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「定年65歳は法的な義務」といった誤解が未だにあるので、本記事では、
- 定年とは何か
- 定年の年齢は何歳なのか
- 定年は定めなくてもよいか
- 定年に関する法規制は何があるのか
等について、周辺情報を併せて正確な情報を解説します。
定年とは?
まず、定年とは、期間の定めのない労働契約の退職事由の1つであり、一定の年齢に達したときに労働契約が終了することを意味します。
期間の定めのない労働契約の退職事由には、定年の他に、死亡や解雇があり、就業規則や雇用契約書で定めるものです。
なお、定年制には、厳密には定年退職と定年解雇の2種類があります。以下の記事で解説しているのでご参考ください。
関連:定年退職と定年解雇の違いと見分け方:ポイントは就業規則
定年の年齢
定年は60歳である、いやいや65歳に決まっている、と言う人がいますが、どちらも不正解です。
定年は会社が決める年齢です。
逆に言えば、定年の年齢を決めなければならないという法的な義務はありません。そのため企業によって「定年なし」という選択も可能です。
実際、厚生労働省の平成29年就労条件総合調査によると、
- 定年制を定めている企業:95.5%
- 定年制を定めていない企業:4.5%
と、少数ながら「定年なし」という企業はあります。規模が小さくなるにつれて、定年制を定めていない企業が多いのは興味深いところです。
※ 就労条件総合調査は毎年行われていますが、定年制に関する調査は令和2年、令和元年・平成31年、平成30年では項目に入っておらず、平成29年調査が最新のものとなっています。
以下は本来であればグラフが表示されます。
もしグラフが表示されていない場合はページの更新をしてください。
なお、定年に関する注意点として、就業規則の問題があります。
退職に関する事項は就業規則の絶対的必要記載事項であるため、就業規則に定年の年齢が定められていなければ「定年なし」となります。
関連:本当は怖い就業規則! よくある間違い・落とし穴を徹底解説!
法律により定年は60歳以上
以上の説明のとおり、定年に関する定めは企業の自由です。
ただし、定年の年齢については、高年齢者の雇用の安定に関する法律第8条により、定年は60歳を下回ることができないと規定されています。
そのため、定年に関して就業規則に定める場合、必ず60歳以上としなければなりません。
- 高年齢者の雇用の安定に関する法律第8条(定年を定める場合の年齢)
- 事業主がその雇用する労働者の定年の定めをする場合には、当該定年は60歳を下回ることができない。
もし、60歳を下回る定年年齢を定めた場合は、その定めは無効となり、定年の定めがないことになります(牛根漁業協同組合事件、福岡高裁宮崎支判平17.11.30)。
定年年齢は60歳と65歳のどちらが多いのか?
それでは、企業の定年年齢は実際どうなっているのか、調査結果が以下のとおりです。
法律の最低限である60歳と定年年齢を定めている企業が多いものの、
- 規模が小さくなるにつれて、定年年齢を65歳以上と設定している割合が高い
というのは興味深いところです。
法律上の定年が65歳と誤解されがちな理由
冒頭で書いたように、定年とは一定の年齢に達したときに労働契約が終了することを意味します。
そのため、定年を60歳と定めた企業の従業員は、本来であれば60歳で退職することになるのですが、ここで混乱の元となっているのが、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第9条に基づく「高年齢者雇用確保措置」です。
高年齢者雇用確保措置とは、定年の年齢を65歳未満に設定している企業に対して、以下の3つのいずれかの対応を求めるものです。
- 定年の引上げ
- 継続雇用制度の導入
- 定年の定めの廃止
この3つのうちで、圧倒的に多くの企業が選択しているのが「継続雇用制度の導入」であり、以上をまとめると、
- 定年は60歳
- それ以降は継続雇用制度により65歳まで雇用
とする企業が多いということです。つまり、定年を65歳と設定している企業が多いわけではないというのがデータに基づく事実です。
- 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第9条(高年齢者雇用確保措置)
-
定年(65歳未満のものに限る。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(以下「高年齢者雇用確保措置」という。)のいずれかを講じなければならない。
- 当該定年の引上げ
- 継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。以下同じ。)の導入
- 当該定年の定めの廃止
関連:継続雇用制度とは? 継続雇用制度の2つの種類・企業の導入状況を紹介!
まとめ
今回は、定年の定義、年齢等の法規制に関する基礎知識、そして定年が65歳と誤解されてしまう理由を解説しましたが、最後にまとめておきます。
- 定年というのはあくまで企業が定めるものであり、定年の定めの有無は企業の自由
- 定年の年齢として60歳未満に設定するのはダメ
- 就業規則に定年の年齢を定めていなければ「定年なし」となる
- 企業には65歳までの高年齢者雇用確保措置が求められている
この機会に会社の就業規則を確認し、定年制について明確に定められているかを確認しておきましょう。
- 毎年のように改正される労働法令への対応に頭を悩ませている
- 総務や経理などの他の業務を兼務しているので、人事労務業務だけに時間を割けない
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