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妊娠による軽易な業務への転換:規制・行政解釈・裁判例の解説

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妊娠に伴う軽易な業務への転換とはどのようなものか、法律と解釈、参考になる裁判例を紹介します。

軽易な業務への転換

労働基準法第65条第3項では、妊娠中の女性が請求した場合、他の軽易な業務に転換させなければならないと規定されています。

労働基準法第65条(産前産後)第3項
使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。

ポイントは「請求が必要であること」「転換の義務があること」の2点です。逆に言えば、請求がなければ転換する必要はありません。

零細企業における対応

この軽易な業務への転換については、「大企業ならまだしも、零細企業では転換させることができるような軽易な業務はない」と言われることもあります。

この点について行政通達では「新たに軽易な業務を創設して与える義務までは課していない」と解釈を示しています。

軽易業務転換の趣旨
労働基準法第65条第3項は原則として女子が請求した業務に転換させる趣旨であるが、新たに軽易な業務を創設して与える義務まで課したものではないこと。 (昭61.3.20基発第151号、婦発第69号)

軽易な業務への転換による降格は違法

また「妊娠中の軽易な業務への転換をきっかけとして降格させることは原則として違法」とした最高裁判決は知っておきましょう。

裁判所ウェブサイトによる裁判要旨は以下のとおり(読みやすいように一部修正)。

女性労働者につき労働基準法65条3項に基づく妊娠中の軽易な業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は、原則として「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」9条3項の禁止する取扱いに当たるが、

  • 当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき、
  • または事業主において当該労働者につき降格の措置を執ることなく軽易な業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって、上記措置につき同項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するとき

は、同項の禁止する取扱いに当たらない。

上の要旨を見ると、納得できる部分がある一方で、中小零細企業の労務管理の実態を考えると厳しいと感じる部分もあります。

例えば、「自由な意思に基づいて降格を承諾」というのが現実的に可能か、法律の趣旨に反しない範囲で「特段の事情が存在」というのがどのように判断されるのか悩ましいところです。

ただ、この判決全文を見ていくと、「職務内容の実質が判然としない」、「育児休業を終えて職場復帰した後も降格状態が続いている」といった記述もあるので、実態の労務管理で今後の方針を考える上でのヒントは示されていると考えています。

なお、産前産後の休業をはじめ、法定の休暇・休業については以下の記事でまとめていますのでご参考ください。

関連:【まとめ】意外と多い法定休暇の種類と義務の内容

参考:裁判所ウェブサイト・最高裁判例(平成26年10月23日)

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