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限定正社員とは? 限定正社員制度の3つのパターンを詳細解説!

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最近話題になってきている限定正社員をご存知でしょうか?

当事務所では無期転換の5年ルールをきっかけに、「限定正社員」に関する多くのご相談を受けています。

限定正社員制度を導入している企業は51.9%という厚生労働省の調査もありますし、これから間違いなく限定正社員という雇用形態は増えていきます。

今回は、限定正社員の定義、3つの限定パターン、限定正社員のよくある誤解について、法律・行政の例示を参考に、詳しく解説します。

限定正社員とは?

限定正社員とは、文字どおり正社員と比較して限定される雇用契約となっている社員のことです。

日本企業の一般的な正社員は、転勤あり、職種・職務変更あり、残業ありのように、会社の指示には従わなければならない、いわゆる無限定の雇用契約になっています。

それに対して、限定正社員は、職種・職務の限定、勤務地の限定、勤務時間の限定など何らかの限定がある社員です

もちろん、限定内容はこの例に限らず、例えば入るシフトの限定など、正社員に比べて限定するものがあれば、それは限定正社員になります。

限定正社員に法律上の定義はない

まず、限定正社員の法律上の定義はありません

つまり、会社は、その実態に応じて、何を限定するのか決めなければなりません。何を限定しても自由です。

といっても、「すべて自由」は逆に難しく、だからこそ多くの会社が混乱しているわけですが、行政は3つのパターンを例示しています。

実務的に考えても、ほぼすべての会社がこの3つのパターンのどれか1つ、または複数を選ぶことになるでしょう。

正社員にも法律上の定義はない

限定正社員の定義、何を限定するのかという点については、会社で自由に決めてよいわけですが、その前に、そもそも正社員についてもきちんと定義しておく必要があります。

ただ、正社員にも法律上の定義はありません

法律上の定義があるのは、パートタイム・有期雇用労働法(正式名称は「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)による

  • 短時間労働者
  • 有期雇用労働者
  • 短時間・有期雇用労働者

だけであり、図示すると以下のようになります。

限定正社員制度を会社の人事制度としてきちんと構築するためには、法律的な違いをしっかりと理解しておくことが大前提です。

その上で、あなたの会社の実態を踏まえ、各雇用区分の労働条件を明確に定め、就業規則に定義していくことが重要になります。

以下の記事では、混同の多い契約社員やパートについて、法律的な詳しい解説を行っておりますので、ご参考ください。

関連:正社員とパートの違いを法律面・実態面から詳細解説

関連:契約社員と正社員の違い・無期転換5年ルール等の基礎知識の解説

あなたの会社の就業規則では、きちんと正社員、契約社員、パートの定義が定められていますか?

限定正社員制度を導入しようとしても、そもそも正社員の定義が定まっていないと、正社員と限定正社員の違いが明確にならない可能性があります。

この後で説明する3つの限定パターンを見ていくと、その理由がわかります。

限定正社員の3つのパターン

先程、「限定正社員にも、正社員にも、法律上の定義はない」という重要な点を強調し、会社によって正社員の定義は異なると説明しました。

例えば、全国展開する会社の場合、正社員は転勤がありえるでしょうが、会社が1つの事業場の場合、正社員といっても転勤はありません。この場合、「正社員には転勤があり、限定正社員には転勤がない」と定義できる会社もあれば、他の点で限定しなければならない会社もあります。

ただ、定義がないと解説が難しいので、この記事では、一般的にイメージされる正社員を定義し、その上で、厚生労働省が例示する限定区分を踏まえた限定正社員の定義について解説します。

正社員の定義

一般的にイメージされる正社員として以下のように定義します。

  • 職種・職務、勤務時間、勤務地について一切限定がなく、業務上最も基幹的な役割を担い、原則として定年までの雇用が前提とされている者

配置転換により職種や職務が変わることがある、転勤によって働く場所が変わる、忙しいときは残業や休日出勤もある、そして責任度の高い仕事を任され、基本的に長期間働くことが求められている、そんな人を正社員として定義しています。

限定正社員の定義

そんな正社員に対して、厚生労働省が例示する限定正社員の区分は以下の3つによって分類されます。

  1. 職種・職務限定正社員
  2. 勤務地限定正社員
  3. 勤務時間限定正社員

そして、これは重要な点ですが、限定正社員は、限定する部分以外については正社員と同じです。

つまり、先程の正社員の定義を用いると、限定正社員は以下のような定義になります。

  • 雇用契約上、限定部分についてはその範囲内で役割を担い、非限定部分については正社員と同等の基幹的な役割を担う者

「非限定部分については正社員と同等」となるため、当然、期間の定めのない無期契約ですし、先程の正社員の定義と同様に、原則として定年までの雇用が前提とされている者となります。

以下、この3つのパターンを順に解説していきますが、「こうしなさい」と法律などで求められているものではなく、例示であることを繰り返しお伝えしておきます。

職種・職務限定正社員(パターン1)

