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産前産後休業の条件・期間・賃金・手当などに関する基礎知識を解説します。
産前産後休業の条件と期間
一般的には、略して「産休」と言われることが多いですが、正式には「産前産後休業」です。
細かいですが「休業」であって「休暇」ではありません。
産前の休業
産前の休業の請求ができるのは以下の条件に該当する女性の従業員です。
- 6週間以内に出産する予定
- 双子や三つ子など多胎妊娠の場合、14週間以内に出産する予定
会社はこの条件に該当する従業員から産休の請求があった場合、拒否することはできません。
労働基準法により認められた権利であるため「うちの会社に産休制度はない」という言い訳もできませんし、違反した場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則があります。
ここでの注意点は、請求があった場合という部分です。従業員からの請求がなければ会社は勤務させても構いません。
産後の休業
産前の休業は請求によるものですが、産後の休業については請求がなくても会社は勤務させてはいけません。
労働基準法第65条第2項を簡単に書くと以下の規定となります。
- 産後8週間以内の女性を就業させてはダメ
- ただし、産後6週間を経過して請求があった場合で、医師が支障がないと認めた業務であればOK
- 労働基準法第65条(産前産後)
-
- 使用者は、6週間(多胎妊娠の場合にあっては14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
- 使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。
産前産後休業と育児休業の違い
たまに産休と育休を混同している人がいるので、簡単に触れておきます。
育休とは、育児・介護休業法に基づく「育児休業」のことです。これも「休暇」ではなく「休業」です。
育児休業は、1歳に満たない子を養育する男女の従業員が会社に申し出ることで、子が1歳になるまでの間で希望する期間、育児のために休業できる制度です。
産前産後休業と育児休業の関係を図示すると以下のとおりです。
産前産後休業と育児休業では、そもそも対象としている期間が違うのですが、その他にも育児休業の場合は、
- 男性従業員も取得が可能
- 育児休業期間は子が1歳になるまで(条件により2歳まで延長可)と産休よりも長い期間の休業が可能
という特徴があります。
産前産後休業中の賃金
よく誤解されている点が産休中の賃金です。
前述のとおり、請求があれば産前の休業、請求がなくても産後の休業を会社は付与しなければなりませんが、その間の賃金の支給有無について法律上は何も規定がありません。
つまり、産休中に支給するかどうかは会社の裁量次第であり、多くの中小企業では産休中の賃金はなしとしているようです。
ただし、産休中の有給・無給については後々のトラブルを防ぐために、就業規則にきちんと規定しておくことが大事です。
産前産後休業中の手当
多くの中小企業では産休中の賃金はないと書きましたが、その代わりに健康保険から「出産手当金」が支給されます。
出産手当金の条件
出産手当金を受けるための条件は以下のとおりです。
- 被保険者が出産した(する)こと
- 妊娠4か月(85日)以上の出産であること(早産・死産(流産)・人工妊娠中絶を含む)
- 出産のため仕事を休み、給与の支払いがない、またはその支払額が出産手当金より少ないこと
出産手当金の金額
そして出産手当金の1日当たりの給付金額は以下の計算によります。
- 支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額 / 30日 × 2/3
簡単に言えば、給料の 2/3 程度ということです。
なお、上の計算式は平成28年4月からの改正点です。
平成28年3月までは「支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額」ではなく「休んだ日の標準報酬月額」となっていましたので、古い情報のままになっている方はご注意ください。
出産手当金の期間
また、出産手当金の支給期間は以下のとおりです。
- 出産日(出産予定日より遅れた場合は出産予定日)以前42日(多胎妊娠は98日)から出産後56日までの期間
産前産後休業中の社会保険料
産休中は、社会保険料(健康保険・厚生年金保険)の支払いが、会社分・従業員ともに免除されます。
「産前産後休業保険料免除制度」という制度ですが、会社が従業員から産休の請求を受けた場合、会社は「産前産後休業取得者申出書」を日本年金機構へ提出することで社会保険料が免除されます。
また、産前産後休業保険料免除制度は、産休中に有給・無給であるか関係なく申し出ることができます。
保険料が免除される期間は、産前産後休業開始月から終了予定日の翌日の月の前月(産前産後休業終了日が月の末日の場合は産前産後休業終了月)までです。
免除期間については、保険料を納めた期間として扱われ、将来の年金額への影響はありません。
まとめ
当事務所で就業規則の説明会を行う中で、従業員から最も多く質問を受けるのが休暇・休業制度です。
従業員の関心が高い内容ですし、法律に沿った運用をしておかなければ違反になるため、就業規則をきちんと整備した上で適切な運用をしておきましょう。
- 毎年のように改正される労働法令への対応に頭を悩ませている
- 総務や経理などの他の業務を兼務しているので、人事労務業務だけに時間を割けない
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