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年次有給休暇は無給ではなく有給であるため、賃金の支払義務がありますが、賃金額の決め方は法律により3つの方法が認められています。
年次有給休暇の賃金
従業員が年次有給休暇を取得した際に支払う賃金について、会社は以下の3つの方法から選択することができます(労働基準法39条7項)。
- 平均賃金
- その日の所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
- 健康保険法による標準報酬日額に相当する金額(労使協定が必要、労働基準監督署への届出義務はなし)
ただし、行政通達(昭和27年9月20日基発第675号)では「年次有給休暇の賃金の選択は、手続簡素化の見地より認められたものであるから、労働者各人についてその都度使用者の恣意的選択を認めるものではない」と解釈を示し、以下の順守を求めています。
- 原則は「1の平均賃金による方法」または「2のその日の所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」とすること
- 3つの方法のどれを選択するかは、就業規則その他において明確に規定すること、そしてその規定に従うこと
つまり、Aさんには「2の通常の賃金」で支払うが、Bさんの場合は平均賃金で計算した方が安くなるので「1の平均賃金」で支払うといった個別の選択をしてはダメということです。
年次有給休暇の賃金の計算方法
「2のその日の所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」を選択したときの計算方法も、法令により以下のとおり定められています(労働基準法施行規則第25条)。
- 時給制の場合は、時給金額にその日の所定労働時間数を乗じた金額
- 日給制の場合は、その金額
- 週給制の場合は、その金額をその週の所定労働日数で除した金額
- 月給制の場合は、その金額をその月の所定労働日数で除した金額
- 月給・週給以外の一定の期間によって定められた賃金は、前の項目に準じて算定した金額
- 出来高払制その他の請負制によって定められた賃金は、その賃金算定期間計算された賃金の総額を、当該賃金算定期間における総労働時間数で除した金額に、当該賃金算定期間における1日平均所定労働時間数を乗じた金額
- 労働者の受ける賃金が前の項目の2つ以上の賃金よりなる場合には、その部分について各項目によってそれぞれ算定した金額の合計額
なお、従業員が年次有給休暇を取得した際に、毎回計算する必要はありません。
行政通達(昭和27年9月20日基発第675号)でも以下のように示されており、就業規則に「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を支払う」と定めておけば大丈夫です。
計算事務手続の簡素化を図る趣旨であるから、日給者、月給者等につき、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を支払う場合には、通常の出勤をしたものとして取り扱えば足り、施行規則に定める計算をその都度行う必要はない。
まとめ
従業員が年次有給休暇を取得した日に対して欠勤として控除している会社は論外ですが、従業員が年次有給休暇を取得した際について
- 賃金の支払方法が複数ある
- 賃金の支払方法を就業規則にきちんと定めておかなければならない
ことを知らない会社は意外と存在します。
年次有給休暇の取得期間や取得手続きはトラブルになりやすく、また賃金の問題にも関係するため、就業規則の規定が適切か、規定に沿って正しく運用されているかチェックしておきましょう。
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