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夏や冬になると、賞与の平均支給額が報道で盛り上がります。調査機関によって情報はまちまちで「2020年冬のボーナスはいくら?上場企業平均は?」によると、
- 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査では、平均34万7806円
- 労務行政研究所の調査では、平均74万3968円
ということでバラツキがありますが、多くの調査では、上場企業のみを対象、調査数が100-200社程度と少ない数になっています。もちろん、速報性を重視した調査なので、それは仕方のないことです。
しかし、正確な実態を知るためには99%を占める中小企業を含めた全体の賞与の支給額を確認する必要があります。
そして、その場合に適しているデータとして、厚生労働省が公表している「厚生年金保険・国民年金事業年報」があります。
法人は当然、個人事業主でも要件を満たす場合は厚生年金保険の適用事業所となります。そして賞与を支給した場合は5日以内に「被保険者賞与支払届」を年金事務所に提出しなければなりません。
このような理由から中小企業を含めた賞与額の実態を把握するのに最も信頼できるデータは「厚生年金保険・国民年金事業年報」と考えます。被保険者数4400万人を対象にした調査なので、100-200人を対象にしたデータとは正確性がまったく違いますし。ただ、令和2年3月31日発表のデータは平成30年度分、といったように発表されるデータが少し前という点は困りますが・・・
なお、厚生年金保険に加入していない会社の実態はこのグラフに反映されていませんが、未加入の会社が高い賞与を支給しているとは考えいにくいため、実態はグラフよりも数値が低くなる(賞与が低い)と推定されます。
賞与の平均支給額は1回あたり45万円
2020年3月に公表された「厚生年金保険・国民年金事業年報」によると、平成30年度の標準賞与額1回当たりの平均は449,984円、四捨五入すると45万円となっています。
なお、過去の平均支給額の推移は以下のとおり。
総数 | 男性 | 女性 | |
---|---|---|---|
平成25年度 | 428,046円 | 496,257円 | 295,951円 |
平成26年度 | 435,820円 | 506,140円 | 299,803円 |
平成27年度 | 440,856円 | 513,382円 | 303,238円 |
平成28年度 | 440,335円 | 513,525円 | 304,003円 |
平成29年度 | 444,626円 | 518,814円 | 308,687円 |
平成30年度 | 449,984円 | 526,014円 | 313,112円 |
正社員の27%は賞与なし
賞与の平均支給額が1回あたり45万円と聞くと、高いと驚く方もいるかもしれません。しかし、あくまで賞与の「平均」支給額なので、賞与の支給額が極めて高い人がいると平均は上がります。
そこで、実態をよりわかりやすくご紹介するために、年間賞与額に応じた人数分布の表をグラフにしました。以下のグラフでは、縦軸が年間賞与額、横軸がその賞与額を受けている人数の全体割合です。
以下は本来であればグラフが表示されます。
もしグラフが表示されていない場合はページの更新をしてください。
グラフを見ると、被保険者数、主に正社員になりますが、合計4400万人のうち、
- 27.0%、簡単にまとめると約30%の人が年間賞与なし
という状況です。男女別の内訳は、男性24%、女性30%が年間賞与なし。
一方、年間賞与額100万円以上の人は31.9%、そして厚生年金保険の年間標準賞与額の上限である450万円以上が約3,864人います。
つまり、賞与なしの人が27%いる一方で、年間賞与額100万円以上の人が32%いるため、賞与の平均支給額が上がっている、あまり平均を議論しても意味がないとも言えます。
なお、公表されている統計では10万円ごとに区分されていますが、見やすさのために正社員は年間賞与100万円以上を合計してグラフにしています。
まとめ
賞与・ボーナスの時期になると平均賞与額といった数字が出てきて、上がった・下がったといった話で盛り上がりますが、実態を見るとかなりイメージと異なるものではないでしょうか?
そもそも賞与とはどういうものでしょうか? 以下の記事で、賞与の定義・歴史、賞与の計算方法、社会保険料や所得税の計算方法などを解説しています。
- 毎年のように改正される労働法令への対応に頭を悩ませている
- 総務や経理などの他の業務を兼務しているので、人事労務業務だけに時間を割けない
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