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「安全第一」という言葉は有名ですが、安全第一という言葉に続きがあるのをご存知ですか?
今回は、安全第一の由来と本当の意味、そして安全第一という言葉が示すトップの言葉の重要性について説明します。顧問先の安全衛生に関わる社労士にとっては、そのまま指導の場面で使える話でもあります。
先に結論をお伝えします。
- 「安全第一」の続きは「安全第一、品質第二、生産第三」
- 「第四」は存在しない(元の標語は第三まで)
- 英語では「Safety First」と表記する
「安全第一」が生まれた経緯
製造業や建設業などの危険な業務を行う現場で「安全第一」を掲げている会社は多々あります。
ただ、事務職などの方には信じられないかもしれませんが、約60年前の昭和40年代前半には、労働災害による死亡者数は年間6,000人前後もいました。
1日当たりに換算すると、1日約16人が労働災害で死亡していたわけです。
そのような憂慮すべき状態を解消するために、日本では労働安全衛生法が労働基準法から分離され、まさしく官民一体で、労働災害防止に取り組んできました。
その結果として、厚生労働省が公表した「令和7年の労働災害発生状況」によると、令和7年(2025年)の労働災害による死亡者数は700人(前年比46人減)と、過去最少を更新、1日当たりに換算すると、約2人です。


なお、事業者の責務については労働安全衛生法に明記されています。
- 労働安全衛生法第3条第1項(事業者等の責務)
- 事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない。
「最低基準を守るだけでなく・・・」と書かれている点が重要です。法令は最低ラインであり、そこから先に何を優先するかは、経営者が自ら示さなければならない領域だということです。
安全第一があるなら、第二、第三もある?
「安全第一」というからには、第二、第三もあるのでしょうか?
元々「安全第一」という言葉はアメリカで誕生した標語と言われていますが、この「安全第一」は単体の言葉ではありません。
- 安全第一、品質第二、生産第三
とセットになって生まれた言葉です。つまり「安全第一」の本当の意味は、
- 安全も品質も生産も第一ということではなく、優先順位をすべての従業員がわかるように設定して、安全が最優先である
ことを示した言葉ということです。
「第四」は存在するのか
「安全第一 続き 第四」という検索をされる方が少なくありませんが、第四は存在しません。元の標語は「安全第一、品質第二、生産第三」の3つで完結しています。
では、なぜ第三までなのでしょうか。あくまで私なりの解釈となりますが、優先順位は、増やせば増やすほど機能しなくなるからだと考えています。
現場の従業員がとっさに判断を迫られる場面で思い出せるのは、せいぜい3つまでです。4つ、5つと並べた瞬間、それは優先順位ではなく単なる「大事なことリスト」に変わってしまいます。


