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介護休業の条件・期間・賃金・手当の基礎知識

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介護休業の条件・期間・賃金・手当などに関する基礎知識を解説します。

介護休業とは

介護休業とは、要介護状態にある対象家族を介護するために従業員が取得できる休業制度です。

育児介護休業法 第11条(介護休業の申出)
労働者は、その事業主に申し出ることにより、介護休業をすることができる。

法律による制度であるため、従業員から申出があれば、会社は、介護休業を付与しなければならず拒否できません

育児介護休業法 第12条(介護休業申出があった場合における事業主の義務等)
事業主は、労働者からの介護休業申出があったときは、当該介護休業申出を拒むことができない。

介護休業と介護休暇の違い

今回解説するのは、介護「休業」です。

介護「休暇」という似た名称で別の制度があるためややこしいのですが、休業と休暇で言葉を間違えないように注意してください。

介護休業と介護休暇の違いを端的に整理すると以下のとおりです。

  • 介護休業:93日を限度とした休業(育児・介護休業法第11条)
  • 介護休暇:年5日(2人以上の場合は年10日)を限度とした休暇(育児・介護休業法第16条の5)

介護休業の条件

介護休業の申出ができる従業員の条件

介護休業の申出は、正社員やパートなど雇用形態にかかわらず、原則としてすべての従業員ができますが、以下に該当する従業員はできません。

  1. 日雇い労働者
  2. 次のいずれかに該当する有期契約労働者
    • 入社1年未満
    • 介護休業の開始予定日から起算して93日を経過する日から6か月を経過する日までの間に、労働契約(更新される場合には更新後の契約)期間が満了することが明らかな場合
  3. 労使協定で定められた一定の労働者

「労使協定で定められた一定の労働者」というのは以下に該当する従業員です。ただし、以下の条件に該当していても、会社が従業員代表と労使協定を締結していなければ、介護休業の適用から除外することはできません

  • 申出の日から93日以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

介護休業の対象となる家族の範囲

介護休業とは、要介護状態にある対象家族を介護するための休業制度です。要介護状態とは、

  • 負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態

のことで、対象家族の範囲は以下のとおりです。

  • 事実婚を含む配偶者
  • 父母
  • 配偶者の父母
  • 祖父母、兄弟姉妹、孫(同居・扶養要件はH29.1に撤廃)

介護休業の期間

介護休業ができるのは、対象家族1人につき3回まで、通算して93日を限度として、原則として従業員が申し出た期間です

従業員は、介護休業を開始しようとする日の2週間前までに申し出なければなりません。

会社として直前に申出をされても困るという場合があります。そのため、育児・介護休業法では、介護休業開始日の2週間以内に申出を受けた場合は、会社は一定の範囲で休業開始日を指定できるとされています。

例として以下の図をご覽ください。

7/1の申出の場合、会社は7/15から必ず介護休業を取得させる必要があります。

ただし、従業員本人の希望は7/6であり、申出は5日前です。この場合、会社は7/6から7/15までの期間を指定できます。

ただし、当然ですが介護休業そのものを拒否することはできません。

会社が介護休業開始日を指定する場合は、原則として、申出があった日の翌日から起算して3日以内(例えば、7月1日に申出があった場合は、7月4日まで)に指定する日を記載した書面を従業員に交付する必要があります

なお、介護休業の実際の取得期間については、以下の記事でデータをまとめています。

関連:実際の介護休業の取得期間:厚生労働省データ令和4年度

介護休業中の賃金

育児休業と同様に、介護休業を取得する従業員に対して、会社は賃金を払う義務はありません

つまり、有給でも無給でも構わないということであり、中小企業に限らず、大企業でも賃金なしという会社は多い印象です。

それもあって、介護休業ではなく年次有給休暇を利用しているという声を聞いたこともあります。

ただし、有給・無給は会社の裁量次第ですが、後々のトラブルを防ぐために、就業規則にきちんと規定しておくことが大事です

介護休業中の手当(介護休業給付)

育児休業と同様に、介護休業を取得している従業員に対しては、雇用保険による介護休業給付が支給されます。

介護休業給付の支給額は以下の算式によります。大まかイメージとして給料の2/3程度です。

  • 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%

ただし、介護休業給付を受けるためには以下の受給要件を満たす必要があります。

  • 介護休業を開始した日前2年間に被保険者期間が12か月以上必要
  • ただし、介護休業を開始した日前2年間に被保険者期間が12か月ない場合であっても、当該期間中に本人の疾病等がある場合は、受給要件が緩和され、受給要件を満たす場合がある

なお「12か月」という要件ですが、これは介護休業開始日の前日から1か月ごとに区切った期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日ある月を1か月とみなします

また、有期契約労働者が介護休業給付を受給するためには、上の要件に加えて、以下の要件も満たす必要があります。

  • 介護休業開始時に、同一の事業主の下で1年以上雇用が継続しており
  • かつ、介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6か月を経過する日までに、その労働契約が満了することが明らかでないこと

参考:Q&A~介護休業給付~厚生労働省

まとめ

一時期、育児休業関係のハラスメントが話題になりましたが、日本はすでに「超高齢社会」に突入しており、今後の予測では、2025年に約30%、2060年に約40%が65歳以上の高齢者という状況になると言われています。

40代、50代で管理職や専門職として会社にもっとも貢献してくれる世代が、親の介護という問題を抱えたとき、

  • 退職せざるを得ない会社なのか
  • それとも、介護と両立しながら働ける会社なのか

という点は真剣に悩むことになります。人手不足・採用難の時代であるからこそ、会社は真剣に従業員の介護の問題について考えておくべき時代であり、会社独自の施策を検討しておくことも必要でしょう。

実際、当事務所が依頼を受けて就業規則の説明会を行うと、従業員から最も多く質問を受けるのが休暇・休業制度です

従業員の関心が高い内容であるため、運用面を意識した就業規則をきちんと整備しておきましょう。

なお、最新の介護休業取得状況の割合、実際の介護休業の日数については、以下の記事をご参考ください。

関連:介護休業の取得状況(厚生労働省統計まとめ)

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