育児休業(育休)の基礎知識(期間・給料・延長の原則と例外)を徹底解説!

こんにちは。育休経験者の福岡の社労士・安部敏志です。

一昔前だったら「育休」といっても女性社員のための制度という印象だったかもしれませんが、昨今はイクメンという言葉もあるように、男女関係なく、育休への意識が高まっています。

就業規則の見直しのご依頼を受けていて不備が多いのが休暇・休業関係、そして労働者の関心が高まっているのが休暇・休業関係、まさにここでミスマッチが起き、トラブルの原因になるわけです。

ただ、育休制度に関して勉強しようとしても、例外が多くあったり、法改正が多かったりして意外と理解しにくいのがこの育休制度です。

ちなみに、よくいただく質問として以下のようなものがあります。

  • 私の会社の就業規則には育休制度がないのですが、取得できますか?
  • 育休期間中は給料はもらえない?
  • 契約社員、パート、アルバイトも育休を取得できるのか?
  • 育休が取得できない条件はあるのか?
  • 育休はどれくらいの期間取ることができるのか?

そこで、今回は、育児休業(育休)の基礎知識として、育児休業と育児休暇の違い、育休の対象者・期間、例外的な育休制度、給料・社会保険の取扱いについて徹底的に解説します。

スポンサーリンク

1. 育休とは?

一般的によく「育休」と略されていますが、正式名称は「育児休業」です。

これは、育児・介護休業法(正式名称は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」)により定められた法定の休業です。

ちなみに、この法律は平成3年(1991年)に制定されたものですが、その後幾度も改正され、制度が拡充されています。

原則として、1歳に満たない子を養育する労働者が取得できるものです。

この「育休」という言葉を使うときに、注意していただきたいのが用語の使い方です。

育児休業と育児休暇の違い

一般的に「育休」と略して使うことが多いため、「育児休業」と「育児休暇」の混同が多く、就業規則でも「育児休暇」と規定されていることが多いのですが、この混同は運用時にとても困ったことが起こります。

簡単に「育児休業」と「育児休暇」の違いを解説すると以下のようになります。

  • 育児休業:原則1年を限度とした休業(育児・介護休業法第5条)
  • 育児休暇:法的な根拠なし

「そんなの、どっちでもいいでしょ」と思うかもしれませんが、実は、育児休業が規定されている育児・介護休業法の中では、育児のために休暇を取得できる「子の看護休暇」という制度があります。

子の看護休暇(育児・介護休業法第16条の2)
小学校入学前の子を養育する労働者は年間5日(2人以上の場合は年10日)を限度に取得できる休暇

そのため、就業規則などで「育児休暇」と書いてあると、「子の看護休暇」のことを指しているのか、それとも育児休業の誤用なのか混同してしまうわけです。

ちなみに、同じ問題として「介護休業」と「介護休暇」というのがありますが、この2つはどちらも法的根拠があり、しかも内容が以下のように違う制度なのです。。。ややこしいですね。

  • 介護休業:93日を限度とした休業(育児・介護休業法第11条)
  • 介護休暇:原則、年5日(2人以上の場合は年10日)を限度とした休暇(育児・介護休業法第16条の5)

2. 育休の対象者

育児休業を取得できるのは、原則として、1歳に満たない子を養育する労働者(男女どちらもOK)です。

ただし、日々雇用される人は対象外です。

よく「契約社員、パート、アルバイトは対象になるのか」という質問がありますが、パートだから、アルバイトだからといった雇用形態は関係ありません。

育児・介護休業法第5条では、以下のいずれにも該当する場合、育児休業の取得ができることになっています。

  • 引き続き雇用された期間が1年以上である者
  • 養育する子が1歳6か月に達する日までに、その労働契約(労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの)が満了することが明らかでない者

