法第16条(基準の効力)
労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は、無効とする。この場合において無効となった部分は、基準の定めるところによる。労働契約に定がない部分についても、同様とする。

就業規則とは?

就業規則は、労働基準法に基づき、常時10人以上の労働者を有する事業場に作成・届出が義務づけられているものです。労働基準法は強行法規なので、就業規則を作成していなければ罰則があります。

なお、就業規則の本体と、賃金規程・退職金規程などの付属文書を指す「規程」、その中の1つ1つの条文を指す「規定」は、社労士でも混同しがちです。違いは以下の記事で整理しています。

関連:規定と規程の違いとは?読み方や使い方を行政出身の社労士が解説

労働基準法第89条(作成及び届出の義務)
常時10人以上の労働者を使用する使用者は、・・・(略)・・・就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。・・・(略)・・・変更した場合においても、同様とする。

就業規則の基準に達しない労働契約はどうなる?

就業規則に定める基準に満たない「労働契約」は無効になります。つまり、就業規則の効力は、個々の労働契約よりも強いということです。

例えば、以下のケースを考えてみます。

  • 就業規則:休日は毎週土曜・日曜と定められている
  • Aさんとの労働契約:休日は日曜のみと双方で同意

就業規則が適用され、Aさんの休日は毎週土曜日・日曜日となります。

労働契約法第12条(就業規則違反の労働契約)
就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。

労働契約とは?

労働契約は、会社(使用者)と労働者の間の個別の契約のことです。雇用契約とも言われます。

労働契約法第6条(労働契約の成立)
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

関連:雇用契約書と労働条件通知書の違いとは?

労働契約と就業規則の関係

労働契約と就業規則の関係は、労働契約法第7条・第12条に定められており、これらをまとめてわかりやすく書くと、

  • 労働者にとって有利な労働条件となっている方を優先する

ということです。

労働契約法第7条
労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りでない。
労働契約法第12条(就業規則違反の労働契約)
就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。

以下の例で考えてみます。

  • 就業規則:休日は毎週土曜・日曜と定められている
  • Aさんとの労働契約:休日は日曜のみと双方で同意
  • Bさんとの労働契約:休日は毎週土曜・日曜、祝祭日と双方で同意

この場合、Aさんの休日は就業規則が適用され、毎週土曜・日曜となります。一方、Bさんは労働契約の内容が優先され、毎週土曜・日曜、祝祭日となります。

労働者に不利益になる就業規則の変更は可能か?

ここまで効力の上下関係を見てきましたが、実務で最もトラブルになるのが「就業規則を労働者に不利な内容へ変更できるか」という論点です。

原則として、就業規則の変更によって、労働者の合意なく労働条件を不利益に変更することはできません

労働契約法第9条(就業規則による労働契約の内容の変更)
使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。

ただし、例外があります。

変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ変更内容が合理的であれば、合意がなくても変更が認められます

合理性は、以下の要素を総合的に見て判断されます。

  • 労働者の受ける不利益の程度
  • 労働条件を変更する必要性
  • 変更後の就業規則の内容の相当性
  • 労働組合等との交渉の状況
合理的なら、勝手に賃金を下げることができるということですか?
Qちゃん
A先生
そう単純ではありません。特に賃金や退職金といった重要な労働条件については、裁判所は「高度の必要性」を求めており、合理性のハードルは非常に高いです。そのため、安易な不利益変更はまず認められないと考えておくべきです。

賃金・退職金の引下げは、労働者にとって影響が大きいため、裁判でも慎重に判断されます。

定年延長に伴う賃金引下げの合理性が争われた第四銀行事件(最二小判平9.2.28)では変更が有効とされた一方、55歳以上の賃金を大幅に減額したみちのく銀行事件(最一小判平12.9.7)では、賃金減額部分の効力が否定されました。

実務的には、「合理的なら変更できる」ではなく「合理性が認められるのは例外的な場合に限られる」と理解しておくのが安全です

まとめ

今回は、労働基準法・労働協約・就業規則・労働契約(雇用契約)の法的な関係性を解説しました。

原則は以下のとおりであって、労働条件の良い方が優先されると理解しておけば十分です。

労働基準法 >> 労働協約 >> 就業規則 >> 労働契約(雇用契約)

ただし、労働協約の内容は、有利・不利に関わらず、就業規則や労働契約より優先されるという点にはご注意ください。

社労士のための
「ほどほど」お悩み相談室

あなたのご質問・ご相談に、月1回、無料・本音で回答します。

ご質問・ご相談は、登録後に届くメールから送っていただけます。費用は一切かかりません。「お悩み相談室」というクローズドな場だからこそ、踏み込んだ内容の質問にも回答できます。

これまでに、こんなご質問・ご相談に回答してきました。

  • コンサル(3号業務)を主力業務にするには、どうすれば良いか?
  • どのようにして顧問料を上げれば良いか?
  • 営業が苦手で、新規の顧客獲得ができない
  • 業務をどう絞り込めば良いか?
  • 一人社労士のままで良いのか、人を雇うべきか?
  • 苦手・相性の悪い顧問先と、どう付き合うか?
  • 生成AIの時代、社労士は今後どう生き残るか?

なぜ、無料で同業の社労士からの相談に乗るのか?

それは「本当に顧客のために活動できる社労士仲間を増やしたい」からです。

私自身、社労士という資格に誇りを持っています。企業からの社労士に対する不満をよく聞きますし、「社労士なんて役に立たない」と思われることは、正直悔しいです。

  • 信頼される・信頼できる社労士の仲間を増やしていきたい

そんな想いから、少しでも社労士業界全体のレベルアップに貢献できればと考えています。

    ※ 登録は無料・月1回配信・配信解除いつでも可能
    ※ 登録後、本人確認のメールをお送りします。届かない場合は迷惑メールフォルダもご確認ください。


    up_line