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今回は、労働災害の発生時に提出義務がある労働者死傷病報告を解説します。
日数の数え方に混同が多く、また数え方によって様式や提出時期が変わってくるので要注意です。
労働者死傷病報告とは
労働者死傷病報告とは、労働者が仕事中に負傷、窒息や急性中毒により死亡または休業した場合、会社が労働基準監督署に報告をするもので、これは罰則のある義務です。
その根拠は、労働安全衛生規則第97条です。
- 労働安全衛生規則第97条(労働者死傷病報告)第1項
- 事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、様式第23号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
注意点を挙げておくと、わかりやすいようによく「労働者死傷病報告は仕事中に負傷した場合に必要」と言いますが、該当する条文をよく見ると以下のようになっています。
- 労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における・・・
つまり、就業中以外であっても、事業場内や附属する建物内や敷地内で負傷した場合も提出が義務づけられているということです。
また、よくある誤解として、「病院に労災保険の書類を提出したから大丈夫」というものがありますが、これは手続きとして全く別のものになるため注意が必要です。
以下のポスターにも書かれているとおり、労働者死傷病報告を提出しない = 労災かくし、です。
休業日数が4日以上か4日未満かで様式が異なる
労働者死傷病報告の提出に際して注意すべき点は、休業の日数です。
労働安全衛生規則第97条第2項に以下の定めがあります。
- 労働安全衛生規則第97条(労働者死傷病報告)第2項
- 休業の日数が4日に満たないときは、事業者は、同項の規定にかかわらず、1月から3月まで、4月から6月まで、7月から9月まで及び10月から12月までの期間における当該事実について、様式第24号による報告書をそれぞれの期間における最後の月の翌月末日までに、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
休業日数が4日以上の場合は労働安全衛生規則第97条第1項、休業日数が4日未満の場合は同条第2項による手続きとなります。実務レベルにまとめると以下のとおりです。
- 休業日数が4日以上:遅滞なく様式第23号を提出
- 休業日数が4日未満:四半期ごとに、最後の月の翌月末日までに様式第24号を提出
追記:2019年1月8日より労働者死傷病報告の様式23号が変更されています。
労働者死傷病報告の日数の数え方
前述のとおり、労働者死傷病報告の提出時期・提出様式は、4日以上かどうか がポイントになります。
なお、4日以上の場合は「遅滞なく」となっており、これは「被災者本人と面談できないなどの正当又は合理的な理由がある場合を除き、事情の許す限り最も速やかに」という意味です。
概ね1週間、遅くとも2週間以内程度と理解しておいてください。
問題は、この4日以上という日数の数え方です。実は、調べてみるとこの点は割と微妙な解釈になっています。
まず、結論から書くと、休業日数の数え方は、労働基準監督署のパンフレットに以下のように記載されています。解釈を示した通達を探したのですが見つけることができませんでした。。。
休業日数を数える場合、休業事由が発生した災害の翌日から数え、休業を要する期間内に休日等が含まれる場合はこれを含めた歴日数が休業日数となります。
文章だけだとイメージが湧きにくいでしょうから、2つの例を示して解説していきます。
11/7に災害が発生し、×が休業した日です。
以下の図の場合、休業日数は何日になるでしょうか?
この場合、休業した日は、11/8、11/9、11/11であり、休業日数は3日となります。
休業4日未満の場合の手続きになるわけですが、休業日数として連続するかどうかは関係ありません。
ちなみに、災害当日は、大半の場合そのまま病院に行き、帰宅すると思います。
しかし、「休業事由が発生した災害の翌日」から数えることになるため、上の例の場合、災害当日である11/7は含まないことになります。
2つ目の例が以下の図です。
×がついているのは3日だけですが、この場合、休業日数は何日になるでしょうか?
なお、11/12は土曜日、11/13は日曜日であり、今回の例ではこの2日は休日とします。
パンフレットによると「休業を要する期間内に休日等が含まれる場合はこれを含めた歴日数が休業日数」となるため、これを踏まえると以下のようになります。
- 勤務日のうち休業したのは11/8、11/11、11/14の3日だけ
- ただし、休業日の期間内に土曜日、日曜日の2日が入っている
- そのため、休業日数は5日(11/8、11/11、11/12、11/13、11/14)となる
したがって、この例の場合、休業4日以上の手続きが必要となります。
労働者死傷病報告の記入例
詳細な記入が求められるのは、休業4日以上の場合の労働者死傷病報告・様式第23号です。
以下のリンク先が、労働局による解説、いわば公式ページとなるため、最も正確かつわかりやすく解説されています。
参考:労働者死傷病報告(休業4日以上)記入例と提出先(東京労働局)
まとめ
発生した日や休業した日によって数え方が変わってしまうので、ちょっとモヤモヤした感じになるかもしれません。
以下の記事でご紹介していますが、休業4日以上の災害というのは年間約13万人もいます。単純に1年365日で割ると、1日に約362人の労働者が休業4日以上の災害にあっているわけです。
関連:労働災害の統計の推移のグラフ(H1〜R4、死亡者数・死傷者数)
かなりの数になりますが、業種によって数が違いますし、実際、これまで労働災害を経験したことがない中小企業は多く存在します。
「はじめて労働災害が発生し、パニックになっているので対応策を支援して欲しい」というご相談もたまにあり、今回の記事は最近質問を受け回答した内容をまとめたものです。
ただ、労働者死傷病報告の様式のどちらを使用すればよいかわからない場合、最寄りの労働基準監督署に質問するのが、実は最も近道ですし、正確です。
労働基準監督署が問題視するのは「労災かくし」なわけで、隠す意図がなければ親切に教えてくれます。
- 毎年のように改正される労働法令への対応に頭を悩ませている
- 総務や経理などの他の業務を兼務しているので、人事労務業務だけに時間を割けない
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