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企業には、65歳までの雇用を確保するための措置、いわゆる高年齢者雇用確保措置が求められています。
今回は、高年齢者雇用確保措置の3つの種類、その中で利用率が圧倒的に高い継続雇用制度の種類・メリット・企業の導入状況について解説します。
継続雇用制度とは?
まず、基本的な知識として、現在の日本の公的年金の受給開始年齢は、原則65歳となっています。
以下の記事のとおり定年が60歳と決まっているわけではありませんが、定年が60歳の場合は年金を受給するまでの空白期間が生じることになります。
この空白期間を埋めるための法規制として、65歳までの雇用を確保するための措置、いわゆる「高年齢者雇用確保措置」として、以下の3つのいずれかが企業には求められています。
- 定年の引上げ:例・定年60歳→定年65歳
- 継続雇用制度の導入:後述
- 定年の定めの廃止:例・定年60歳→定年なし
継続雇用制度の種類
継続雇用制度とは、現在雇用している高年齢者が希望するとき、定年後も引き続き雇用する制度であり、以下の2つの制度があります。
- 勤務延長制度:定年年齢に達した人を退職させることなく引き続き雇用
- 再雇用制度:定年年齢に達した人をいったん退職させた後に再び雇用
継続雇用制度を導入する際に、勤務延長制度または再雇用制度のどちらを選ぶかは任意ですが、大きな違いは定年年齢に達した人をいったん退職させるのかどうかです。
そしてこの違いは、定年後の労働条件の決定に大きく影響します。
勤務延長制度
勤務延長制度の場合、定年年齢に達した人を退職させることなく引き続き雇用します。
そのため、勤務延長する場合の労働条件については、就業規則などに労働条件の変更について規定をしておく、または社員の個別の同意を得て行わなければ、原則として定年年齢に達したときの条件をそのまま引き継ぐ必要があります。
再雇用制度
再雇用制度の場合、定年年齢に達した人をいったん退職させた後に再び雇用します。
退職することで労働契約は終了することになるため、再雇用する際の労働条件は新たに決定することができます。
高年齢者雇用確保措置の導入状況
高年齢者雇用確保措置の3種類の中で、企業の導入率が圧倒的に高いのは継続雇用制度です。
以下の記事で紹介している令和5年の調査でも約7割の企業が継続雇用制度を利用しています。
そして、継続雇用制度の2種類、勤務延長制度と再雇用制度の利用割合を示したのが、以下の図です。
平成28年就労条件総合調査結果から作成した図ですが、やはり再雇用制度が圧倒的に利用率が高い状況です。
興味深いことに、企業規模が小さくなるにつれて、勤務延長制度の割合が高くなっています。
再雇用制度の大きなメリットは、定年後に新たに労働条件を決定することができる点です。ただ、定年後も職務内容等を変更せずそのまま継続するのであれば勤務延長制度という選択肢もありえますし、実務的にも勤務延長制度の導入の方が負担が少ないという判断かもしれません。
なお、再雇用制度の場合は、多くの会社では1年ごとの有期労働契約にするため問題は発生しにくいのですが、勤務延長制度の場合は未退職の状態が続いていることになるため、勤務延長の上限年齢(例えば65歳など)の規定を入れておかなければトラブルの元になります。
といっても、以下の調査結果によると、4割の会社で最高雇用年齢を定めていません。元気であればずっと働いて欲しいという会社側の希望なのでしょう。
継続雇用制度の対象者
また、継続雇用制度の対象者についても意外と多くの方が誤解しています。継続雇用制度の対象者は希望者全員です。
といっても、すべての希望者の希望のままに65歳まで雇用し続けなければならないかというと、それは違います。
以下の記事で、継続雇用制度の対象者に関するよくある誤解と対応法について解説していますのでご参考ください。
特に「継続雇用しない事由」については、就業規則できちんと規定せずに運用してしまうと思わぬトラブルにつながりますので要注意です。
関連:継続雇用制度の対象者に関する誤解と正しい情報・継続雇用は拒否できる?
継続雇用制度による再雇用後の賃金
前述のとおり、再雇用制度の場合、定年年齢に達した人をいったん退職させた後に再び雇用します。
退職することで労働契約は終了することになるため、再雇用する際の労働条件を新たに決定することができるわけですが、それでは再雇用後の賃金をどのように設定するのかという点は人事労務担当者の悩みどころでしょう。
以下の記事では東京都の調査結果をご紹介し、また注意しておきたい法規制について解説していますのでご参考ください。
関連:継続雇用制度による再雇用後の賃金は定年時の5〜7割という調査結果
まとめ
継続雇用制度については、意外と誤解されている部分も多く、特に勤務延長制度と再雇用制度の違いを理解しておく必要があります。その後の対応が大きく異なりますし。
この機会に、会社の就業規則を見て、正しい手続きを行っているか確認しておきましょう。
- 毎年のように改正される労働法令への対応に頭を悩ませている
- 総務や経理などの他の業務を兼務しているので、人事労務業務だけに時間を割けない
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