平成29年1月に施行された改正育児・介護休業法により、対象者が変更されたのですが、ポイントは「労働契約が満了することが明らかでない者」という部分です。

「契約更新がない」とはっきりしていれば対象外になりますが、契約更新の有無が不明な場合で、かつ、1年以上雇用されていれば、育休の対象者になるということです。

また、育休の対象者について、以下の条件に該当する労働者は、労使協定を締結することで除外できることが法律で認められています。

つまり、パートやアルバイトでも、以下の条件に該当しない限り、育休の対象者になります

  • 雇用期間が1年未満の労働者
  • 1年以内に雇用期間が終了する労働者(育児休業が1歳6か月までの場合は、6か月以内に終了する労働者)
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

なお、強調しておきますが、この法律の対象となっているのは「労働者」です。

たまに、経営者や個人事業主から育休を取りたいという相談があるのですが、使用者は労働者ではないため対象外です。

また、これらの相談の本音の部分は、後で説明する給付金が欲しいということなのですが、労働者ではないのでもらえません。自分で休みを決めることができるわけですから、自分で勝手に取って下さい。

3. 育休の期間

育児休業期間は、原則として、1人の子につき1回、子が出生した日から子が1歳に達する日(誕生日の前日)までの間で、労働者が申し出た期間です。

つまり、休業期間は、労働者の申出次第ということです。1歳に達する日の前日までの約1年になるのか、それとも1か月なのか、2週間なのか、労働者の申し出た期間によります。ただ、原則として回数は1回なので、どの時期にどれくらいの期間を取得するのか、これは現実的には会社との調整によるでしょう。

会社としても代替要員の準備は必要になりますし。

さて、原則だけであれば、そんなに難しくはありません。

ただ、原則があれば例外があります。そして、育児休業制度を理解しにくいと感じるのは、この例外のためです。

そのため、まずは産休(産前・産後の休業)と育休の時間の流れをまとめた以下の図を理解して下さい。

sankyu-ikukyu

パパママ育休プラス

まず、例外その1、育児休業期間の延長です。

父と母のどちらも育児休業を取得する場合は、子が1歳2か月に達するまで育児休業期間の延長が可能となります。

これがパパママ育休プラスと呼ばれる制度です。育児休業期間の延長が可能ということです。

ただ、夫婦1人ずつが取得できる休業期間の上限は1年間です。

子が1歳2か月に達するまで育児休業期間の延長が可能な制度なのですが、あくまで休業期間の上限は1年間ということです。

なお、妻の場合は、産後休業期間を含めて1年間であり、育児休業の取得可能日数は以下の計算式によります。

育児休業の取得可能日数 = 365日(うるう年は366日) – 出生日以後の産前産後休業期間の日数

特別の事情による育児休業の再度の取得

次に、例外その2、特別の事情による回数の増加、育児休業の2回目の取得です。

育児休業の取得は、原則、1人の子につき1回ですが、以下の場合は2回目の取得が可能です。

  • 子の出生後8週間以内に、産後休業をしていない従業員が最初の育児休業を取得した場合
  • 特別な事情がある場合
    • 配偶者が死亡、負傷、疾病等により子を養育することが困難になった場合
    • 離婚等により配偶者が子と同居しなくなった場合
    • 新たな産前産後休業、育児休業または介護休業の開始により育児休業が終了した場合で、当該育児休業に係る子が死亡した場合等
    • 子が負傷、疾病、傷害により、2週間以上の期間にわたり世話を必要とする場合
    • 保育所等の入所を希望しているが、入所できない場合

育児休業期間の延長(1歳6か月)

そして、例外その3、期間の延長です。

先程、例外その1としてパパママ育休プラスを解説しましたが、状況によって例外が多いから、育休制度の理解が難しくなります。この辺りは整理していただきたいところです。

念のために、原則をおさらいしておくと、育児休業期間は、1人の子につき1回、子が出生した日から子が1歳に達する日(誕生日の前日)までの間で、労働者が申し出た期間です。

