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人事労務の相談の中でも、休憩に関するトラブルは多く、会社側・従業員の双方から多くの相談をいただきます。労働基準法に基づく休憩時間の与え方に関する3つの原則と注意点、違反した場合の罰則について解説します。
休憩時間とは
まず、労働基準法では、労働時間が6時間を超える場合に休憩時間を与えなければならないと定められています。
そして休憩時間とは、労働者の権利として労働から離れることを保障されている時間です(昭22.9.13発基第17号)。
休憩の合間の電話当番や来客対応といった対応は、労働から離れることを保障されていないため休憩時間に該当せず待機時間とみなされ、労働時間に該当するため要注意です。
労働基準法による休憩時間の長さ:6時間を超えたら45分、8時間を超えたら60分
休憩時間は、労働基準法に基づき、以下のとおり、労働時間の長さによって最低限の時間が決められています。
- 6時間以内の労働時間:休憩時間の付与の義務なし
- 6時間を超えて8時間以内の労働時間:最低45分の休憩時間
- 8時間を超える労働時間:最低60分の休憩時間
労働基準法では「労働時間が6時間を超える場合においては最低45分、8時間を超える場合においては最低1時間の休憩時間を与えなければならない」とされています。
「以上」ではなく「超える」となっている部分は要注意です。労働基準法上の最低限の休憩時間の長さを示すと以下のようになります。
- 6時間ちょうどの労働時間:休憩時間なし(45分ではない)
- 8時間ちょうどの労働時間:45分(60分ではない)
また、労働基準法に従えば「8時間を超える時間は、何時間であっても休憩時間は60分で構わない」となっています。
もちろん、労働基準法はあくまで最低限の基準を定めたものですから、会社として休憩時間を増やすのは構いません。実際、シフト制で夜勤がある業種では、15時間勤務で休憩時間90分など就業規則に規定して運用しているところもあります。
休憩時間の与え方に関する3つの原則
労働基準法による休憩時間の与え方には以下の3つの原則があります。
- 休憩時間は労働時間の途中で付与しなければならない(休憩時間の途中付与)
- 休憩時間は一斉に付与しなければならない(休憩時間の一斉付与)
- 休憩時間は自由に利用させなければならない(休憩時間の自由利用)
ただし、原則があるところには必ず例外あり。順に、原則と例外を解説します。
1. 休憩時間は労働時間の途中で付与しなければならない
1つ目の原則が、休憩時間の途中付与です。
始業直後、終業直前に休憩時間を付与することは、労働時間の途中に与えたことにならないため、違法になります。
- 労働基準法第34条第1項
- 使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
また、休憩時間の与え方として、45分や60分を一括して付与するだけでなく、分割して付与することも可能です。ただし、休憩時間の分割付与の方法によって違法となる場合があるため要注意です。
2. 休憩時間は一斉に付与しなければならない
2つ目の原則が、休憩時間の一斉付与です。
- 労働基準法第34条第2項
- 休憩時間は、一斉に与えなければならない。
ただし、一斉付与の原則については2つの例外があります。
1つ目が、業種による例外です。以下の業種については休憩時間の一斉付与が困難であるため、一斉付与の例外として扱うことが法律で認められています。
- 運送の事業
- 販売、理容の事業
- 金融、保険、広告の事業
- 映画、演劇、興行の事業
- 郵便、信書便、電気通信の事業
- 保健衛生の事業
- 旅館、飲食店、娯楽場の事業
- 官公署の事業
一斉付与の例外の2つ目が、労使協定による方法です。労使協定を締結した場合は、休憩を一斉に付与しなくてもよいことになっています。なお、労使協定の労働基準監督署への届出義務はありません。
業務の実態から、休憩の一斉付与が業務の円滑な運営に支障をきたすと労働者側の代表も納得すればOKということです。
実際、フレックスタイム制を採用している場合に休憩時間を一斉に付与することは困難です。
ただし、フレックスタイム制にしているから自動的に一斉休憩の付与の例外が適用されるわけではなく、労使協定が必要である点には注意が必要です。
3. 休憩時間は自由に利用させなければならない
3つ目の原則が、休憩時間の自由利用です。
- 労働基準法第34条第3項
- 使用者は、休憩時間を自由に利用させなければならない。
休憩時間の自由利用はよくトラブルになります。休憩時間とは、労働者の権利として労働から離れることを保障されている時間です。
そのため、休憩時間中に仕事の指示を行うのは論外ですし、ちょっとした仕事だからといって「休憩の間に処理しておいてくれ」というのもダメです。
関連:電話当番、来客対応、仮眠時間が休憩時間に該当しない理由
また、休憩時間の自由利用といっても、会社は外出許可制のような一定の制約を課すことはできます。
ただし、自由利用を阻害しない範囲での外出許可制という点で、運用には細かな注意点があるため、以下の記事で解説しています。
残業発生時の休憩時間の付与に関する注意点
以下のように休憩時間を労働基準法の最低基準どおりに運用している場合は、実務上の注意点があります。
- 6時間の労働時間:休憩時間なし
- 8時間の労働時間:休憩時間45分
残業によって、労働時間が6時間を超えた場合は45分の休憩時間が必要、8時間を超えた場合は60分の休憩時間が必要になります。
実務的な運用方法については以下の記事で解説しています。
関連:残業が発生した際の休憩時間の付与に関する実務上の注意点
休憩時間の付与に違反した場合の罰則
労働基準法による休憩時間の付与は義務であり、違反した場合は、罰則として6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。
具体的な違反内容は以下のとおりです。
- 休憩時間を与えなかった場合
- 休憩時間が短かった場合
- 休憩時間を一斉に与えなかった場合
- 休憩時間を自由に利用させなかった場合
- 毎年のように改正される労働法令への対応に頭を悩ませている
- 総務や経理などの他の業務を兼務しているので、人事労務業務だけに時間を割けない
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