経営に必須な労務管理の3要素を徹底解説!

本サイトでは、労務管理に関して全く知識がないという中小企業の経営者の方々を対象に、人事労務管理戦略の基礎講座を行っています。

今回は、そもそも労務管理とは何なのか、なぜ経営に労務管理が必須なのかという点を解説します。

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1. 労務管理とは?

労務管理というのは、企業の経営資源であるヒト・モノ・カネの3要素のうち、ヒトを対象とするもので、企業が社員に対して行う管理のことです。

「人事労務管理」、「人事管理」、「労務管理」、「人的資源管理」など様々な名称があり、学術的には微妙な違いがあるようですが、基本的には同じものと考えて構いません。

一般的には、人事部が行うものですが、企業によっては総務部が一括して行っていることもあります。

1-1. 人事管理と労務管理の違い

Wikipediaの説明・人事労務管理によると、人事管理と労務管理の違いというのは戦前はあったようです。確かに今はあまり分けて使わないですね。

戦前の日本においてはホワイトカラーを対象とする「人事管理」とブルーカラーを対象とする「労務管理」は別個に扱われていた。戦後はこのような区別がなくなり、論者によって様々な意味で使用されるようになったが、近年は両者を合わせて「人事労務管理」と呼ぶのが一般的である。

1-2. なぜ「ヒト・モノ・カネ」はこの順番になっているのか?

企業の経営資源は、「ヒト・モノ・カネ」と言いますが、なぜこのような順番になっているのか、と考えたことはありますか?

それは、ヒト、すなわち「人材」が最優先だからです。松下幸之助氏の有名な名言「企業は人なり」にあるように、「人材」が最も大事であり、優秀な人材さえいれば、モノやカネは調達することができるからです。

逆に、いくらモノやカネがあっても、それを適切に活用できる人材がいなければ、宝の持ち腐れになってしまいます。

だからこそ、「ヒト・モノ・カネ」というのは、この順番になっています。また、売上の伸び悩みなどの経営課題を突き詰めて考えると、営業部の人材育成にたどり着くなど、最終的に人の問題という結論に達することはよくあります。

参考

1.3. 日本と海外の労務管理の違い

シンガポールで働いていたときには、シンガポール在住企業の経営者や人事部の方と積極的に話をし、日本と海外の人事制度、労務管理手法の違いについて調査をしていましたが、随分異なっており驚いたことがあります。

例えば、日本の企業内教育制度というのは、海外ではかなり異質な存在ですし、日本企業で中央集権的な組織として君臨する人事部というのも海外では珍しい存在です。

もちろん、海外の企業でも人事部という部署はありますが、人事部の役割は現業を行う各部署のサポートです。採用などの人事権については営業部、企画部などの各部署が中心となり強い権限を持っています。人事部が決めるのではなく、現場が決めるわけです。力関係が異なるわけです。この点について、各現場こそが人事部の顧客であるという役割が徹底されているとも言えるところです。

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日本の企業が海外進出して苦労する理由がこの点です。人事労務管理の違い、組織の役割の違いを理解せず、日本式のマネジメントを持ち込もうとして、現地の人材をうまく活用できず失敗するというのは、本当によくあります。

これはもちろんどちらが良い・悪いという問題ではありません。長年かけて培われた人事労務管理の文化の違いというだけです。ただ、国によって違いがあり、押し付け式では絶対にうまくいかないということを知っておくべきです。

2. なぜ経営に労務管理が必須なのか?

労務管理を構成する要素は、以下の3つです。

  1. モラールの維持向上
  2. 生産性の向上
  3. コンプライアンス

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この3要素は、企業の規模が大きかろうが小さかろうが関係ありません。

大企業が人事制度を構築するときは、人事評価制度、等級制度、能力開発制度などの各種制度を細かく整備していきますが、結局はこの3要素を細分化しているに過ぎません。

もっと簡単な言い方をすると、きちんと法令を遵守する職場環境を構築し、モラール(全体の士気)を高め、社員の能力をフルに発揮させ生産性を向上させようということです。

そして、これは重要なことですが、この3要素は、それぞれが独立しているということではなく、すべてが関連しあっているということです。

モラールの維持向上というのは、生産性向上に直結しますし、コンプライアンス遵守に積極的に取り組み職場環境を向上させることは、モラールアップにつながります。

2-1. モラールの維持向上

モラールという言葉は聞き慣れない言葉かもしれません。

モラールというのは、目標を達成しようとする意欲や態度、勤労意欲、やる気のことです。

よく間違われますがモラルとは異なります。モラルというのは一般的な道徳観のことです。

「目標達成のために、社員のモラールアップを図ります」というように、社員教育などでよく使われますが、職場などでの労働意欲の向上、士気向上をはかることを意味します。

成長している会社では、自由な出退勤を認めるフレックス制度や在宅勤務制度などの制度面や、職場の一体感を高めるためにお揃いのTシャツをつくったり、花見などのレクレーションを開催しコミュニケーションを豊かにしたりと、社員のモラールアップのための活動を行っています。

