障害者雇用義務と障害者雇用率の変更:令和3年3月から43.5人以上に

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カテゴリー: 障害者雇用

令和3年3月から、従業員を43.5人以上雇用している事業主は、障害者を1人以上雇用しなければなりません

今回は、障害者雇用義務である障害者雇用率制度や除外率制度など障害者雇用制度の基本的な内容を解説します。

障害者雇用制度は社会状況を踏まえて年々変わりますので、きちんと理解しておきましょう。割と間違って理解している人が多いのですよ・・

1. 障害者雇用率

障害者を雇用する上で遵守しなければならないのが、障害者雇用促進法(正式名称は「障害者の雇用の促進等に関する法律」)です。

同法第43条に基づき、従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める障害者の割合を法定雇用率以上にする義務があります。

この法定雇用率を障害者雇用率といい、事業主の区分によって雇用率が異なっています。

そして、令和3年3月1日からこの法定雇用率が以下のように0.1%ずつ引き上げられます。なお、前回の変更は平成30年4月で、当時は0.2%ずつの引き上げでした(民間企業で2.0% → 2.2%)

事業主区分 法定雇用率(R3/3/1より前 → R3/3/1以降)
民間企業 2.2% → 2.3%
国、地方公共団体等 2.5% → 2.6%
都道府県等の教育委員会 2.4% → 2.5%

(1) 障害者の雇用義務がある企業は?

この障害者雇用率2.3%を用いて計算(1÷2.3%)することによって、一般の民間企業の場合、

  • 障害者を少なくとも1名雇用しなければならないのは43.5人以上の企業(R3/3/1以前は45.5人以上の企業)

となります。障害者雇用率が変わると障害者雇用義務が生じる企業の規模(従業員の人数)が変わることに注意してください。

そして、企業の規模(従業員の人数)から見たとき、雇用すべき障害者の人数が変わることにも注意が必要です。例えば、従業員数90人の企業では、障害者雇用率が2.2%から2.3%に変更されることによって、今後は2人の障害者を雇用する義務が生じます。

労働法の多くは「10名以上」「50名以上」といった形で規制がありますが、障害者雇用に関してはこの障害者雇用率という考え方、そして変動するという点に特徴があります。

なお「詳説 障害者雇用促進法―新たな平等社会の実現に向けて」によると、フランスの法定雇用率は6%ということです。障害者の定義や雇用義務の考え方は国により異なるため、単純に「日本の規制が緩い」と即断すべきではありませんが驚きです。

(2) 障害者雇用率制度における「障害者」の範囲

障害者雇用率制度では、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の所有者が実雇用率の算定対象になります。

(3) 企業における障害者雇用率の計算方法

各企業の実際の雇用率(実雇用率)の計算式は以下のとおりです。

  • 実雇用率 = 身体障害者、知的障害者及び精神障害者である常用労働者数 / 常用労働者数

計算式の太字で示していますが、平成30年4月から障害者雇用義務の対象に精神障害者が追加されました。

なお、数え方の注意点は以下のとおりです。

  • 短時間労働者は0.5人とカウントする。この短時間労働者とは、週所定労働時間20時間以上30時間未満の労働者のこと。
  • 重度身体障害者、重度知的障害者は1人を2人としてカウントする。ただし、短時間の重度身体障害者、重度知的障害者は1人としてカウントする。

以上の注意点をまとめると以下の表のようになります。

週所定労働時間 30時間以上 20時間以上30時間未満
身体障害者
身体障害者(重度)
1
2
0.5
1
知的障害者
知的障害者(重度)
1
2
0.5
1
精神障害者 1 0.5 (注)
  • (注) 精神障害者である短時間労働者で以下の2つの条件をいずれも満たす場合は、1人を1とカウントする。
    • 雇入れから3年以内の方 または 精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内の方
    • 令和5年3月31日までに雇い入れられ、精神障害者保健福祉手帳取得を取得した方

2. 障害者雇用の除外率制度

障害者雇用の除外率制度とは、障害者の就業が一般的に困難であると認められる業種について、雇用する労働者数を計算する際に、除外率に相当する労働者数を控除する制度のことで、除外率は以下の表のとおり。

なお、この除外制度は既に平成16年4月に廃止されていますが、経過措置として残っています。

除外率設定業種 除外率(H22.7-)
非鉄金属製造業(非鉄金属第一次製錬精製業を除く。)
倉庫業
船舶製造・修理業、船用機関製造業
航空運輸業
国内電気通信業(電気通信回線設備を設置して行うものに限る。)
5%
窯業原料用鉱物鉱業(耐火物・陶磁器・ガラス・セメント原料用に限る。)
その他の鉱業
採石業、砂・砂利・玉石採取業
水運業
10%
非鉄金属第一次製錬・精製業
貨物運送取扱業(集配利用運送業を除く。)
15%
建設業
鉄鋼業
道路貨物運送業
郵便業(信書便事業を含む。)
20%
港湾運送業 25%
鉄道業
医療業
高等教育機関
30%
林業(狩猟業を除く。) 35%
金属鉱業
児童福祉事業
40%
特殊教育諸学校(専ら視覚障害者に対する教育を行う学校を除く。) 45%
石炭・亜炭鉱業 50%
道路旅客運送業
小学校
55%
幼稚園 60%
船員等による船舶運航等の事業 80%

参考:除外率制度について(厚生労働省)

3. 障害者雇用状況報告

既述のとおり、令和3年3月から、従業員を43.5人以上雇用している事業主は、障害者を1人以上雇用しなければならないのですが、同時に、毎年6月1日時点の障害者の雇用に関する状況(障害者雇用状況報告)をハローワークに報告する義務も生じます。

障害者雇用状況報告については、毎年ハローワークから対象企業に報告用紙が送付されますので、7月15日までに必要事項を記載し返信することになります。

そして、障害者雇用率(実雇用率)の低い事業主に対して行われる行政指導(障害者雇用率達成指導)については、最悪の場合、企業名の公表もありえるため要注意です。

詳しくは以下の記事で解説しています。

関連:障害者雇用率の低い事業主への行政指導の流れ

4. 障害者雇用納付金制度

また、常用雇用労働者の総数が100人を超える事業主は、障害者雇用納付金制度の対象になります

法定の障害者雇用数を満たさない場合、1人当たり月額5万円の障害者雇用納付金を徴収されるためご注意ください。

詳しくは以下の記事で解説しています。

関連:100人超の企業に義務付けられる障害者雇用納付金制度とは?

5. 障害者の差別禁止及び合理的配慮の提供義務等

実際に障害者を雇用する、または雇用してから注意すべき点が、平成28年4月施行の改正障害者雇用促進法に基づく「障害者に対する差別の禁止」「合理的配慮」です。

詳しくは以下の記事で解説しています。

関連:障害者雇用促進法における差別禁止と合理的配慮とは?

まとめ

今回は、障害者雇用義務である障害者雇用率制度や除外率制度など障害者雇用制度の基本的な内容を解説しました。

特に、障害者雇用率は今後も随時改正されていくためご注意ください。

なお、労働法では従業員数が50人以上になると様々な法的義務が発生します。以下の記事で解説していますのでご参考ください。

関連:50人以上の事業場に義務とされている資格・職務を徹底解説!

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