「安全第一」を英語で言うと?
安全第一を英語で言うと「Safety First」です。
標語として掲示される際は「SAFETY FIRST」と大文字で表記されることが一般的で、形容詞的に用いる場合は「safety-first」とハイフンでつなぎます。例えば、safety-first policy = 安全第一の方針などです。
3つセットの標語としては、以下のように表現されます。
- Safety First, Quality Second, Production Third
日本語では「セーフティーファースト」というカタカナ表記も使われますが、標語としての定着度は「安全第一」のほうが圧倒的に高いといえます。
なお、最近は「○○ファースト」という言い回しをよく聞きますが、あれは「Safety First」の構文が広く借用されたものと考えると理解しやすいのではないでしょうか。
「安全最優先」との違い・言い換え
「安全第一」の言い換えとして「安全最優先」という言葉が使われることがあります。意味は近いのですが、ニュアンスに違いがあります。
| 表現 | ニュアンス |
|---|---|
| 安全第一 | 第二・第三が存在することが前提。順位づけの中の1番目 |
| 安全最優先 | 他と比較して最も上位であることの強調。第二以下は示されない |
実務で機能するのは「安全第一」のほうです。
なぜなら、後述するとおり、第二・第三を明示することにこそ意味があるからです。「安全最優先」だけでは、では品質と生産はどちらが上なのか、という現場の迷いが残ってしまいます。
USスチールが作った安全第一
「安全第一」という言葉はアメリカで誕生した標語であると紹介しましたが、Wikipediaでは以下のように紹介されています。
安全第一 (safety-first)は、アメリカ合衆国で誕生した標語である。
1900年代初頭、アメリカ国内では不景気のあおりを受け、労働者たちは劣悪な環境の中で危険な業務に従事していた。結果、多くの労働災害に見舞われていた。
当時、世界有数の規模を誇っていた製鉄会社、USスチールの社長であったエルバート・ヘンリー・ゲーリーは労働者たちの苦しむ姿に心を痛めていた。
熱心なキリスト教徒でもあった彼は人道的見地から、当時の「生産第一、品質第二、安全第三」という会社の経営方針を抜本的に変革し、「安全第一、品質第二、生産第三」としたのである。
この方針が実行されると、労働災害はたちまち減少した。品質・生産も上向いた景気の波に乗り、この安全第一という標語はアメリカ全土に、やがて世界中に広まった。
「安全第一、品質第二、生産第三」という言葉が誕生する前は「生産第一、品質第二、安全第三」だったと。製鉄会社、そして1900年代初頭という時代を考えると、労働災害は確かに多かったでしょう。
そんな状況の中、社長がトップの決断で優先順位を変更したのは驚愕に値します。
従業員の安全が大事であることは当然ですが、経営者にとっては売上に直結する品質や生産も大事です。
普通の経営者であれば、安全・品質・生産、すべてが第一であると中途半端なことを言ってしまいがちですが、あえて品質や生産よりも安全が第一であると示す勇気に感嘆・敬服します。
ヤマトが実践した安全第一・営業第二
次に、日本の事例として、名著と謳われているヤマト運輸の創業者・小倉昌男氏の「経営学」の以下のエピソードを取り上げます。
「安全第一、営業第二」と書いたポスターを自社に貼った。その結果、事故は急激に減った。
運転者は「安全第一」といっても営業(配送効率)は絶対落してはいけない、できるだけ早くお届けするのが自分達の使命であるという呪縛ともいうべき思いがあり、その結果、安全よりも配送効率=スピードを優先していたが、トップから配送効率は二番手でいい、それより安全輸送が優先するのだという方針が明確に示されたので安心して安全輸送に取り組むことができたのである。
興味深いことに、「安全第一、営業第二」としたにもかかわらず不思議なことに営業(配送効率)は落ちなかった。
トップだからこそ「安全第一」、そして「営業第二」と言うことができる。
現場の責任者が宣言して、それを貼り出していたら、見回りにきたトップから「お前は何を考えているのだ!」とお叱りをうけるに違いない。
だからトップ自らが何を優先するべきかを明らかにしなければいけない。
やはり、ここでもトップが、安全第一の次に、営業第二と掲げることにより従業員に優先順位を明示しています。
まさしく、トップと管理職のメッセージの違いをはっきりと示すエピソードです。
第二があるから、安全第一が際立ち、トップが何を大事にしているかを示すことができるわけです。


社労士に有用な「安全第一」の話
ここまで「安全第一」の歴史的経緯を書いてきましたが、最後に社労士の視点で整理しておきます。
安全衛生は、社労士にとって後回しになりがちな分野です。手続き報酬が発生しにくく、「うちは製造業ではないので」と顧問先に言われれば、それ以上踏み込みにくい、このような話をよく聞きます。
しかし今回の「安全第一の続き」という話は私自身よくフックとして使うネタです。
例えば、労働安全衛生規則第23条第1項により毎月1回以上開催しなければならない安全衛生委員会の小話の1つとして最適でしょう。
また、経営者との会話の際にも大いに使えるネタです。その時点で経営者は何を最も優先しているのか、それを従業員に伝えているのか、どのように伝えているのかというヒアリングもできます。
なお、厚生労働省出身という経験から補足しておくと、労働局や監督署が現場で本当に見ているのは、法令違反の有無だけではありません。経営トップが安全についてどのような姿勢を示しているか、その方針が現場に伝わっているかを必ず見ています。
まとめ
どのような優先順位を示すかは自由です。
ただ、優先順位を示す際には、第一を示すだけでなく、第二、第三を示すことが重要、というのがこの話の教訓でしょう。
トップが「何でも重要」などとお茶を濁すようなことを言っていると、結局、同床異夢の状態になり、すべてが形骸化することをこの事例は示しています。
従業員に自主性を持たせることは結構です。しかし、示すべき優先順位はトップである経営者の役割ではないでしょうか?
そして社労士にとっては、その役割をトップに思い出させることが仕事です。
100年以上前の標語を一つ知っているだけで、顧問先との会話は驚くほど変わります。次回の訪問で、ぜひ一度使ってみてください。
安全衛生体制の具体的な整備については、以下の記事もあわせてご覧ください。
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