管理職として部下に絶対に言ってはいけない言葉とは?

私は、前職で、大きな組織の下っ端社員と中間管理職を経験し、独立してからは経営者として、組織のすべての階層を経験していますが、それぞれの立場になってみると見える景色が違うとよく感じます。

マイケル・E. ガーバーの名著「はじめの一歩を踏み出そう―成功する人たちの起業術」によると、経営を成功させるためには、起業家、管理職、職人という3つの属性が必要不可欠であると言います。

組織であれば、1つの属性に優秀な人を採用すればよく、一人で事業を行うのであればこの3つの属性を意識し、バランス良く、さも人格を変えるかのように変身する必要があるそうです。

つまり、起業家、管理職、職人に限らず、求められている役割というのはそれぞれ違うということです。

逆にいえば、異なる役割がないのであれば、そもそも、その役割は不要ということです。そして、そのバランスを逸したとき、組織はおかしくなっていきます。

私は、人事労務管理を支援する職業柄、そして自分自身の経験に照らしても、経営者と管理職が発すべき言葉は、明確に分けておく必要があると考えています。

今回は、そのような管理職がついつい言ってしまいがちな、しかし絶対に部下に言ってはいけない「言葉」について書きます。

スポンサーリンク

効率的に仕事をしようと言ってはいけない!

あなたは、管理職として、部下に対して「効率的に仕事をしよう」と言っていませんか?

この言葉は、ある意味、当たり前のことです。

「新しいことにチャレンジしていこう!」と同じくらいよく聞くフレーズです。

なぜ管理職は「効率的に仕事をしよう」と言ってはいけないのでしょうか?

それは、私はこの言葉は経営者の役割として発せられるべき言葉だと思っているからです。

経営者と管理職の言葉の違い

「新しいことにチャレンジしていこう!」、「効率的に仕事をしよう」、この2つの言葉は間違っていません。

むしろ、管理職として当然のことを言っているように聞こえますし、これを聞いた経営者は「そのとおりだ」と思うでしょう。

だからこそ、私は管理職の罪が重いと考えています。

新規事業、新製品、新しいことを率先して行い、組織として成長を続けていかなければ、組織は停滞してしまいます。

そのため、経営者は、どんどん社員にハッパをかけていかなければなりません。

「何も言わなくてもみんなわかってくれる」というのは、もはや今の時代、間違いです

海外に進出した企業はすべてこの問題にぶち当たります。

日本でずっと働いていると、ついつい「何も言わなくてもみんなわかってくれる」という状態に慣れてしまい、海外に進出したときに、文化や習慣の違いから痛感するわけです。

言わなきゃ誰もやってくれないんだ・・・と。それが現実です。

特に、新しいことにはかなりのエネルギーが必要なので、経営者はそのエネルギーを注入し続けるために、先程の2つのような、言わば「かけ声」をかけ続ける必要があります。

もちろん新規事業のアイデアなども積極的に経営者は出さなければなりません。社員がアイデアを出してくれないと嘆く経営者もいますが、それは本来の役割を間違えています。

管理職の役割は具体性

管理職の役割は違います。かけ声を部下にかけても気休めにもなりません。

管理職の役割は、経営者の意向を受けて業務を具体的に進めていくことです。もちろん、管理職は、昨今増えているメンタルヘルスの問題もあるので、部下の心身の管理も行わなければなりません。

組織というのは、放置しておくと、雑務・ルーティンが際限なく増えていきます。

「そもそもこの仕事にはなんの意味があったっけ?」というのはよくあります。

そういった本来の目的がわからなくなったような業務の取捨選択というのも管理職の仕事です。だからこそ、管理職が「効率的に仕事をしよう」なんてかけ声をかけていてはダメなわけです。

当初は意味があったが、今となっては不要となっている業務がありませんか?

