求人詐欺への対策・TBCの労働協約は素晴らしい! これが本当の「攻めの人事」なのでは

こんにちは。忙しくなるとなぜか節々が痛くなる福岡の社労士・安部敏志です。

最近よく聞く「攻めの人事」って何なのでしょうか?

調べてみると、「攻めの人事」を解説するページでは、多くの場合、人材ポートフォリオやタレントマネジメントといったカタカナ、まあコンサル用語が並んでいきます。

簡単に言えば、会社の中にどんな適性のある人がいるのか、どのように配置するのがベストか、どのように成長を支援していくか、こういうことです。

「そんなの当たり前、そもそもそれが人事の仕事だろ」なんて言ってはいけませんよ。 当たり前のことをかっこよく言うのがコンサルの仕事なんですから。。。

まあ、最近巷でよく使われる「攻めの人事」については懐疑的なわけですが、「これこそ本当に攻めてる人事だ!」と感じたニュースを取り上げます。

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就業規則よりも強い労働協約!

以下のニュースを見て、度肝を抜かれました。

8月26日(金)、エステティック大手、TBCグループ株式会社とエステ・ユニオン(総合サポートユニオンエステ支部)が、「ホワイト求人労働協約」を締結した。

労働協約とは、労働組合と企業の間の取り決めであり、通常は賃上げなど、すでに働いている社員の労働条件について話し合われている。

新人を採用する際の「求人詐欺」を是正する労働協約は日本初であり、「就活安心労働協約」とも銘打っている。

背後にはエステ業界において求人情報と入社後の労働条件が異なるというトラブル「求人詐欺」問題が多数発生している事情がある。同社は業界のリーディングカンパニーであり、率先して手を打った形だ。

エステティック大手TBCが、「ホワイト求人労働協約」を締結

まさしく、これこそ「攻めの人事」ですよ。

以前、就業規則で攻めてる会社を紹介しましたが、こちらはなんと労働協約です。

攻めっぷりがすごいです。就業規則よりも効力が強く、変更が実質的に不可能な労働協約ですから。

なお、労働協約って何? という方は以下の記事をご参考下さい。

人を採用し、経営を行う上で人事労務管理というのは必須です。今回は人事労務管理を行う上で上位概念となる労働基準法・労働協約について解説します。

簡単に違いを解説すると、就業規則は労働組合の意見を「聴く」、労働協約は労働組合と「合意する」ということです。

当然、労働協約の方が強い効力を有しますし、その実効性も担保されるわけです。合意ですから。

求人詐欺の多い業界

求人詐欺という言葉をご存知でしょうか?

求人詐欺とは、求人票に好待遇などを掲げて求職者を集め、実際は求人票と全く異なる雇用契約を結ぶような企業のことです。

ブラック企業などの書籍で有名な今野さんの「求人詐欺」によると、求人詐欺の典型的な4つの手口は以下のとおり。

  1. 給与の水増し:固定残業代制を隠し、給与を高く見せる
  2. 正社員採用偽装:契約する段階で「半年は契約社員」などと提示
  3. 幹部登用あり:入社後すぐ管理職扱いにし、残業代不払い
  4. 社長になれる:分社化した会社の社長にし、稼げなければ即クビ

平成27年度のハローワークの発表によると、求人票の記載内容に係る求職者からの申出・苦情等件数は10,937件とものすごい数です。

ネット上では、この数字も氷山の一角であり、ほとんどの求人票が詐欺同然ではないかという意見もあります。

実際、前述の記事の中でも、

朝日新聞の報道によれば、「リクナビ」に掲載されている固定残業代込の月給表示の、実に3分の2に不正が認められたという。

とあります。この求人詐欺の巧妙なところは、雇用契約を交わすタイミングではすでに求職者が後戻りできないということです。

新卒でも中途採用でも、内定をもらえば通常は他の会社の面接で良いところまで行っていても辞退していますし、多くの企業は「内定を出すから辞退をしてくれ」と言います。困ったことに目の前で電話させ辞退を強要する起業もありますが。

