社会保険で報酬の対象外とされている大入袋の定義や解釈について解説します。
まず、大入袋(おおいりぶくろ)とは、Wikipediaによると、発祥には諸説あるようですが、1896年(明治29年)に初代市川左團次が明治座で行なった興業で配ったものが始まりとされているようです。
大相撲・寄席・歌舞伎(演劇)などで客が多く入った際に祝儀として配られるものです。
以前は、現金で「御縁」が多くあるようにということから五円玉1枚などが見られたが、現在では50円玉あるいは100円玉を入れるのが一般的とのこと。
社会保険では、通貨による支給の中で、以下は「報酬とならないもの」とされていますが、会社からの恩恵的、臨時的、実費弁償的なものは報酬には該当しない というのが基本的な考え方になります。
- 会社から恩恵的に支給されるもの(例:病気等の見舞金や災害見舞金)
- 臨時に受けるもの(例:大入袋)
- 実費弁償的なもの(例:出張旅費)
- 保険給付として受けるもの(例:健康保険の傷病手当金)
- 年3回以下の賞与
- 退職金
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社会保険における大入袋の定義と解釈
それでは具体的に社会保険における大入袋の定義と解釈に入っていきますが、日本年金機構のウェブサイトに疑義照会回答として以下の事例が掲載されています。
質問:支払金額1万円は大入袋に該当し報酬の対象外となるか?
現場の年金事務所からの疑義照会は、以下のように大入袋として支給しているものは「報酬に含まない」と取り扱ってよいか、ということです。
- 支払項目は大入袋
- 支払金額1万円
- 給与支払にかかる社内規定なし
- 賃金台帳記載あり
回答:臨時的であれば金額の大小に関係なく報酬としない
結論から先に書くと、疑義照会には以下のように回答されています。
- 大入袋の支給原因、条件等が不明なため、臨時的であるかの判断ができず、報酬かどうかの一律な判断はできません。
- 仮に臨時的であれば、金額の大小に関係なく、報酬としない取扱いが妥当となります。
この回答を踏まえると、臨時的なものであれば1万円でも報酬にはならないことになります。
臨時的かどうかの判断基準
ただし、回答には、臨時的かどうかの判断として、以下の補足がなされているため注意が必要です。
臨時的かどうかの判断は、支給事由の発生、原因が不確定なものであり、極めて狭義に解するものとすることとされていますので、例年支給されていないか、支払われる時期が決まっていないかで判断してください。
恩恵的かどうかの判断基準
次に臨時的でない場合、恩恵的かどうかの判断が必要になります。
会社からの見舞金、結婚祝金、慶弔費は恩恵的な支給として報酬や賞与に該当しないものですが、この事例の大入袋が恩恵的と言えるかどうか、その点について回答があります。
恩恵的かどうかの判断は、社会通念上での判断となりますが、ご照会の事例は(大入袋に関しては)
- 賃金台帳に記載があること
- 金額が1万円であること
これに加え、支給事由が業績達成や営業成績に連動しているものであれば、本来の大入袋のもつ性質とは異にし、恩恵的ではないと判断するのが妥当 となります。
社会保険における大入袋の原則
結論から書いたので順番が前後しましたが、この疑義照会への回答の冒頭には以下の記述があります。
Wikipediaの大入袋に関する解説と同じです。
報酬としない例として「大入袋」の記載がありますが、これは大入袋のもつ本来の性質
- 発生が不定期であること
- 中身が高額でなく、縁起物なので極めて恩恵的要素が強いこと
からすると生計にあてられる実質的収入とは言い難く、報酬及び賞与としないとしています。
- 毎年のように改正される労働法令への対応に頭を悩ませている
- 総務や経理などの他の業務を兼務しているので、人事労務業務だけに時間を割けない
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