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フレックスタイム制の基本とメリット・業種別の導入状況

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従業員が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることができるフレックスタイム制は、従業員・会社の双方にとってメリットのある制度です。

フレックスタイム制とは

フレックスタイム制は、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、従業員が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度です。

以下の図のように、通常の労働時間制度では、会社が決めた始業・終業時刻、労働時間に従って働くわけですが、フレックスタイム制では従業員が自ら働く時間を決めることができるという点が大きなポイントです。

(1) 従業員のメリット

フレックスタイム制を利用することで、従業員は日々の都合に合わせて、プライベートと仕事の時間配分を自由に決めることができ、以下のような使い方が考えられます。

  • 共働きで子育てをする夫婦:保育園の送り迎えを日替わりで分担
  • 資格取得を目指して大学に通う人:毎週月・水・金は社会人大学に通うために早く退社するが、火・木は多めに勤務
  • 通勤ラッシュを避けたい人:満員の通勤電車が苦痛なので出勤時間を遅めに設定、早めに帰りたい日は通勤ラッシュより早めに出勤
  • 通院している人:病院に寄ってから出勤 など

(2) 会社のメリット

まず、会社にとって、最大のメリットと言えるのが労働時間が通算できるという点です。

原則の労働時間制度の場合、1日8時間を超えれば時間外労働となり割増賃金の支払いが必要です。

また、1か月単位や1年単位の変形労働時間制度の場合でも、設定した時間を超えれば割増賃金の支払いが必要になります。

しかし、フレックスタイム制の場合は、1か月など清算期間内の労働時間で割増賃金を計算するため、例えば、ある日に8時間を超えた時間外労働をさせたとしても、別の日に早く退社させることで柔軟な労働時間の通算が可能となります。

また、フレックスタイム制を利用することで、従業員は働く時間の裁量を持ち、自ら柔軟な働き方を選択できるため、モチベーションアップにつながり労働生産性の向上が期待できる点も大きなメリットです。

実際、以下の記事でもデータを踏まえて紹介していますが、モチベーションアップに最も効果がある人事制度として

  • 労働時間の短縮や働き方の柔軟化

がトップになっています。

後述するようにフレックスタイム制を利用している会社はまだまだ少ない状況です。

ワークライフバランスを促進している会社というイメージを作ることができるのは、会社にとって大きなメリットと言えます。

関連:モチベーションアップにつながる人事制度と雇用管理(調査結果)

コアタイムとフレキシブルタイム

フレックスタイム制を理解・運用する上で重要なのが、コアタイムとフレキシブルタイムです。

  • コアタイム:従業員が1日のうちで必ず働かなければならない時間帯
  • フレキシブルタイム:従業員が自らの選択によって労働時間を決定できる時間帯

コアタイムとフレキシブルタイムの設定例は以下のとおりです。

コアタイムとフレキシブルタイムのいずれも必ず設定しなければならないものではありません。

しかし、フレックスタイム制の大きなメリットである柔軟な働き方を行う場合には、労使で話し合って上手に設定することが重要になります。

(1) コアタイム

コアタイムは、従業員が1日のうちで必ず働かなければならない時間帯です。

必ず設定しなければならないものではありませんが、設定する場合には、その時間帯の開始・終了時刻を労使協定で定める必要があります。

また、コアタイムの時間帯は労使協定で自由に定めることができるため、以下のような定め方も可能です。

  • コアタイムを設定する日と設定しない日
  • 日によって異なるコアタイムの時間帯

なお、コアタイムを設定せずに、実質的に出勤日も従業員が自由に決めることができるようにする完全フレックスタイム制とすることもできます。

ただし、所定休日はあらかじめ定めておく必要があります

(2) フレキシブルタイム

フレキシブルタイムは、従業員が自らの選択によって労働時間を決定できる時間帯です。

必ず設定しなければならないものではありませんが、設定する場合には、その時間帯の開始・終了時刻を労使協定で定める必要があります。

フレキシブルタイムの時間帯も、コアタイムと同様に、労使協定で自由に定めることができます。

(3) コアタイムとフレキシブルタイム設定時の注意点

以上のとおり、コアタイムとフレキシブルタイムは労使協定によって自由に定めることができます。

しかし、以下のような従業員が始業・終業時刻を自由に決定するという趣旨に反する場合には、フレックスタイム制とは言えなくなるため注意が必要です。

  • コアタイムの時間帯が1日の労働時間とほぼ同程度になるような場合
  • フレキシブルタイムの時間帯が極端に短い場合

フレックスタイム制の導入状況

最後に、変形労働時間制の導入状況を紹介しておきます。

令和5年就労条件総合調査によると、全業種の変形労働時間制の導入状況は、以下のとおりです。

  • 変形労働時間制を導入している:59.3%
  • 変形労働時間制を導入していない:39.4%
注意

以下は本来であればグラフが表示されます。
もしグラフが表示されていない場合はページの更新をしてください。

なお、変形労働時間制を導入している企業59.3%の内訳は以下のとおりです(複数回答あり)。

  • 1年単位の変形労働時間制:31.5%
  • 1か月単位の変形労働時間制:24.0%
  • フレックスタイム制:6.8%

従業員・会社双方にメリットがあるフレックスタイム制の導入状況は、かなり低調であることがわかります。

従業員数の規模別に見ると以下のとおりです(複数回答あり)。

1年単位の変形労働時間制 1か月単位の変形労働時間制 フレックスタイム制
1,000人以上 19.1% 49.1% 30.7%
300人-999人 24.6% 38.3% 17.2%
100人-299人 33.5% 29.9% 9.4%
30人-99人 31.9% 20.0% 4.2%

次に、業種別の導入状況をまとめたのが以下のグラフです。

なお、「令和5年就労条件総合調査結果」では業種別のデータが集計されていないので、データが集計された中で最近となる平成30年の調査結果を整理したのが以下のグラフです。

全体的には低調なフレックスタイム制の導入状況ですが、以下の業種では「1年単位の変形労働時間制」や「1か月単位の変形労働時間制」と同等、またはそれ以上に利用されていることがわかります。

  • 情報通信業
  • 学術研究、専門・技術サービス業

従業員の専門性が高く、働き方の柔軟性・裁量を与えることで力を発揮して欲しいという理由が大きいのでしょう。

まとめ

フレックスタイム制は、なぜか導入率が低いのですが、従業員だけでなく会社にも大きなメリットがあり、実務的にはとてもオススメな制度です。

他の変形労働時間制と比べて導入手続きが大変という面は確かにあります。

しかし、それ以上に、制度のメリットがあまり知られていないのが理由ではないかと考えています。

実際、当事務所の顧問先にフレックスタイム制のメリットをお伝えすると、すぐに導入が決まることが多いですし。

フレックスタイム制の導入時に注意すべき実務上のポイントについては、以下の記事で解説しています。

関連:フレックスタイム制の導入時に注意すべき3つの実務上のポイント

また、フレックスタイム制を導入するためには、就業規則の整備と労使協定の締結が義務です。以下の記事でそれぞれの記載項目を解説しています。

関連:フレックスタイム制の導入要件:就業規則と労使協定の記載項目

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