部下が行っている業務を把握し、システムなどを用いた仕組み化ができないか、外注できないか、担当者を増やすか、そもそもその業務自体をなくすことはできないか、そのような業務の見直しや改善をするのは管理職の役割です。

自律的に働く、部下に業務の取捨選択を任す、といっては聞こえがよくなりますが、それは単なる「無管理」です。

重要性の低い業務の被害者となるのは平社員です。そのような平社員に向かって、「効率的に仕事をしよう」と脳天気な言葉を言ってはいけません。

できる管理職とできない管理職の大きな違いは、部下を動かせるかどうかです。仮に、プレイヤーとして能力が低い人でも、部下を動かせるのであれば、それは優秀な管理職です。

管理職が言うべき言葉は「効率的に仕事をしよう!」ではなく、

みんなが効率的に仕事をするのに、私が管理職としてできることは何だろうか?

という質問です。顧客に直接向き合っているのは現場の社員です。顧客の様々な要望に対処する現場の社員が、会社の内部的な煩雑な手続きに苦労しているのであればそれを改善するのが管理職の役割です。

部下を動かす管理職になるには?
ビジネスコンサルタントであるブライアン・トレーシーの著書は何度も読み返しています。今回は普通の管理職と「人を動かす」管理職の違いについて紹介します。

管理職の権限と重い責任

また、そもそも管理職とは何なのか、部下をもつことの意味、これらについて法的にどのような整理がされているかを理解しておく必要があります。

中間管理職という名称があるとおり、経営者と労働者の間に入って、どことなく中途半端に感じる人もいるようですが、それは大きな間違いです。

実は、管理職には、法的に権限と重い責任が課されています。

何か問題が起こったらそれは経営者や人事の問題と思っている管理職が多くいますが、それは大きな間違いです。

以下の記事で詳しく解説していますが、管理職というのは、法的には、企業経営権の分担行為者としての「利益代表者」、そして労働契約上の労働力の使用処分権限の分担行為者としての「使用者」と位置づけられています。

管理職の法的な責任・労基法で使用者とみなされるので要注意
労働基準法における使用者を正しく理解していますか? 管理職の方が経営者よりも責任が追及されやすい理由、そして実際に責任が追求されている実例をご紹介します。

法的に、利益代表者であり、使用者とみなされるということは、法的な処罰の対象になるということです。

直属の部下が変なことをしても、それは経営者や人事の責任だと勘違いしている管理職の方は意外と多いのですが、まず責任を取らされるのは直属の管理職ですよ。。。

なお、ほとんどの管理職が知らないのが、労働基準法における休憩の考え方です。以下の記事でよくあるご質問を踏まえて解説していますが、まさか休憩時間に電話当番を指示していませんよね??? 違法ですよ。

休憩時間の原則と注意点・労働基準法による規制内容を詳細解説!
休憩時間に関するご相談は多くありますが、大半の場合、間違った理解をしています。今回は、休憩時間の基本・長さ、3つの原則、そして最後に実務上の注意点について解説します。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回の記事は、自分自身の経験を含め、これまでご相談をいただいた事案の中で実際にあった話です。

この言葉をつい言ってしまう管理職は、ある意味、まじめな人です。

部下に自主性を持たせたいと思う管理職は、マイクロマネジメントを避けたいと思っています。また、これまで行っていた業務をやめてしまうということは、それまで行ってきた業務や担当者の存在意義自体を否定することにもなりかねません。

だから躊躇してしまうわけです。

ただ、組織運営でついついありがちなのが、誰もが思っている「この業務に何の意味があるの?」という疑問を、勇気を持って声を出して言う人がいないということです。

そして、ついついその役割は自分ではないと他人事のように考えてしまうわけです。

それでは管理職が本来の役割をこなすためにどうすべきか?

ただでさえ忙しい管理職が1人ですべてを行うことは困難であり、だからこそ社内の人材育成が主要業務である人事部門と緊密に連携することが必要になります。

たまに「うちの人事部門は全然現場を助けてくれない」と嘆かれることがありますが、以下の記事で解説しているとおり、人事部門の顧客は現場です。

現場から不評な人事なのであれば、経営者にお願いして、まずは人事部門の育成から始めるべきです。

ちなみに、当事務所のメイン業務は人事担当者の育成支援です←宣伝(^0^)

人事担当に求められる顧客視点とは?
人事担当に必要不可欠な資質として忘れがちなのが顧客視点です。今回は人事担当にとっての顧客とは誰なのか、求められる顧客視点について解説します。

なお、モチベーション管理には不可欠な報酬ですが、非金銭的な報酬を有効に活用していますか? 報酬は人事の許可が必要と思っていませんか?

