フレックスタイム制の導入時に注意すべき3つの実務上のポイント

フレックスタイム制の導入は、労働者、会社の双方にメリットがありますが、導入に際して注意すべき実務上のポイントが3点あります。

  1. 労働時間の管理は必要
  2. 時間外労働(いわゆる残業)の取り扱いが通常と異なる
  3. 清算期間における総労働時間と実労働時間との過不足に応じた賃金の支払いが必要

なお、フレックスタイム制の基本的な内容、業種別の導入状況については以下の記事で解説しています。

関連:フレックスタイム制の基本とメリット・業種別の導入状況

1. 労働時間の管理は必要

フレックスタイム制は、始業・終業時刻の決定を労働者に委ねる制度です。だからと言って、会社が労働時間の管理をしなくてよいわけではありません。

会社は、フレックスタイム制を適用していても、実際の労働時間を把握し、適切な労働時間管理、賃金の清算を行う必要があります

労働時間の把握に関しては以下の記事で解説していますのでご参考ください。

関連:労働時間の把握に関するガイドラインの詳細解説

2. フレックスタイム制における時間外労働(いわゆる残業)の取り扱い

フレックスタイム制では、労働者が日々の労働時間を自ら決定することになるため、

  • 1日8時間、1週40時間という法定労働時間を超えて労働しても、それがそのまま時間外労働とはならない
  • 逆に、1日の標準の労働時間に達しない時間も欠勤となるわけではない

という点で、通常の労働時間制度と異なる取り扱いが必要です。

フレックスタイム制を導入した場合の時間外労働は、清算期間における実際の労働時間のうち、

  • 清算期間における法定労働時間の総枠を超えた時間数

となり、この法定労働時間の総枠は以下の計算式により算出されます。

$$清算期間における法定労働時間の総枠 = 40時間 \times \frac{清算期間の暦日数}{7}$$

例えば、1か月を清算期間とした場合、上の計算式から法定労働時間の総枠は以下のとおりであり、清算期間における総労働時間はこの範囲内とする必要があります。

清算期間の暦日数 1か月の法定労働時間の総枠
31日 177.1時間
30日 171.4時間
29日 165.7時間
28日 160時間

なお、当然のことですが、時間外労働を行わせるためには36協定の締結が必要です

また、特例措置対象事業場の場合の週の法定労働時間は44時間となるため、特例措置対象事業場の場合は、上の計算式の40時間を44時間にして計算してください。

3. フレックスタイム制における賃金の支払い

フレックスタイム制では、1日単位や1週間単位ではなく、1か月など設定した清算期間における総労働時間と実労働時間との過不足に応じて、賃金の支払いを行います。

具体的には、清算期間における総労働時間と実労働時間の合計を比べて、多い場合・少ない場合の2パターンがあります。

  1. 総労働時間 < 実労働時間
  2. 総労働時間 > 実労働時間

まず、清算期間において、総労働時間 < 実労働時間、この場合は、実際の労働時間が多いわけなので、超過した時間分の賃金を支払います。これはわかりやすいですね。

次に、清算期間において、総労働時間 > 実労働時間の合計、この場合は総労働時間よりも働いた時間が少ないということであり、会社には以下の2パターンの賃金清算がありえます。

  1. 不足時間分の賃金を控除して支払い
  2. 不足時間を繰り越して、次の清算期間の総労働時間に合算

実務的に考えると、1の控除は面倒なので2を選択したい、という希望も理解できるところです。ただし、2を選択した場合は以下の制約がある点に注意が必要です。

  • 加算後の時間(総労働時間 + 前の清算期間における不足時間)は法定労働時間の総枠の範囲内

まとめ

フレックスタイム制は、以下の記事で紹介しているようになぜか導入率が低いのですが、従業員だけでなく会社にも大きなメリットがあるため、実務的にはとてもオススメな制度です。

他の変形労働時間制と比べて導入手続きが大変という面はありますが、それ以上に、管理職の意識の問題から導入があまり進んでいないのではないかと考えています。

実際、当事務所の顧問先にフレックスタイム制のメリットをお伝えするとすぐに導入が決まることが多いですし、特に最近は営業職へのフレックスタイム制の導入支援を行うケースが増えています。

ので、「法定の労働時間なんて守れるわけがない・・・」と思考停止に陥らず、まずは正確に法規制を理解しましょう。

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