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1年単位の変形労働時間制で休日の振替は認められるか?

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「1年単位の変形労働時間制」の運用時には様々な制約があり、休日の振替が可能かという点について、行政解釈を踏まえて解説します。

1年単位の変形労働時間制における休日の振替の可否の原則

特定の季節(夏季・冬季)、特定の月に業務が忙しい場合の制度として適している「1年単位の変形労働時間制」は、

  • あらかじめ業務の繁閑を見込んで、それに合わせて労働時間を配分するもの

というのが制度の大前提です。そのため、会社が一度組んだシフトを業務の繁閑に応じて任意に変更することは制度として想定されておらず、認められてもいません

1年単位の変形労働時間制の導入に際して、労使協定まで締結するわけですから当然の考え方であり、以下のとおり、行政解釈(平成11年1月29日付け基発45号)においても明確に示されています。

  • 対象期間中の労働日及び労働日ごとの労働時間をより的確に特定し、時間外・休日労働を減少させることができるよう、対象期間を1箇月以上の期間ごとに区分して労働日及び労働日ごとの労働時間を特定することができることとしたものであること。
  • このような趣旨に照らして当然のことながら、従来と同様特定された労働日及び労働日ごとの労働時間は変更することができないものであること。

そして後日変更することを可能とする労使協定を締結したり労使合意を成立させていたとしても、変形期間の途中で変更することはできないことも行政解釈(昭和63年3月14日付け基発150号・婦発47号、平成6年3月31日付け基発181号)で示されている点は要注意です。

1年単位の変形労働時間制の導入が否定される可能性も

1年単位の変形労働時間制を導入していながら、会社が任意に労働日や労働時間を変更していると、最悪の場合、以下の行政解釈にあるように、制度の適用自体を否定される可能性があります(平成6年1月4日付け基発1号、平成27年3月31日付け基発0331第14号)。

  • 1年単位の変形労働時間制を採用する場合には、労使協定により、変形期間における労働日及び当該労働日ごとの労働時間を具体的に定めることを要し、使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更するような制度は、これに該当しないものであること。

1年単位の変形労働時間制の適用を後になって否定されてしまうと、実務的に、割増賃金の再計算、最悪の場合、未払い賃金リスクなど大きな影響が生じることになるため要注意です

1年単位の変形労働時間制における休日の振替の例外

このように、1年単位の変形労働時間制の趣旨から考えると、休日の振替とは特定された労働日の変更に該当するため、原則として認められません(平成6年5月31日付け基発330号、平成9年3月28日付け基発210号、平成11年3月31日付け基発168号)。

しかし、以下の行政解釈により、一定の条件の下であれば、休日の振替は認められています。

  • 労働日の特定時に予期しない事情が生じ、やむを得ず休日の振替を行わなければならなくなることも考えられるが、そのような休日の振替までも認めない趣旨ではない

1年単位の変形労働時間制において休日の振替が可能となる条件

1年単位の変形労働時間制において休日の振替が可能となる一定の条件というのが以下のとおりです。

  • 就業規則で休日の振替がある旨の規定を設け、あらかじめ休日を振り替えるべき日を特定して振り替えること
  • 対象期間(特定期間を除く)において、連続労働日数が6日以内となること
  • 特定期間においては、1週間に1日の休日が確保できる範囲内にあること

特に、あらかじめ振り替える休日を特定しておくという点には注意してください。以下の記事で詳しく解説していますが、多くの会社が振替休日と代休を混同しています。

関連:振替休日と代休の違い:運用により賃金額が異なるので要注意

1年単位の変形労働時間制において休日の振替を行う際の注意点

1年単位の変形労働時間制において休日の振替を行う際、「あらかじめ8時間を超えて労働を行わせることとして特定していた日」と振り替える場合は、注意が必要です。

この場合、当初の休日は労働日として特定されていなかったものとなり、労働基準法第32条の4第1項に照らし、当該日に8時間を超える労働を行わせることとなった場合には、その超える時間については時間外労働とすることが必要となります。

例えば、1年単位の変形労働時間制を利用して1日の所定労働時間を9時間としていた日と休日の振替を行った場合、

  • 労働日(1日の所定労働時間を9時間としていた日) → 休日
  • 休日 → 労働日( 1日の所定労働時間は8時間)

となり、当初休日であった振り替えられた労働日に、もし9時間働かせた場合は1時間の時間外労働として割増賃金を支払わなければならないということです。

参考:労働時間・休日(Q&A)大阪労働局

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