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時間外労働の上限規制が始まりましたが、何が労働時間に該当する・しないかを理解しておくことは重要です。研修時間が労働時間に該当するケース・しないケースについて解説します。
まず、労働時間の定義については以下の記事で解説していますが、ポイントは
- 使用者の指揮命令下にある時間かどうか
これが大きな判断基準になります。
関連:労働時間とは? 残業時間の対策の前に労働時間の定義に要注意!
それでは、研修時間は労働時間に該当するのでしょうか、これはその研修が会社により義務(強制)なのか、任意なのかによって異なります。
研修時間が労働時間に該当する場合
まず、労働安全衛生法に基づく安全衛生教育などの法定の研修については、以下の行政解釈(昭47.9.18基発第602号)で示されています。
- 事業者の責任において実施されなければならないものであり・・・安全衛生教育の実施に要する時間は労働時間
また、明確に会社が義務としていなくても参加しないことで不利益な取り扱いをするような、実質的に義務とみなされる研修も労働時間に該当します。
研修時間が労働時間に該当しない場合
一方、業務終了後に、有志で趣味的なサークル活動を行う場合は当然労働時間に該当しませんし、業務に関連する研修であっても自由参加のものであれば労働時間には該当しないことが、以下の行政解釈(平11.3.31基発第168号)で示されています。
- 労働者が使用者の実施する教育に参加することについて、就業規則上の制裁等の不利益取扱による出席の強制がなく自由参加のものであれば、時間外労働にはならない。
ここでのポイントは、就業規則上の制裁等の不利益取扱による出席の強制がなく自由参加 かどうかです。
例えば、よくある事例として、会社が資格取得を従業員に促し、資格を取得した従業員に手当を措置するなどの場合でも、
- 会社による強制がなく、
- 資格試験の受験や研修を受講しなくても不利益を課すことがない
といった場合は、資格取得のための研修時間や勉強時間は労働時間には該当しません。
実際、会社がWeb学習を奨励した時間が労働時間に該当するかどうか争われた事案では、以下の判決が示されています(NTT西日本ほか事件、大阪高裁・平22.11)。
- Web学習は、パソコンを操作してその作業をすること自体が、会社の利潤を得るための業務ではない
- むしろ、各従業員個人個人のスキルアップのための材料や機会を提供し、各従業員がその自主的な意思によって作業をすることによってスキルアップを図るもの
- 会社は自己研鑽のためのツールを提供して推奨しているにすぎず、業務の指示とみることはできない
- そのためWeb学習に従事した時間があったとしても、それを会社の指揮命令下においてなされた労働時間と認めることはできない
まとめ
今回解説した研修時間と労働時間の問題については、特に最近ご相談が多い内容です。
従業員のキャリアアップ向上、そして離職防止対策も兼ねて、積極的に社外研修を従業員に受講させている会社は顧問先でも増えています。
ただ、業務命令による社外研修であれば労働時間に該当し、所定労働時間外に行えば残業代の対象にもなり、払っていなければ未払い残業代として会社の労務リスクにもなるため、良かれと思って行うことでも正確な法知識は必須です。
- 毎年のように改正される労働法令への対応に頭を悩ませている
- 総務や経理などの他の業務を兼務しているので、人事労務業務だけに時間を割けない
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