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令和3年(2021年)4月1日から、70歳までの就業機会の確保、いわゆる「高年齢者就業確保措置」が努力義務となります。
高年齢者就業確保措置の基本的な内容は「70歳までの高年齢者就業確保措置の基礎知識」で紹介しましたが、今回は、雇用によらない措置、創業支援等措置について解説します。
創業支援等措置とは
企業が努力義務として求められる70歳までの「高年齢者就業確保措置」には、雇用と非雇用の2つの選択肢があります。
そのうち、非雇用、つまり雇用によらない措置として認められる以下の2つの措置が創業支援等措置です。
- 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
- 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
- 事業主が自ら実施する社会貢献事業
- 事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
そして、高年齢者就業確保措置として創業支援等措置のみを導入する際には、後述するとおり、過半数労働組合等の同意を得るなどのいくつかの手続きが必要です。
創業支援等措置が求める社会貢献事業とは?
高年齢者雇用安定法における「社会貢献事業」とは、不特定かつ多数の者の利益に資することを目的とした事業のことです。
特定の事業が「社会貢献事業」に該当するかどうかは、事業の性質や内容等を勘案して個別に判断されることになります。
例えば、以下のような事業は、高年齢者雇用安定法における「社会貢献事業」に該当しないことが厚生労働省により示されています。
- 特定の宗教の教義を広め、儀式行事を行い、信者を教化育成することを目的とする事業
- 特定の公職の候補者や公職にある者、政党を推薦・支持・反対することを目的とする事業
創業支援等措置が求める出資(資金提供)等とは?
自社以外の団体が実施する社会貢献事業に従事できる制度を選択する場合、自社から団体に対して、
- 事業の運営に対する出資(寄付等を含む)
- 事務スペースの提供
など社会貢献活動の実施に必要な援助を行っている必要があります。
創業支援等措置が求める団体とは?
事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業の「団体」は、公益社団法人に限られません。
- 委託、出資(資金提供)等を受けていて、
- 社会貢献事業を実施している(社会貢献事業以外も実施していても構いません。)
のであれば、どんな団体でも「団体」となることができます。
なお、創業支援等措置として、事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業を選択する場合、企業は団体との間で、当該団体が高年齢者に対して社会貢献活動に従事する機会を提供することを約する契約を締結する必要があります。また、この契約は、書面により締結することが望ましいとされています。
創業支援等措置を実施する場合に必要な手続き
創業支援等措置を実施する場合には、以下の手続きを行う必要があります。
- 計画を作成する
- 過半数労働組合等の同意を得る
- 計画を周知する
1. 計画を作成する
創業支援等措置を講ずる場合には、以下の事項を記載した計画を作成する必要があります。
- 高年齢者就業確保措置のうち、創業支援等措置を講ずる理由
- 高年齢者が従事する業務の内容に関する事項
- 高年齢者に支払う金銭に関する事項
- 契約を締結する頻度に関する事項
- 契約に係る納品に関する事項
- 契約の変更に関する事項
- 契約の終了に関する事項契約の解除事由を含む)
- 諸経費の取り扱いに関する事項
- 安全及び衛生に関する事項
- 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
- 社会貢献事業を実施する団体に関する事項
- 上記のほか、創業支援等措置の対象となる労働者のすべてに適用される事項
2. 過半数労働組合等の同意を得る
1の計画について過半数労働組合等の同意を得る必要があります。
過半数労働組合等とは、人事労務の実務を行っている方であれば当然知っておくべき内容ですが、
- 労働者の過半数を代表する労働組合がある場合にはその労働組合
- 労働者の過半数を代表する労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者
を指します。なお、同意を得ようとする際には、過半数組合等に対して、
- 労働基準法等の労働関係法令が適用されない働き方であること
- そのために1の計画を定めること
- 創業支援等措置を選択する理由
を十分に説明することが重要です。
なお、高年齢者就業確保措置として、創業支援等措置だけでなく、雇用による措置の両方を講じる場合は、雇用の措置により努力義務を達成したことになるため、創業支援等措置に関して過半数労働組合等との同意を必ずしも得る必要はありません。
もちろん、高年齢者雇用安定法の趣旨を考えると、両方の措置を講ずる場合も同意を得ることが望ましいとされています。
3. 計画を周知する
2の同意を得た計画について、次のいずれかの方法により労働者に周知する必要があります。
- 常時当該事業所の見やすい場所に掲示するか、または備え付ける
- 書面を労働者に交付する
- 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずるものに記録し、かつ、当該事業所に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置する(例:電子媒体に記録し、それを常時モニター画面等で確認できるようにするなど)
まとめ
今回解説した内容以外にも、創業支援等措置を講ずる場合には様々な留意点があります。
65歳までの雇用確保措置に比べると、内容・手続きが複雑すぎると感じるかもしれませんが、それは創業支援等措置が雇用によらない措置であるためです。
70歳までの就業機会の確保を図るという方針の上で、「就業継続の可能性」「就業時の待遇の確保」を雇用と同等の事業主が負う責務の程度の均衡を図ったというのが、職業安定分科会雇用対策基本問題部会による議論の結論です。
雇用による措置であれば、解雇権濫用規制・雇止め規制・最低賃金などの労働関係法令による規制が及びます。
しかし、雇用によらない措置を行う場合は労働関係法令による規制が及ばないため、雇用と同等の責務を事業主が負うように設計された制度と考えると、複雑になるのは仕方ないところでしょう。
いずれにしても、企業が創業支援等措置の導入を選択する場合は、社労士などの専門家の協力を得ながら進めていく方が良いでしょう。
なお、シルバー人材センターへの登録や、再就職・ボランティアのマッチングを行う機関への登録などは、高年齢者の就業先が定まらないため、高年齢者就業確保措置を講じたことにはならないとされているのでご注意ください。
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