業務の構成は会社の業務特性によって違います。そのため、限定正社員の限定内容に関しても、業種や会社によって異なるものとなります。

厚生労働省の調査によると、職種限定正社員が多いのは、医療・福祉業、教育・学習支援業、運輸業・郵便業ですが、これらの業種は他業種に比べて、もともと職種・職務で分けやすいという理由があるからでしょう。

また、職種・職務で限定する際に、どの程度の範囲にするのかという点についても、以下のような調査結果があり、職種など職務範囲を広くとらえる方法が主流となっています。

  • 職種の範囲で区分け(事務職、営業職、生産職、研究開発職等):78.2%
  • 職種より狭い仕事の範囲で区分け(渉外担当事務、内勤営業、外勤営業、金融ディーラー、証券アナリスト、医師、保育士等):13.7%
  • その他の方法で区分け:4.7%
  • 区分けしていない:3.9%

勤務地限定正社員(パターン2)

勤務地の限定といっても範囲は会社によって様々であり、以下のような3つのタイプがありえます。

  1. 地域を限定
  2. 地区を限定
  3. 事業場を限定

地域を限定するタイプは、例えば「都道府県を異にし、かつ転居を伴う異動をしない」などブロック・エリアを限定するものです。

地区を限定するタイプは、例えば「採用時の居住地から通勤可能な事業場とする」など通勤圏内に限定するものです。

事業場を限定するタイプは、例えば「勤務場所を1事業場のみにし、事業場の変更を伴う異動は行わないものとする」など特定の事業場に固定するものです。

なお、厚生労働省の調査によると、勤務地限定正社員が多いのは、金融・保険業、医療・福祉業となっています。

また、補足しておくと、医療・福祉業は職種・職務限定正社員の多い業種という調査結果がありますが、限定区分は1つだけでなく複数の組み合わせもありえます。

勤務時間限定正社員(パターン3)

最後に、勤務時間限定については、以下の2つのパターンがありえます。

  1. 勤務時間の限定
  2. 勤務時間帯の限定

勤務時間の限定とは、育児・介護休業制度でも利用されている短時間正社員のように、所定労働時間を1日6時間にしたり、または時間外労働や休日労働を免除する限定方法です。

勤務時間帯の限定とは、シフト勤務制における勤務時間帯または勤務曜日を限定する方法です。

例えば、小売業の店舗のように、1日の営業時間が長時間かつ年中無休といった業種では、早番、中番、遅番などのシフト勤務制が導入されていますが、限定正社員は中番のみにするといった勤務時間帯を固定する方法がありえます。

厚生労働省の調査結果でも「小売業においては、勤務時間帯の限定が有効に機能するケースが多く見受けられる」とされています。

限定正社員の3つの限定パターンの導入状況

ここまで限定正社員の3つの限定パターンを紹介しましたが、実際にはどのパターンが導入されているのか、厚生労働省による研究会の報告書をもとに、導入状況の調査結果をご紹介します。

なお、以下の数字は、限定正社員制度を導入している企業を100%としたときのものです。

  • 職種限定:85.2%
  • 勤務地限定:37.1%
  • 勤務時間限定:14.2%

合計が100%にならないのは、複数の限定パターンを導入している会社があるためです。

こうして見ると、職種限定のパターンを導入している会社が多いのですが、すでに解説したように、業種や会社の規模によってどのパターンを導入するかは慎重に決めた方が良いでしょう。

参考:「多様な形態による正社員」に関する研究会報告書(厚生労働省)

限定正社員は解雇しやすい?

なぜか、「限定正社員は正社員と比較して解雇しやすい」という誤解による話を聞くことがあったので、その点についても解説しておきます。

ここまで説明したように「限定正社員とは、限定部分はありますが、非限定部分については正社員と同等」であり、契約期間の定めのない無期契約です。

そのため、解雇については、正社員と同様に労働契約法第16条に基づき判断されるため、「限定正社員は正社員と比較して解雇しやすい」というのは完全な間違いです。

もしかしたら、契約期間の定めのある有期契約労働者の「雇い止め」と「解雇」の混同かもしれませんが、誤解のないようにご注意ください。

労働契約法第16条(解雇)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

まとめ

無期転換の5年ルールへの対応だけであれば、有期契約から無期契約に変更すればよいだけです。その他の労働条件の変更がなければ、人件費のアップにはつながりません(なぜか人件費が増えるという誤解が割と多いのですが)。

では、なぜ、限定正社員制度の構築に関するご相談が多いのか、聞いてみると、多くの会社がこの機会に「優秀な人材の囲い込みをしておきたい」「社員からの不満・離職を減らしたい」ということです。

具体的な相談内容と対応法については顧問先限定でお知らせしますが、社員からの要望に配慮したい、多様な働き方を認めたいといったことになると、この限定正社員という雇用区分が重宝することがよくわかるようになります。

なお、無期転換ルールについては以下の記事で解説していますのでご参考ください。

関連:無期転換ルールの対応時期は全員が2018年ではありません!

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