障害者雇用義務と障害者雇用率の制度改正(50人→45.5人以上)を詳細解説

[2016/4/13公開、2018/3/28追記]

これまで障害者の雇用義務が課されていたのは50人以上の企業でしたが、平成30年4月から45.5人以上の企業になります。

障害者雇用制度については割と間違って理解している人が多いため、今回は障害者雇用制度・法規制についてわかりやすく解説します。

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障害者雇用率

障害者を雇用する上で遵守しなければならないのが、障害者雇用促進法(正式名称は「障害者の雇用の促進等に関する法律」)です。

同法第43条に基づき、従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める障害者の割合を法定雇用率以上にする義務があります。

この法定雇用率のことを障害者雇用率といい、事業主の区分によって雇用率が異なっています。

平成30年4月からこの法定雇用率が以下のように引き上げられます。

事業主区分 法定雇用率(H30/4/1より前→H30/4/1以降)
民間企業 2.0%→2.2%
国、地方公共団体等 2.3%→2.5%
都道府県等の教育委員会 2.2%→2.4%

この障害者雇用率を用いて計算することによって、一般の民間企業の場合、障害者を少なくとも1名雇用しなければならないのは45.5人以上の企業(以前は50人以上の企業)となるわけです。

つまり、この障害者雇用率が変われば、障害者雇用義務が生じる企業の規模(従業員の人数)が変わる点に注意してください。

法律で「常時10名以上」と規定されている就業規則のような規制と異なるのがこの部分です。

なお、「詳説 障害者雇用促進法―新たな平等社会の実現に向けて」によると、フランスの法定雇用率は6%、と現在の日本の約3倍、そして3年以上1人も障害者を雇用していない事業主に対しては最低賃金の1500倍の納付金を課しているということで、これは納付金さえ支払えば障害者を雇用しなくてもよいという考えを許さないためだそうです。

もちろん、障害者の定義や雇用義務の考え方は各国で異なるため、単純に日本の規制が緩いなどと即断すべきではありませんが、フランスは厳しいんですね。

障害者雇用の義務となる範囲とその計算方法

各企業の実際の雇用率(実雇用率)の計算式は以下のとおりです。

実雇用率 = 身体障害者、知的障害者及び精神障害者である常用労働者数 / 常用労働者数

上の計算式の太字で示していますが、平成30年4月からの改正点として、先程の障害者雇用率の引き上げに加えて、障害者雇用義務の対象に精神障害者が追加されています。

なお、数え方の注意点は以下のとおりです。

  • 短時間労働者は0.5人とカウントする。この短時間労働者とは、週所定労働時間20時間以上30時間未満の労働者のこと。
  • 重度身体障害者、重度知的障害者は1人を2人としてカウントする。ただし、短時間の重度身体障害者、重度知的障害者は1人としてカウントする。

精神障害者である短時間労働者の法定雇用率上の特例

前述のとおり、短時間労働者は0.5人とカウントするのが原則ですが、以下の2つの条件をいずれも満たした短時間労働者については、1人を1とカウントすることができます。

  1. 雇入れから3年以内の方 または 精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内の方
  2. 平成35年3月31日までに雇い入れられ、精神障害者保健福祉手帳取得を取得した方

なお、この特例措置については5年間となっていますが、それ以降継続されるかどうかは今回の特例による効果を踏まえて検討されることになっています。

参考 障害者雇用義務の対象に精神障害者が加わります

障害者雇用の除外率

一律の雇用率を適用することになじまない性質の職務もあるということで、業種ごとに障害者雇用の除外率制度というものがあります。

この除外制度は既に平成16年4月に廃止されているのですが、経過措置として残っています。

除外率設定業種 除外率(H22.7-)
非鉄金属製造業(非鉄金属第一次製錬精製業を除く。)
倉庫業
船舶製造・修理業、船用機関製造業
航空運輸業
国内電気通信業(電気通信回線設備を設置して行うものに限る。)
5%
窯業原料用鉱物鉱業(耐火物・陶磁器・ガラス・セメント原料用に限る。)
その他の鉱業
採石業、砂・砂利・玉石採取業
水運業
10%
非鉄金属第一次製錬・精製業
貨物運送取扱業(集配利用運送業を除く。)
15%
建設業
鉄鋼業
道路貨物運送業
郵便業(信書便事業を含む。)
20%
港湾運送業 25%
鉄道業
医療業
高等教育機関
30%
林業(狩猟業を除く。) 35%
金属鉱業
児童福祉事業
40%
特殊教育諸学校(専ら視覚障害者に対する教育を行う学校を除く。) 45%
石炭・亜炭鉱業 50%
道路旅客運送業
小学校
55%
幼稚園 60%
船員等による船舶運航等の事業 80%

参考 除外率制度について(厚生労働省)

障害者雇用状況報告

平成30年4月からの改正により、従業員45.5人以上の企業は、毎年6月1日時点の障害者の雇用に関する状況(障害者雇用状況報告)をハローワークに報告する義務があります。

毎年ハローワークから対象の企業に報告用紙が送付されますので、7月15日までに必要事項を記載し返信する必要があります。

そして、障害者雇用義務を果たさない事業主に対して、ハローワークは以下の図の流れで行政指導を行い、最終的には企業名の公表まであるため要注意です。

障害者雇用率の低い企業への行政指導の流れ

平成30年3月に発表された29年度の企業名公表事案はなしということでしたが、28年度は2社の社名、本社所在地、代表者氏名が公表されています。

参考

まとめ

今回は、障害者雇用に関する法規制の基本として以下の事項を解説しました。

障害者雇用に関する法規制の基本的事項
  • 障害者雇用率
  • 企業における実際の雇用率の計算方法
  • 障害者雇用の除外率
  • 毎年の報告義務:障害者雇用状況報告
  • 障害者雇用義務を果たさない場合の制裁:行政指導と企業名の公表

障害者雇用義務については今回の改正により45.5人以上と変更になりましたが、労働者数が50人以上かどうかというのは人事管理上、要注意です。

以下の記事で解説していますが、労働者数50人以上になると様々な法的義務が発生します。

社員数50人以上というのは人事労務管理上要注意です。50人以上で選任が義務となる3つの資格・職務を解説します。

なお、100人超の企業で、今回説明した障害者雇用率を達成できない場合、1人につき月額5万円徴収される障害者雇用納付金制度というのがあります。

詳しくは以下の記事で解説していますのでご参考ください。

今回は、100人超の障害者雇用率を達成できない企業に対して、いわば罰金的に徴収する納付金、上回る企業に支給される調整金について解説します。

また、平成28年4月の改正障害者雇用促進法に基づき、企業は障害者に対する差別の禁止、合理的配慮、苦情処理・紛争解決援助を求められております。詳しくは以下で解説しています。

平成28年4月から義務づけられた改正障害者雇用促進法について既に対応済ですか?今回は改正内容のポイントについて指針・Q&Aを活用して詳細に解説します。

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この記事を書いた人


安部敏志:社会保険労務士

「就業規則は働き方のルールであり、社内で自ら作成・修正すべき」という信念のもと、中小企業の人事担当者の育成に従事。
その他、専門雑誌等の記事の執筆にも積極的に対応。

事務所公式サイト:あべ社労士事務所

なお、同業の社労士から事務所運営や営業方法などの相談を受けることが増えていますが、当事務所は開業当時から この方法をそのとおりに実行しているだけです。

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