ただし、以下の条件のいずれかを満たせば、子が1歳6か月に達するまで育児休業ができます。

  • 保育所の入所を希望しているが、入所できない場合
  • 子の養育を行っている配偶者であって、1歳以降、子を養育する予定であった者が、死亡、負傷、疾病等の事情により子を養育することが困難になった場合

なお、「保育所の入所を希望しているが、入所できない場合」の要件は、行政通達(平成21年12月28日付け職発第1228第4号・雇児発第1228第2号)により示されています。

「保育所」とは、児童福祉法(昭和22年法律第164号)に規定する保育所をいうものであり、いわゆる無認可保育施設は含まれないものであること。

「保育の実施を希望し、申込みを行っているが、当面その実施が行われないとき」とは、市町村に対して保育の申込みを行っており、市町村から、少なくとも、再度の育児休業に係る育児休業期間の初日において保育が行われない旨の通知がなされている場合をいうものであること。

4. 会社の育休制度・就業規則の規定の有無

冒頭で解説したとおり、育児休業は法律による義務です。労働者から申出があれば、事業主は拒むことはできないと、法律で明確に書かれています。

つまり「うちの会社には育休の制度はない」「就業規則に規定していないから取得できない」というのは通用しないということです。

そのため、会社としては、育児休業に入る社員の代替要員をどうするか、給料や社会保険をどうするか、手続きをどうするかなど、きちんと制度として構築し、就業規則を整備しておく必要があります。

これは労働者のためだけに必要ということでなく、会社にとっても大きなリスクになるためです。

特に、後述しますが、給料や社会保険の関係でのリスクは致命的なものになります。

なお、制度の根拠は以下の条文ですが、長いので抜粋しています。

育児・介護休業法第5条(育児休業の申出)
労働者は、その養育する1歳に満たない子について、その事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができる。
育児・介護休業法第6条(育児休業申出があった場合における事業主の義務等)
事業主は、労働者からの育児休業申出があったときは、当該育児休業申出を拒むことができない。

5. 育休中の給料

制度の内容をあまり知らない経営者に限って、「育休の必要性はわかるけど、ただでさえ人手不足なのに、うちの会社にはそんな余裕がない」と言ったりします。

ただ、育休に関しては、年次有給休暇と異なり、給料の支払い義務はありません。

無給で構いません。というより、育休を導入している会社の多くは、私の知る限り無給です。

有給だったらむしろ凄いことです。大いにアピールしましょう。

「無給は可哀想ではないか」と思うかもしれませんが、育児休業期間の労働者は、雇用保険から「育児休業給付金」というものを受け取ることができます。

支給対象期間(1か月)当たりで、原則として以下の金額を受けることができます。毎月支払っている雇用保険ですから、きちんと制度を利用しましょう。

休業開始時賃金日額 × 支給日数の67%(育休開始から6か月経過後は50%)相当額

6. 育休中の社会保険料

「無給で構わないといっても、社員の雇用には社会保険料もある」と言う経営者もいましたが、育休中の社会保険料(健康保険・厚生年金保険)については申出により免除されます。

被保険者本人負担分、事業主負担分どちらもです。

参考

保険料の免除等(育児休業関係等)

7.育休を推進するための助成金

そして、行政は育児休業を推進するために様々な助成金を用意しています。

なお、これは平成28年度の情報です。助成金に限らず、制度については必ず一次情報を確認してください。

出生時両立支援助成金

男性労働者に育児休業を取得させた場合の助成金です。育休1人目の場合の支給額は、中小企業の場合60万円、大企業の場合は30万円です。

以下の記事でも書いていますが、男性の育児休業取得者の割合はかなり少ないですからね・・・

育休取得率の現状を時系列でグラフにしてみた・男性は過去最高といっても・・・
平成27年度の女性・男性の育休取得率が発表されましたので、今回はあえてまとめてグラフにしてみました。男性の育休取得率は過去最高・・・といってもこの状態はまるで地べたに這いつくばっているような・・・

中小両立支援助成金・代替要員確保コース

育児休業取得者の代替要員を確保し、育児休業を3か月以上利用した労働者を原職等に復帰させ、復帰後6か月以上雇用した場合の助成金です。

対象は中小企業のみで、育児休業取得者1人当たり50万円です。

参考

仕事と家庭の両立支援に取り組む事業主等のみなさまへ(厚生労働省)

まとめ

いかがでしたでしょうか?

