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育児休業中の就労は原則禁止、ただし例外あり

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育児休業の期間は、原則として、

  • 1人の子につき1回、子が出生した日から子が1歳に達する日(誕生日の前日)までの間で、労働者が申し出た期間

です。実際の育児休業の取得期間をデータで確認してみると、

  • 女性:12か月~18か月未満
  • 男性:5日~2週間未満

となっており、1年〜1年半の休業期間となると、育児休業期間に就労は可能なのか? という疑問が浮かぶかもしれません。

関連:実際の育児休業の取得期間:厚生労働省データ令和3年度

育児休業中の就労は原則禁止

まず、結論から書くと、

  • 育児休業中の就労は原則禁止

です。厚生労働省による資料「育児休業中の就労について」において、

育児・介護休業法上の育児休業は、子の養育を行うために、休業期間中の労務提供義務を消滅させる制度であり、休業期間中に就労することは想定されていません。

と記載されています。ただし、1年という長期に亘る休業期間という配慮のためか、

労使の話し合いにより、子の養育をする必要がない期間に限り、一時的・臨時的にその事業主の下で就労することはできます。その場合、就労が月10日(10日を超える場合は80時間)以下であれば、育児休業給付金が支給されます。

一方で、恒常的・定期的に就労させる場合は、育児休業をしていることにはなりませんのでご注意ください。

と例外的な取扱いが認められています。ポイントは「労使の話し合いにより」「一時的・臨時的に」という部分です。

育児休業中の就労が可能となる場合

育児休業中の就労が可能となる場合の大前提として、

  • 従業員が自ら事業主の求めに応じ、合意することが必要

ということです。事業主の一方的な指示により就労させることはできません。

また、事業主は、育児休業中に就労しなかったことを理由として、不利益な取り扱い(人事考課において不利益な評価をするなど)を行うことも禁止です。

そして、育児休業中の就労が可能となるのは、一時的・臨時的な就労のみです。

たまに、月10日(10日を超える場合は80時間)以下の就労なら可能と誤解している人がいますが、厚生労働省による資料「育児休業中の就労について」の中で、以下はダメな事例として掲載されています。

育児休業開始当初より、あらかじめ決められた1日4時間で月20日間勤務する場合や、毎週特定の曜日または時間に勤務する場合

一時的・臨時的就労に該当する例

一時的・臨時的就労に該当する例として、以下が示されています。

なお、これらの事例はあくまで例示であり、これら以外でも一時的・臨時的就労に該当する場合があると付記されています。

  • 育児休業開始当初は、労働者Aは育児休業期間中に出勤することを予定していなかったが、自社製品の需要が予期せず増大し、一定の習熟が必要な作業の業務量が急激に増加したため、スキル習得のための数日間の研修を行う講師業務を事業主が依頼し、Aが合意した場合
  • 労働者Bの育児休業期間中に、限られた少数の社員にしか情報が共有されていない機密性の高い事項に関わるトラブルが発生したため、当該事項の詳細や経緯を知っているBに、一時的なトラブル対応を事業主が依頼し、Bが合意した場合
  • 労働者Cの育児休業期間中に、トラブルにより会社の基幹システムが停止し、早急に復旧させる必要があるため、経験豊富なシステムエンジニアであるCに対して、修復作業を事業主が依頼し、Cが合意した場合
  • 災害が発生したため、災害の初動対応に経験豊富な労働者Dに、臨時的な災害の初動対応業務を事業主が依頼し、Dが合意した場合
  • 労働者Eは育児休業の開始当初は全日を休業していたが、一定期間の療養が必要な感染症がまん延したことにより生じた従業員の大幅な欠員状態が短期的に発生し、一時的にEが得意とする業務を遂行できる者がいなくなったため、テレワークによる一時的な就労を事業主が依頼し、Eが合意した場合

まとめ

今回の記事を書くきっかけとなったのは、

  • 「育児休業期間中でも月10日以下の就労なら問題ない」と社労士に聞いたが本当か?

と、ある企業の方から質問されたためです。

今回の記事で解説したとおり、その回答は「間違い」となります。

その社労士は手続き中心の業務を行っている方で、育児休業給付金が支給されることから「育児休業期間中でも月10日以下の就労なら問題ない」と思い込んでいたのかもしれません。

しかし、もし「一時的・臨時的就労に該当しない」と判断されてしまい、その後育児休業給付が支給されなくなってしまうと、従業員の生活に大きな影響を与えますし、会社との間で大きなトラブルとなります。社労士の軽率な回答によって・・・

労働保険・社会保険の手続きを甘く見ている人がたまにいますが、法令の裏付けがあっての手続きです。手続きの内容から制度を理解してはいけません。

関連:育児休業中の就労について(厚生労働省資料)

なお、育児休業制度は、度重なる法改正の結果、全体像の理解が極めて複雑な難しい制度となっています。ご関心のある方は以下の記事をご参考ください。

関連:育児休業の対象者・期間・賃金等の基礎知識

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