詐欺会社の雇用契約書を見て、求人票と内容が違うから断りたいと思っても、他に行くところがなくなっているわけです。

以下の記事で解説しているとおり、会社側の内定取消というのはほぼ不可能なのですが、求職者側は可能です。

採用内定に関する法的性質・トラブルの多い内定取消について裁判例を用いて解説します。

そして、「求人詐欺」の中では、求人詐欺の多い業界として、以下のように例示しています。

  • 介護業界
  • 保育業界
  • コンビニ
  • 飲食業界
  • IT業界
  • エステ業界

これらの業界に共通する特徴は離職率の高さ、平均賃金の低さです。

離職率が高いから、常に募集が必要です。平均賃金が低いから、なかなか人が来ません。だから求人詐欺をするわけです。

3人に1人が3年以内に離職しているとよく言われます。今回は学歴別、規模別、産業別の離職率をグラフにし企業としてどう離職防止の対応すべきか取り上げます。

固定残業代は明示することになってます

行政も本件については問題意識を持っており、前述の記事でも以下のような動きが紹介されています。

ただ、現時点では罰則がないという点で、まだまだやりたい放題になっているわけです。

厚生労働省は、2015年9月30日、新しい告示を出し、「募集段階からの固定残業代の明示」を義務付けている。また、2016年6月3日、厚生労働省の有識者検討会は、公共職業安定所(ハローワーク)や民間の職業紹介事業者に労働条件を偽った求人を出した企業と幹部に対し、懲役刑を含む罰則を設けることも検討された報告書をまとめている(「雇用仲介事業等の在り方に関する検討会報告書」)。

今回は、固定残業代の仕組みとその違法性を法的に解説します。求人の9割は違法性が高いという調査結果もあり、ブラック企業の常套手段とも言われているものです。あなたの会社がそんな疑念を持たれないように注意しましょう。

本当の意味で「攻めの人事」を実践する労働協約

内容は「エステティック大手TBCが、「ホワイト求人労働協約」を締結」を見ていただくとして、いったい何が攻めているのかという点を説明しておきます。

  1. 法律以上の情報公開
  2. 求人条件表示の明確化・共通化
  3. 求人情報以下の労働契約締結の禁止

特にすごいのが「法律以上の情報公開」です。

残業時間を実質的に青天井にすることも可能な36協定の公開、固定残業代制度について新卒・中途採用すべてに明示、これは法律以上の対応であり、しかもそれは企業側の単なる「お約束」ではなく、労働協約によって実効性を担保します。

記者会見までしているわけですから、もし求人票と雇用契約の内容に齟齬があれば大炎上してしまいます。

こんなこと強い覚悟がなければできないことです。

求人詐欺が横行していると例示されるエステ業界で生き残っていくために攻めているわけです。

これこそが本当の意味での「攻めの人事」だと思いませんか?

まとめ

今回は、本当に「攻めの人事」と同意せざるを得ない度肝を抜かれたニュースを取り上げました。

もし、私が本件について事前に相談されたら、思わず「そこまでやったら後戻りはできませんよ」と慎重なアドバイスをしてしまいます。

また、このような内容を紹介すると「大手だからできるんでしょ」と言う人が必ず出てきます。

でも、それは違います。法律以上の対応を行うかはともかく、「当社は求人票と雇用契約の内容が同じです、ウソはつきません。」と言えばよいだけです。

だって、例示された業界では、求人詐欺が横行しているわけですから。もちろん例示された業界の中でも、きちんと求人を出している企業はあります。

だからこそ、まともな企業も、求人詐欺があると、迷惑を被るわけです。

むしろ、エステティックTBCは求人詐欺が横行すると思われている業界の事情を逆手にとって、攻めているわけですね。いや、でも労働協約ってすごいです、びっくりしました。

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この記事を書いた人


安部敏志:社会保険労務士

「就業規則は働き方のルールであり、社内で自ら作成・修正すべき」という信念のもと、中小企業の人事担当者の育成に従事。
その他、専門雑誌等の記事の執筆にも積極的に対応。

事務所公式サイト:あべ社労士事務所

なお、同業の社労士から事務所運営や営業方法などの相談を受けることが増えていますが、当事務所は開業当時から この方法をそのとおりに実行しているだけです。

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