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労働基準法を軽視 = 人権侵害の企業は海外では常識

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労働基準法の話をすると、必ず「昔の法律だから実態にあっていない」、「労働基準法なんて守っていたら経営はできない」と言う経営者や管理職がいます。

まあ、飲み屋での戯言なら構いませんが、シラフでそんな発言をしていたら、産業革命以降に何が起こったのか知らない無知な人間、経営者・管理職失格です。

労働基準法を守らないと経営はできない

昨年は、大手エステサロンの社長が、労働組合を結成し待遇改善を求めた従業員に対し、

「労働基準法にぴったりそぐったら絶対成り立たない」「つぶれるよ、うち。それで、みんな困らない? この状況でこれだけ働けているのに、会社つぶしてもいいの?」

たかの友梨社長「圧迫発言」を謝罪 「残業代未払い」の告発めぐり(リリース全文)」より

という発言をしたことが、大々的に報道されました。音声まで公開されてしまいましたが、今はそんな時代ということをまず認識すべきです。

発言の中では、業界の厳しさなどの持論を用いて、法律なんて守れないという理由を語っていたわけですが、結局は社会問題になり、謝罪をし、最後は労働協約まで結ぶ羽目になったわけで、結局、残ったのは不名誉な話題だけです。

なお、労働協約については以下で解説しています。

関連:労働基準法・労働協約・就業規則・労働契約の関係

準備段階ですでに勝敗は決まっている?

労働基準法をはじめとする労働法関連について軽視する発言をする経営者や管理職の方々によくお会いします。

  • 他の会社も守っていないんだし・・・
  • 今の時代に合っていない・・・
  • 従業員からの苦情もないし・・・

大体はこんなところでしょう。「赤信号みんなで渡れば怖くない」ということでしょうか?

「従業員からの苦情もない」というのも、実は、苦情が出てきた時点で、リスクマネジメントという観点から見ると、もう終わりなんですけどね。

経営者なら当然のことですが、戦うときはまず相手に動きを悟られないように準備し、いざ戦い始めるときは勝利を確信した状態で攻めたいと思うはずです。

労務トラブルでも同じです。

いや、むしろもっと厳しいものになるでしょう。上司や経営者に苦情を言えば、下手をするとクビになるという大きなリスクを抱えることになります。

つまり、苦情を言い始めた時点で、既に労働組合や弁護士、もしかしたらマスコミまで含めて、サポート体制が万全になっていると考えた方が良いです。

で、苦情を言われた経営者側は、既に相手が臨戦態勢に入っているにも関わらず、「話せばわかる」と悠長なことを言ってたりするわけです。

労働法は人権問題に直結する

労働基準法というのは強行法規です。

これには歴史的な背景があるのですが、重要な点は、日本国憲法が労働者の権利を「人権」として保障しており、その労働者の人権を「法律」として定めたものが「労働基準法」であるということです。

日本国憲法第25条
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
日本国憲法第27条
  1. すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
  2. 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。

この日本国憲法の第25条・第27条第2項を受け、労働基準法は、第1条で労働条件の原則として労働条件の最低基準を定めています。

労働基準法第1条(労働条件の原則)
  1. 労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。
  2. この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。

そして、この労働基準法の最も厳しい罰則((1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金))が「強制労働を行わせたとき」ということからも明らかなように、この法律は働く人の権利、すなわち人権を守る法律ということです。

つまり、「労働基準法を守っていたら、経営なんてできないよ」なんて発言をしてしまう脇の甘い経営者は、経営をする資格がないどころか、働く人の人権を侵害し、憲法を軽視する経営者と見なされてしまいます。

「人権侵害なんて大げさだな」と思った方は、それはあなたが日本の状況しか知らないからです。

働く人の権利を軽視してしまう企業が人権侵害といって叩かれるのは、国際的には当然の考え方です。

この点については、以下の記事で詳しく紹介していますのでご参考ください。

関連:日本企業と海外企業の労務コンプライアンスの意識の違い

なお、労働に関する国際機関であるILOは様々な国際労働基準を策定していますが、その中で人権というのは一貫したテーマです。詳しくは以下をご参考に。

参考:人権と国際労働基準(ILO駐日事務所)

日本の労働法は厳しいどころか甘い:2017/5/24追記

日本の労働法が厳しいと言う人はいますが、ブラジルで年間200万件もの労働裁判が起きる理由によると、私自身、唯一厳しいかもしれないと思っていた解雇規制についても、OECDの調査によると、厳しいどころか甘い方の上位に入っています。

昨今の海外進出の拡大に伴い、日本企業は数多くのリスクにさらされています。その中でも不可避のリスクが「労務リスク」です。

労務リスクは、原因・要因が多様であり、リスクが顕在化した場合の影響も甚大であるという特徴があります。そのため、日本企業の海外進出において、極めて重要なリスクマネジメントの分野となります。

日本的なゆるい労務管理を海外に持ち込み、トラブルになる事例は海外で働いていたときによく聞きましたが、グローバル化を目指すのなら「本当のグローバルスタンダート」を理解しておく必要がありそうです。

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