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育児休業は多くの方に認知されていますが、法的に義務付けられている「仕事と育児の両立支援制度」には他にも様々なものがあります。
今回はその1つである「育児のための所定外労働・時間外労働の制限」について解説します。
所定外労働・時間外労働の違い
まず、そもそも理解しておくべき点として、所定外労働と時間外労働の違いを理解しておく必要があります。
- 所定外労働:会社の定めた所定労働時間を超える時間の労働
- 時間外労働:法定労働時間を超える時間の労働
例えば、会社の1日の所定労働時間が7時間30分の場合は以下のようになります。
- 所定外労働:7時間30分を超えた労働
- 時間外労働:8時間を超えた労働
労働法令を正確に理解するためには、法定労働時間と所定労働時間の違いを理解しておくことが欠かせません。詳細は以下をご参考ください。
関連:労働時間とは? 残業時間の対策の前に労働時間の定義に要注意!
育児のための所定外労働・時間外労働の制限とは?
育児のための所定外労働・時間外労働の制限は、育児・介護休業法により義務づけられている以下の制度です。
- 所定外労働の制限:3歳に満たない子を養育する労働者が請求した場合、所定労働時間を超えて労働させてはならない
- 時間外労働の制限:小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が請求した場合、制限時間(1か月24時間、1年150時間)を超えて労働時間を延長してはならない
- 育児・介護休業法第16条の8
- 事業主は、3歳に満たない子を養育する労働者であって、・・・(略)・・・労働者が当該子を養育するために請求した場合においては、所定労働時間を超えて労働させてはならない。ただし、・・・(略)・・・
- 育児・介護休業法第17条
- 事業主は、労働基準法第三十六条第一項の規定により同項に規定する労働時間を延長することができる場合において、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者であって・・・(略)・・・当該子を養育するために請求したときは、制限時間(1月について24時間、1年について150時間)を超えて労働時間を延長してはならない。ただし、・・・(略)・・・
育児のための所定外労働の制限の対象となる従業員
育児のための所定外労働の制限の対象となるのは、
- 3歳に満たない子を養育する従業員
です。男女ともに対象となります。
ただし、日雇い労働者は対象外で、また労使協定を締結することで以下の従業員も対象外にすることができます。
- 勤続1年未満の従業員
- 週の所定労働日数が2日以下の従業員
なお、労使協定は企業の労使が定めるものなので、当然労使協定を作成しないのも自由です。適用除外ができないだけですし。
育児のための時間外労働の制限の対象となる従業員
育児のための時間外労働の制限の対象となるのは、
- 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員
です。男女ともに対象となります。
ただし、以下に該当する従業員は対象外にできます(労使協定は不要)。
- 日雇い労働者
- 勤続1年未満の従業員
- 週の所定労働日数が2日以下の従業員
育児のための所定外労働・時間外労働の制限の期間・回数
育児のための所定外労働・時間外労働の制限については、
- 1回の請求につき1か月以上1年以内の期間
- 請求できる回数は制限なし
となっており、制限開始予定日の1か月前までに請求しなければならないとされています(育児・介護休業法第16条の8第2項、育児・介護休業法第17条第2項)。
育児のための所定外労働・時間外労働の制限の例外
育児・介護休業法第16条の8、第17条にはただし書きとして、
- ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない。
と定められており、事業の正常な運営を妨げる場合には、育児のための所定外労働・時間外労働の制限の請求を拒否することができます。
実務的には、どのような場合にこの「事業の正常な運営を妨げる場合」と言えるのかが悩ましいわけですが、行政は以下の解釈を示しています。
「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するか否かは、その従業員の所属する事業所を基準として、その従業員の担当する作業の内容、作業の繁閑、代替要員の配置の難易等諸般の事情を考慮して客観的に判断することとなります。
従業員から請求があった場合には、従業員が請求どおりに「所定外労働の制限」を受けることができるよう通常考えられる相当の努力をすべきです。単に所定外労働が業務上必要だという理由だけでは拒むことは許されません。
「厚生労働省・両立支援のひろば」より
まとめ
今回は、似ているけどちょっと違う「育児のための所定外労働の制限」と「育児のための時間外労働の制限」について解説しました。
育児には想定できない場合が多くあるため、従業員からの要望は多岐に亘ります。
手続きなどの細かい部分についても法令に定められており、また実務上揉めることが多いことから、就業規則(育児・介護休業規程)を定める際には注意点が多いというのが実情です。
この機会に現在の規定をチェックしておきましょう。
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- 毎年のように改正される労働法令への対応に頭を悩ませている
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