フレックスタイム制の基本とメリット・業種別の導入状況

労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることができるフレックスタイム制は労働者だけでなく会社にとってもメリットのある制度です。フレックスタイム制の基本、業種別の導入状況を紹介します。

フレックスタイム制とは

フレックスタイム制は、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度です。

以下の図のように、通常の労働時間制度では、会社が決めた始業・終業時刻、労働時間に従って働くわけですが、フレックスタイム制では労働者が自ら働く時間を決めることができるという点が大きなポイントです。

フレックスタイム制の労働者へのメリット

フレックスタイム制を利用することで、労働者は日々の都合に合わせて、プライベートと仕事の時間配分を自由に決めることができ、以下のような使い方が考えられます。

  • 共働きで子育てをする夫婦:保育園の送り迎えを日替わりで分担
  • 資格取得を目指して大学に通う人:毎週月・水・金は社会人大学に通うために早く退社するが、火・木は多めに勤務
  • 通勤ラッシュを避けたい人:満員の通勤電車が苦痛なので出勤時間を遅めに設定、早めに帰りたい日は通勤ラッシュより早めに出勤
  • 通院している人:病院に寄ってから出勤 など

フレックスタイム制の会社へのメリット

まず、会社にとって実務的なメリットと言えるのが労働時間が通算できるという点です。

原則の労働時間制度の場合、1日8時間を超えれば時間外労働となり割増賃金の支払いが必要ですし、1か月単位や1年単位の変形労働時間制度の場合でも設定した時間を超えれば割増賃金の支払いが必要になります。

しかし、フレックスタイム制の場合は、1か月など清算期間内の労働時間で割増賃金を計算するため、例えばある日に8時間を超えた時間外労働があったとしても、別の日に早く退社することで労働時間の通算が可能となります。

また、フレックスタイム制を利用することで、労働者は働く時間の裁量を持ち、自ら柔軟な働き方を選択できるため、モチベーションアップにつながり労働生産性の向上が期待できる点も大きなメリットです。

実際、以下の記事で詳しく紹介していますが、モチベーションアップに最も効果がある人事制度が「労働時間の短縮や働き方の柔軟化」です。

後述するようにフレックスタイム制を利用している会社はまだまだ少ない状況であるため、ワークライフバランスを促進する制度の整った会社というイメージを作ることができるのは大きなメリットと言えます。

関連:モチベーションアップにつながる人事制度と雇用管理(調査結果)

コアタイムとフレキシブルタイム

フレックスタイム制を理解・運用する上で重要なのが、コアタイムとフレキシブルタイムです。

  • コアタイム:労働者が1日のうちで必ず働かなければならない時間帯
  • フレキシブルタイム:労働者が自らの選択によって労働時間を決定できる時間帯

コアタイムとフレキシブルタイムの設定例は以下のとおりです。

コアタイムとフレキシブルタイムのいずれも必ず設定しなければならないものではありません。

しかし、フレックスタイム制の大きなメリットである柔軟な働き方を行う場合には、労使で話し合って上手に設定することが重要になります。

(1) コアタイム

コアタイムは、労働者が1日のうちで必ず働かなければならない時間帯です。

必ず設定しなければならないものではありませんが、設定する場合には、その時間帯の開始・終了時刻を労使協定で定める必要があります。

また、コアタイムの時間帯は労使協定で自由に定めることができるため、以下のような定め方も可能です。

  • コアタイムを設定する日と設定しない日
  • 日によって異なるコアタイムの時間帯

なお、コアタイムを設定せずに、実質的に出勤日も労働者が自由に決めることができるようにする完全フレックスタイム制とすることもできます。ただし、所定休日はあらかじめ定めておく必要があります。

(2) フレキシブルタイム

フレキシブルタイムは、労働者が自らの選択によって労働時間を決定できる時間帯です。

必ず設定しなければならないものではありませんが、設定する場合には、その時間帯の開始・終了時刻を労使協定で定める必要があります。

フレキシブルタイムの時間帯も、コアタイムと同様に、労使協定で自由に定めることができます。

(3) コアタイムとフレキシブルタイム設定時の注意点

以上のとおり、コアタイムとフレキシブルタイムは労使協定によって自由に定めることができます。

しかし、以下のような労働者が始業・終業時刻を自由に決定するという趣旨に反する場合には、フレックスタイム制とは言えなくなるため注意が必要です。

  • コアタイムの時間帯が1日の労働時間とほぼ同程度になるような場合
  • フレキシブルタイムの時間帯が極端に短い場合

フレックスタイム制の導入状況

最後に、変形労働時間制の導入状況を紹介しておきます。

平成30年就労条件総合調査(厚生労働省)によると、全業種の変形労働時間制の導入状況は、以下のとおりです。

  • 変形労働時間制を導入している:60.2%
  • 変形労働時間制を導入していない:39.8%
以下は本来であればグラフが掲載されます。
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なお、変形労働時間制を導入している企業60.2%の内訳は以下のとおりです(複数回答あり)。

  • 1か月単位の変形労働時間制:22.3%
  • 1年単位の変形労働時間制:35.3%
  • フレックスタイム制:5.6%

労働者・会社双方にメリットがあるフレックスタイム制の導入状況は、かなり低調であることがわかります。

次に、業種別の導入状況をまとめたのが以下のグラフです。

全体的には低調なフレックスタイム制の導入状況ですが、以下の業種では「1年単位の変形労働時間制」や「1か月単位の変形労働時間制」と同等、またはそれ以上に利用されていることがわかります。

  • 情報通信業
  • 学術研究、専門・技術サービス業

労働者の専門性が高く、働き方の柔軟性・裁量を与えることで力を発揮して欲しいという理由が大きいのでしょう。

まとめ

フレックスタイム制は、以下の記事で紹介しているようになぜか導入率が低いのですが、従業員だけでなく会社にも大きなメリットがあるため、実務的にはとてもオススメな制度です。

他の変形労働時間制と比べて導入手続きが大変という面はありますが、それ以上に、管理職の意識の問題から導入があまり進んでいないのではないかと考えています。

実際、当事務所の顧問先にフレックスタイム制のメリットをお伝えするとすぐに導入が決まることが多いですし、特に最近は営業職へのフレックスタイム制の導入支援を行うケースが増えています。

ので、「法定の労働時間なんて守れるわけがない・・・」と思考停止に陥らず、まずは正確に法規制を理解しましょう。

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