実は、非金銭的な報酬であれば、現場の管理職でも付与することが可能です。以下の記事で詳しく解説していますので、ご参考ください。

社員のモチベーションを上げる科学的理論と活用法・非金銭的な報酬を活用せよ!
社員のモチベーションを上げる方法というと賞与などの金銭的な報酬を考えがちですが、実は非金銭的報酬の方が実効性があります。モチベーションの科学的理論、そして海外で活用されている方法をご紹介します。

また、今回は管理職の発言という観点から書きましたが、以下の記事では態度の面としてダメな上司の特徴を紹介しています。こんな上司になっていないか自らチェックしておくことも重要ですよ。

ダメな上司の3つの特徴と人事のチェックポイント
企業の人事担当者から実際に相談を受けた内容を踏まえ、ダメな上司の3つの特徴、そして人事担当としてチェックしておきたいポイントを紹介します。

あの7つの習慣よりも全世界で売れた以下の本は、経営者必読です。

また、人事労務に関する弁護士として間違いなく第一人者の安西先生の本は管理職必読の書です。

労働法のみならず会社法まで網羅さているこの本を読んでいない経営者や管理職のいる会社に私は入りたくないですねw

管理職として部下に絶対に言ってはいけない言葉とは?
本記事以外の人事労務情報も満載の
Facebookページを、
いいねしてチェックしよう!
スポンサーリンク

フォローする

自社・他社の評判・分析を正しく把握するために

自社・他社の評判・分析を正しく把握するために

うちの会社はどんな評判なのだろうか、退職者が最近増えているけどもしかして同業他社に転職しているのだろうか、最近はそんな悩みを聞くことが増えています。

求人情報などの表の情報だけでなく、クチコミを調べるのは、今や求職者も会社の人事担当者も基本です。

求職者であれば入社予定の企業のクチコミ情報を集めますし、人事担当者にとっては自社・同業他社がどのようなことを言われているのかを分析することが重要です。

最近はこのような企業の内情を知るためのクチコミサービスは増えていますが、その中でも登録企業数は43万社以上、そして年収情報まで掲載されている国内最大級のキャリコネ転職サービス では企業の内部情報を無料で見ることができます。

今すぐ転職したいという人でなくても、現在の仕事で本当に良いのか、他社の状況を知っておくことは有用ですし、人事担当者としても自社の状況改善・他社の動向把握のためにもこうしたサービスを有効に活用しましょう。

キャリコネ転職サービス

人事の秘訣を知りたくありませんか?

人事の秘訣を知りたくありませんか?

毎月1回、人事に悩む経営者や人事担当者向けに、公開型のブログでは書けない本音を交えた人事の秘訣をお伝えしています。

また、人事担当者が対応すべき時期的なトピック、購読者限定のお得なサービスのご案内などを配信していますので、ぜひお気軽にご登録ください。

注意
*は必須項目を示しています。なお、氏名の欄には本名を漢字で入れてください。「たこ」など明らかにふざけた名前を登録している方がいますが、見つけ次第削除しています。


この記事を書いた人


安部敏志

あべ社労士事務所代表・社会保険労務士

中小企業の人事労務担当者の育成を中心に業務展開。専門記事の執筆やセミナー・社内研修の講師業も実施。

あべ社労士事務所の業務案内


定額・相談回数無制限のメール相談を利用して、いつでも気軽に専門家に相談できる体制を構築しませんか?

先月の1日・1社当たりの平均相談・回答数は8回(往復で1回と数えて)、名ばかりの顧問業はやっていません。

定額メール相談サービス


単発で相談したいという方に対しては、個別コンサルも行っています。

個別コンサルティング

error: Content is protected !!