育休というイメージしやすいネーミング、そして認知度が高まっていることはとても良いことです。

ただ、制度普及のために行政が助成金を用意したり、育休手当という名称が広まったりしているためか、誰でももらえる、もらわなければ損、といったような感覚で、当事務所には質問が相次いでいます。

人事労務管理の基本は、社員に気持ちよく、そして頑張って働いてもらうための職場整備です。

最近、ある会社から、今後の人材獲得競争を見据えて、既存の育児制度を拡充していくので、最新の制度・他業種を含めた参考情報の提供、就業規則・育児休業規程への反映をお願いしたいというご依頼をいただきました。

その会社では、託児所の設置まで計画しており、以前から地域では働きやすい職場と評判になっているそうですが、このような会社が増えてくると、当事務所もやりがいがあって、嬉しい限りです(^0^)

なお、法定休暇に関する一覧は以下の記事にまとめていますのでご参考下さい。

【まとめ】有給休暇や産休などの法定休暇に関する義務の内容一覧
有給休暇、産休・育休といった休暇・休業制度について、何が義務で何が任意なのか、何が有給で何が無給でもよいのかご存じですか? 今回は、経営者・人事担当者が抑えておきたい休暇・休業制度の種類、給料の要否などについて解説します。

また、平成29年1月に施行された改正育児・介護休業法の内容については以下の記事で詳しく解説しています。

育児・介護休業法の改正内容まとめ(2017年1月1日から対応の義務)
来年(2017年)1月1日より育児・介護休業法の改正内容が施行されます。今回の改正内容は多岐に亘っており、会社に求められる実務的な対応と注意点について詳細に解説します。

あなたの会社の就業規則は大丈夫ですか?

あなたが就業規則の変更の必要があるかもしれないと思っても、本当に必要なのか、専門家に高いお金を払って依頼する価値があるのか不安に思うかもしれません。

見直しを依頼する前に、まずは就業規則の診断をしてみませんか?

あべ社労士事務所では、満足いただけなかった場合、全額返金保証の「就業規則の診断サービス」を行っています。

お知らせ 確定申告の準備を1日半で完了! クラウド会計ソフトfreeeは個人事業主に必須のツール!
お知らせ マイナンバー対応にお悩みの人事担当者のご要望にお応えし、就業規則の規定例を作成しました!
育児休業(育休)の基礎知識(期間・給料・延長の原則と例外)を徹底解説!
本記事以外の人事労務情報も満載の
Facebookページを、
いいねしてチェックしよう!
スポンサーリンク

フォローする

人事の秘訣を知りたくありませんか?

人事の秘訣を知りたくありませんか?

本音満載で人事の秘訣を毎週お伝えしています。

過去の配信情報など、さらに詳しい情報をお知りになりたい場合は、こちらをご覧ください。

注意
*は必須項目を示しています。なお、氏名の欄には本名を漢字で入れてください。「たこ」など明らかにふざけた名前を登録している方がいますが、見つけ次第削除しています。


この記事を書いた人


安部敏志

あべ社労士事務所代表・社会保険労務士

国家公務員I種職員として労働基準法・労働安全衛生法等の立案や企業への徹底的な指導に従事した経験を武器に、退職後は逆に会社を守る立場として経営者・人事担当者からの人事労務管理に関するご相談に対応。

最近は記事の執筆やセミナー講師の依頼にも積極的に対応。仕事内容がわかりにくいとよく言われるので、業務内容・実績を紹介するページを作成しました!

ご相談・ご依頼はこちらから

error: Content is protected !!