フレックスタイム制の導入要件:就業規則と労使協定の記載項目

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分類: 労働時間

フレックスタイム制を導入するための要件として、就業規則への規定、労使協定の締結がありますが、清算期間によっては追加の要件もあるため注意が必要です。

フレックスタイム制の導入要件

まず、フレックスタイム制を導入するためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。

  1. 就業規則への規定
  2. 労使協定の締結

ただし、清算期間が1か月を超える場合は上の2つに加えて、以下の要件、つまり合計3つの要件が必要となります。

  • 労使協定を所轄の労働基準監督署に届出

これに違反すると罰則(30万円以下の罰金)が科せられることがあります。

なお、届出の際は、労使協定届(様式第3号の3)に、労使協定の写しを添付して届出を行います。

1. 就業規則への規定

始業・終業の時刻と休憩時間については、就業規則に必ず記載しなければならない事項、いわゆる「絶対的必要記載事項」です。

そのため、フレックスタイム制を導入するためには、まず第1の要件として、就業規則への規定が必要です。

そして、規定の中では、以下の例のように、就業規則に始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ねる旨を定める必要があります

第○条 始業終業時刻、フレキシブル及びコアタイム
  1. フレックスタイム制が適用される従業員の始業及び終業の時刻については、従業員の自主的決定に委ねるものとする。ただし、始業時刻につき従業員の自主的決定に委ねる時間帯は、午前6時から午前10時まで、終業時刻につき従業員の自主的決定に委ねる時間帯は、午後3時から午後7時までの間とする。
  2. 午前10時から午後3時までの間(正午から午後1時までの休憩時間を除く。)については、所属長の承認のないかぎり、所定の労働に従事しなければならない。

関連:本当は怖い就業規則! よくある間違い・落とし穴を徹底解説!

2. 労使協定の締結

第2の要件として、フレックスタイム制を導入するためには、労使協定で以下の事項を定める必要があります。

  1. 対象となる労働者の範囲
  2. 清算期間
  3. 清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間)
  4. 標準となる1日の労働時間
  5. コアタイム(任意)
  6. フレキシブルタイム(任意)

なお、コアタイム、フレキシブルタイムの規定は任意です。といっても、少なくとも導入当初は定めた方が良いと思うので結局は必須の記述となります。

(1) 対象となる労働者の範囲

対象となる労働者の範囲は、会社のすべての労働者とする必要はなく、部署単位、グループ単位、各人単位など、様々な範囲で設定することが可能です

具体的には、「全従業員」「企画部職員」「Aさん、Bさん、・・・」といった設定です。

(2) 清算期間

清算期間とは、フレックスタイム制において労働者が労働すべき時間を定める期間のことです。

これまで上限は1か月とされていましたが、2019年4月の法改正の施行により上限が3か月となりました。

清算期間を定める際には、清算期間の長さ、清算期間の起算日を定める必要があります

なお、清算期間が1か月を超える場合でも、会社は1か月ごとに、実際に働いた労働時間を労働者に通知するなどの対応に努めることが求められています。

(3) 清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間)

清算期間における総労働時間とは、労働契約上、労働者が清算期間において労働すべき時間として定められた時間であり、いわゆる所定労働時間のことをいいます。

つまり、フレックスタイム制では、清算期間を単位として所定労働時間を定めることとなります

清算期間における総労働時間を定める際には、以下の計算式により算出される法定労働時間の総枠の範囲内としなければなりません。

$$清算期間における法定労働時間の総枠 = 40時間 \times \frac{清算期間の暦日数}{7}$$

例えば、月単位の清算期間とした場合の法定労働時間の総枠は、以下の法定労働時間の総枠の範囲内で総労働時間を定めなければなりません。

1か月単位の場合

清算期間の暦日数 法定労働時間の総枠
31日 177.1時間
30日 171.4時間
29日 165.7時間
28日 160時間

2か月単位の場合

清算期間の暦日数 法定労働時間の総枠
62日 354.2時間
61日 348.5時間
60日 342.8時間
59日 337.1時間

3か月単位の場合

清算期間の暦日数 法定労働時間の総枠
92日 525.7時間
91日 520.0時間
90日 514.2時間
89日 508.5時間

なお、労使協定では以下のような定め方も可能です。

  • 1か月160時間など各清算期間を通じて一律の時間を定める方法
  • 清算期間における所定労働日を定め、所定労働日1日当たり○時間といった定め方

(4) 標準となる1日の労働時間

標準となる1日の労働時間とは、年次有給休暇を取得した際に支払われる賃金の算定基礎となる労働時間の長さを定めるものです。

清算期間における総労働時間を、期間中の所定労働日数で割った時間を基準として定めます。

フレックスタイム制の対象労働者が年次有給休暇を1日取得した場合には、その日については、標準となる1日の労働時間を労働したものとして取り扱う必要があります

(5) コアタイム(任意)

コアタイムは、労働者が1日のうちで必ず働かなければならない時間帯です。

必ず設定しなければならないものではありませんが、設定する場合には、その時間帯の開始・終了時刻を労使協定で定める必要があります。

また、コアタイムの時間帯は労使協定で自由に定めることができるため、以下のような定め方も可能です。

  • コアタイムを設定する日と設定しない日
  • 日によって異なるコアタイムの時間帯

なお、コアタイムを設定せずに、実質的に出勤日も労働者が自由に決めることができるようにする完全フレックスタイム制とすることもできます。ただし、所定休日はあらかじめ定めておく必要があります。

(6) フレキシブルタイム(任意)

フレキシブルタイムは、労働者が自らの選択によって労働時間を決定できる時間帯です。

必ず設定しなければならないものではありませんが、設定する場合には、その時間帯の開始・終了時刻を労使協定で定める必要があります。

フレキシブルタイムの時間帯も、コアタイムと同様に、労使協定で自由に定めることができます。

参考:コアタイムとフレキシブルタイム設定時の注意点

コアタイムとフレキシブルタイムは労使協定によって自由に定めることができます。

しかし、以下のような労働者が始業・終業時刻を自由に決定するという趣旨に反する場合には、フレックスタイム制とは言えなくなるため注意が必要です。

  • コアタイムの時間帯が1日の労働時間とほぼ同程度になるような場合
  • フレキシブルタイムの時間帯が極端に短い場合

まとめ

フレックスタイム制は、以下の記事で紹介しているようになぜか導入率が低いのですが、従業員だけでなく会社にも大きなメリットがあるため、実務的にはとてもオススメな制度です。

他の変形労働時間制と比べて導入手続きが大変という面はありますが、それ以上に、管理職の意識の問題から導入があまり進んでいないのではないかと考えています。

実際、当事務所の顧問先にフレックスタイム制のメリットをお伝えするとすぐに導入が決まることが多いですし、特に最近は営業職へのフレックスタイム制の導入支援を行うケースが増えています。

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