また、モチベーションとモラールというのも厳密にいうと違います。モチベーションは個人のやる気に焦点を当て、モラールは全体の士気を指します。

なお、社員一人一人のモチベーションアップを考えるときに役立つ理論がマズローの欲求5段階説です。

5段階の階層を用いて人間の欲求を理論化したもので、人事制度構築には欠かせない理論ですので、以下の記事もご参考ください。

人事制度の構築に役立つマズローの欲求5段階説の利用法と注意点
人事制度というのは、企業を支えている社員のモチベーションを高め、組織として力を発揮していくために設計される制度です。今回は、人事制度を構築する際の原理原則となる理論「マズローの欲求5段階説」と、人事制度を構築・運用するときの注意点についてご紹介します。

2-2. 生産性の向上

社員の生産性を向上させるには、人材育成が不可欠です。

「ヒト・モノ・カネ」の順番について、上で書きましたが、中小企業の経営者に「経営資源をご存じですか?」とお聞きすると、ほぼすべての方に「ヒト・モノ・カネだろ、そんなこと知っているよ」とお答えいただきます。

「それでは、御社が、実際にお金と時間をかけて投資している順番もこの通りになっていますか?」とお聞きすると、ほぼすべての方が、「うーん、人への投資が最も遅れているな」と回答されます。

ただ、生産性を向上させるために、すぐに人材育成に取りかかってはいけません。

まず行うべきことは、社員が行っている業務を「見える化」することです。多くの企業では、業務の重複、ムダにあふれています。

業務を「見える化」し、業務量を見極めた上で人員配置を行ってから、人材育成に取りかかるというのが正しい手順です。

もちろん、人員配置を行う際には、御社の売上・利益の高い事業内容に重点的に人を配置する必要がありますし、売上は高くても利益の少ない事業内容は、後回しにするという決断も必要になってきます。

いずれにしても大切なことは、仕組みづくりです。

昔は「24時間働けますか?」という言葉が冗談でないほど、社員数×猛烈な働きぶりで、仕組みがなくても企業は成長できましたが、もはやそんな時代は終わっています。

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2-3. コンプライアンス(法令遵守)

コンプライアンスというのは、法令遵守と訳されますが、関連する法令を遵守し、企業リスクを回避するということです。

労務管理に関係する法令というのは数多くありますが、その中心となるのが労働基準法です。労働基準法は強行法規ですので、違反すれば罰則があります。

経営者は間違っても、以下の会社のように「労働基準法なんて守っていたら経営はやってられないよ」と言ってはいけません。

日頃からそのような発言をしていたら、録音されて公開される可能性もあります。

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それに、同業他社も同じようなものだからと言ってしまうのは、「うちは同業他社と同じレベルの会社だよ」と言っているようなものです。

実際、厚生労働省傘下の労働基準監督署が行った企業への監督指導では、84%の事業場が労働基準法などの人事労務管理に関する法令に違反しているわけです。

そうであれば、むしろ、中小企業こそ同業他社が疎かにしがちなコンプライアンス遵守を掲げ、積極的に取り組むことで、企業イメージを強めることができると思いませんか?

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まとめ

いかがでしたでしょうか?

馴染みのない経営者が見ると、労働関係法令の数の多さ・複雑さに圧倒されるかもしれませんが、優先順位を理解した専門家の指導を受ければ、それほど抑えるべきポイントというのは多くないことがわかるはずです。

次回は、人事労務管理を行う上で、上位概念として、適切に理解しておかなければならない労働基準法・労働協約のポイントを絶対的に必須な部分に限定して解説します。

労働基準法・労働協約・就業規則・労働契約の関係
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また、人事の仕事内容と役割については以下の記事で解説しています。

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なお、当事務所に寄せられるご相談の中で共通する内容について、組織の規模別にまとめましたので、こちらもご参考ください。

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この記事を書いた人


安部敏志

あべ社労士事務所代表・社会保険労務士

国家公務員I種職員として労働基準法・労働安全衛生法等の立案や企業への徹底的な指導に従事した経験を武器に、退職後は逆に会社を守る立場として経営者・人事担当者からの人事労務管理に関するご相談に対応。

最近は記事の執筆やセミナー講師の依頼にも積極的に対応。仕事内容がわかりにくいとよく言われるので、業務内容・実績を紹介するページを作成しました!

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