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メンタルヘルスと企業業績・2年遅れて利益に負の影響(研究結果)

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「従業員がうつ病になった」と経営者から慌てて相談があったりしますが、うつ病は、日本では約15人に1人が一生のうちに一度はかかる病気と言われているほど、身近な病気です(厚生労働省「こころの耳」)。

うつ患者がこれまで周りにいなかったとしても、今後ますます身近な問題となる可能性は高いです。

ただ、経営者として切実に感じるのは、やはり売上や利益との関係でしょう。

そこで今回は「企業における従業員のメンタルヘルスの状況と企業業績ー企業パネルデータを用いた検証」という論文を引用し、メンタルヘルスと企業業績に関する興味深い研究結果をご紹介します。

メンタルヘルスの状況

  • 年齢層別には、20~30歳代の若年層で顕著に高くなっている
  • 全年齢平均のメンタルヘルス休職者比率を見ると、従業員300-999人規模でやや高くなっており、従業員1000人以上規模では低くなっている
  • 従業員規模100-299人の企業では、メンタルヘルス退職者比率が顕著に高くなっている
  • 情報通信業で顕著に高くなっており、卸小売業では低くなっている
  • 週労働時間が長くなるほど、メンタルヘルス休職者比率が高くなる傾向がある
  • 産業保健スタッフの雇用やストレス状況の把握など、高いコストが予想されるメンタルヘルス施策の導入率は相対的に低い
  • フレックスタイム制度やWLB推進組織の設置によって低くなる可能性が一部でみられた

補足すると、WLBとは「Work Life Balance:ワークライフバランス」、日本語では仕事と生活の両立と訳されているものです。

メンタルヘルス対策に有効な施策

  • メンタルヘルス施策については、休職者比率を低める大きな効果はみられなかった
  • しかし、衛生委員会などでのメンタル対策審議やストレス状況などのアンケート調査、職場環境などの評価および改善など、個別施策によってはメンタルヘルス対策として有効なものもあった

まさに、この2点目が、労働安全衛生法によって義務づけられている衛生委員会の活動やストレスチェックに相当します。

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メンタルヘルス休職者比率は、約2年後に売上高利益率に負の影響を与える

そして、経営者にとって最も切実な利益への影響という点について、研究結果によると、

  • メンタルヘルス休職者比率は、2年程度のラグを伴って売上高利益率に負の影響を与える可能性が示された

とされています。

すぐに影響が出るのであれば、迅速な対応ができますが、気づいたときには手遅れかもしれません。

最後に、本研究結果では

  • 休職者が多い企業ほど業績を押し下げているとの結果が示されたことは、水準自体は低くてもメンタルヘルスの休職者比率が労働慣行や職場管理の悪さの代理指標あるいは先行指標になっていると解釈することもでき、メンタルヘルスの問題が企業経営にとって無視できないものとなっているといえよう

と締められています。

職場環境の改善は、誰しも重要性を感じる一方で、何か具体的な問題が起きない限り緊急性を感じないため、優先順位が低くなってしまう、いわゆる第二象限の問題(重要度は高いが緊急度は低い)として扱われます

ただ、本研究結果が示唆するように、メンタルヘルスの問題が先行指標になり、その後利益に負の影響が生じる可能性があるなら、そのときに適切な対応を行っていなければ、手遅れになるかもしれません。

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