Work Life Fun

仕事も人生も楽しむ社労士

マイナンバー対応のために就業規則を変更する必要があるか専門家として回答します

※当サイトはリンクに広告ページが含まれている場合があります

先日、近年の労働関連法改正とそれに伴う就業規則の整備法についてセミナーを行いましたが、それ以降、マイナンバー対応と就業規則の関係についてご質問を受けることが格段に増えました。

まだまだマイナンバー対応に混乱している会社が多いようですね。

今回は、当事務所によくいただくご質問「マイナンバー対応として就業規則を変更しなければならないか?」という点について解説します。

確かに調べたところ、就業規則を変えなければならない、変えなくてもよい、と色々なことを言っている人がいて、何を信じてよいかわからないという気持ちはわかります。

就業規則を変える義務はない

まず、結論から書きますが、マイナンバー対応として、就業規則を変える義務はありません

私のセミナーの受講者やクライアントになっている方は、私が何度も繰り返すので、耳にタコができるくらい聞いているはずですが、就業規則を整備する際には必ず目的を明確にすることが大事です。

目的を明確にする上で必要なポイントはいくつかありますが、その1つが「就業規則に規定することが義務かどうか?」です。

後述しますが、この点については、明確に「義務はない」と言えます。

それでは、マイナンバー制度に対応するために、就業規則の変更が不要かというとそうでもありません。

つまり、会社にとって、マイナンバー対応のために就業規則の変更の義務はないが、変更しておかないと余計な負担・リスクを抱えることになるというのが答えになります。

マイナンバーと就業規則の関係を考える上での3つのポイント

会社がマイナンバーと就業規則の関係を考える上で抑えておきたいポイントは以下の3つです。

  1. どのように取得するか?
  2. どのような利用・提供を行うのか?
  3. どのように保管・廃棄するのか?

マイナンバーに関しては、行政手続きに使用する様式の変更、しかも提出先によって変更時期がバラバラになってしまったことから、混乱が起きましたが、これは些末な問題です。

大局的な視点から制度を俯瞰することが重要です。

昨年末から当事務所に寄せられた多くのトラブルは、先程ご紹介した3つのポイントの対応順を間違えたことから生じていました。

通常の流れは、上の図のように、取得 → 利用・提供 → 保管・廃棄となります。ただ、対応する際には、下の図の流れで考える必要があります。

安全に管理され、適切な利用がなされることが保証され、はじめて従業員は安心して個人番号を提供できるわけです。

「必要だからクレジットカードの番号を教えて欲しい、安全に管理するための体制はできてないけど、俺を信用して。」と言われて、あなたは教えますか?

普通だったら教えませんよね?

でも、マイナンバーの関係では、こんなことを行った会社があったわけです。だからトラブルになったわけです。

利用目的の通知に就業規則の整備は必要?

マイナンバー対応のために就業規則を変更しなければならないかどうかで意見が分かれているのが、先程解説した3つのポイントの2番目、「どのような利用・提供を行うのか」、すなわち利用目的の通知です。

企業がマイナンバーを取り扱うことができるのは利用目的を特定した範囲のみです。個人情報よりも一歩進んだものなので「特定個人情報」と言われています。

つまり、企業はどのような用途で社員のマイナンバーを利用するのか、あらかじめ通知をしておかなければなりません。これが「利用目的の通知」です。

そして、マイナンバーについては、個人情報保護法と異なり、「本人の同意があったとしても利用目的を超えて特定個人情報を利用してはならない。」と法律に定められているのでご注意下さい。

なお、ここでの「通知」については、「本人の同意」までは含まれないことが、個人情報保護委員会のQ&Aで示されています。

そのため、当初の利用目的と異なる目的でマイナンバーを利用する場合には、改めて本人に通知することが必要になります。

実務的な利用目的の通知方法

利用目的の通知方法として、特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドラインでは、以下の方法が例示されています。

  • 社内LANにおける通知
  • 利用目的を記載した書類の提示
  • 就業規則への明記

つまり、就業規則への明記は様々な方法の1つであるということです。

では、実務的な方法、より安全な方法としてはどうでしょうか?

就業規則に規定することが最も実務的な方法として紹介されている本やブログがありますが、私はそうは思いません。

理由は2つあります。

問題点その1:就業規則の範囲に被扶養者は含まれない

1つ目は、就業規則の範囲の問題です。

就業規則の効力が及ぶのは社員ですが、マイナンバーの取得に際しては被扶養者の個人番号も含まれます。

就業規則に利用目的を書いたからといって、被扶養者にも通知したことにはなりません。

問題点その2:実務的に負荷が大きい

2つ目は、実務的に負荷が大きくなります。

就業規則の変更として不利益変更にはならないのでまだマシですが、就業規則の手続きとして、労働組合の意見聴取、監督署への届出、労働者への周知まで行うのは実務的に大変です。

利用目的の通知について就業規則の変更を勧めているのは、就業規則の変更で報酬を得ようとしているのか、それとも実務を知らないのかのどちらかではないかと妙に勘ぐってしまうところです・・・

結論:利用目的の通知に就業規則の整備は必要?

以上の2点から、私は、就業規則を変更するのではなく、利用目的通知書を作って社員とご家族に配布するのが、結局は実務的に近道だと考えています。

それでは、具体的な利用目的通知書としてどのような文書が良いのか、どのような利用目的を入れるのが良いのか、それはご依頼をいただければ当事務所で作成します。

なお、正しい利用目的通知書の項目を探す際に、もし「労働者災害補償保険法関係届出事務」と書いてあるブログなどの記事があれば、それは間違いですのでご注意下さい。

恥ずかしながら、私も訂正情報に気づかず、ご指摘を受けて気づいたのですが、労災年金の請求書などは、請求者本人が直接提出することになっています。

誤った情報がインターネット上には溢れていますので、ご注意下さい。

就業規則の整備が必要な部分

さて、会社がマイナンバーと就業規則の関係を考える上で抑えておきたい3つのポイントを再掲します。

  1. どのように取得するか?
  2. どのような利用・提供を行うのか?
  3. どのように保管・廃棄するのか?

このうち、2については不要であることを解説しましたが、就業規則の整備を検討する上で、本当に大事な点は1と3の部分です。

この部分で、就業規則を適切に整備し、事務負担を軽減し、経営上のリスクを予防しておくわけです。

【無料】効率的に人事労務の情報を入手しませんか?
  • 毎年のように改正される労働法令への対応に頭を悩ませている
  • 総務や経理などの他の業務を兼務しているので、人事労務業務だけに時間を割けない

といった悩みを抱える企業の経営者・人事労務担当者向けに、公開型のブログでは書けない、本音を交えた人事労務に関する情報・ノウハウ、時期的なトピックに関するメールマガジンを「無料」で配信しています。

過去の配信分は公開しません。

情報が必要な方は、いますぐ以下のフォームから購読の登録をしてください。購読して不要と思ったら簡単に解除できますのでご安心ください。


up_line