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育児休業制度は、度重なる法改正の結果、全体像の理解が極めて複雑な難しい制度となっています。
理解が難しい原因の1つが、原則に対する例外措置の多さであり、今回はその1つである育児休業期間の延長制度として、1歳6か月までの育児休業、2歳までの育児休業について解説します。
育児休業の原則の期間
育児休業の期間は、原則として、1人の子につき1回、子が出生した日から子が1歳に達する日(誕生日の前日)までの間で、労働者が申し出た期間です。
つまり、育児休業の期間は、あくまで従業員の申出次第ということです。
1歳に達する日の前日までの約1年なのか、それとも1か月なのか、2週間なのか、結局は従業員の申し出た期間によるということです。
1歳6か月までの育児休業
原則は前述のとおりですが、以下の条件のいずれかを満たすことで、子が1歳6か月に達するまで育児休業の期間を延長することができます。
- 保育所の入所を希望しているが、入所できない場合
- 子の養育を行っている配偶者であって、1歳以降、子を養育する予定であった者が、死亡、負傷、疾病等の事情により子を養育することが困難になった場合
なお、「保育所の入所を希望しているが、入所できない場合」の要件は、以下の行政通達(平成21年12月28日付け職発第1228第4号・雇児発第1228第2号)によって示されています。
「保育所」とは、児童福祉法(昭和22年法律第164号)に規定する保育所をいうものであり、いわゆる無認可保育施設は含まれないものであること。
「保育の実施を希望し、申込みを行っているが、当面その実施が行われないとき」とは、市町村に対して保育の申込みを行っており、市町村から、少なくとも、再度の育児休業に係る育児休業期間の初日において保育が行われない旨の通知がなされている場合をいうものであること。
2歳までの育児休業
さらに、子が1歳6か月に達した時点でも保育所に入れない等の場合、再度申出をすることにより、育児休業期間を最長2歳まで延長できます。
なお、これらの育児休業の延長の場合、育児休業給付の支給期間も併せて延長されます。
以上をまとめると以下の図のようになります。
ここで注意していただきたいのは、原則の育児休業期間(子が1歳に達する日(誕生日の前日)まで)を延長するときに、1歳6か月までにするか、2歳までにするかという選択ではなく、
- 原則の育児休業期間の延長をする場合は、1歳6か月まで
- 1歳6か月に達した時点でも保育所に入れない等の場合に、2歳まで
育児休業を延長できると2段階の制度となっている点にご注意ください。
たまに、原則の育児休業期間の終了間際になって「2歳まで延長したい」という申出をする従業員がいますが、それは不可能であり、あくまで1回目の延長の場合は1歳6か月までです。
育児休業期間の延長制度の利用状況
育児休業期間の延長制度の利用状況は、以下の記事で解説していますが、
- 32.9%と、3人に1人が利用
- ただし、利用しているのは女性のみ
となっています。
関連:育児休業の延長利用状況は32.9%:厚生労働省データ令和3年度
令和4年10月からの改正点:育児休業開始日の柔軟化
令和4年10月から改正施行される育児・介護休業法の内容としては、
- 出生時育児休業:産後パパ育休
- 育児休業の分割取得
が大きな改正点ですが、1歳6か月・2歳までの育児休業期間の延長制度についても、運用上注意すべき改正点があります。それが、
- 育児休業の開始日の柔軟化
であり、以下の図の1歳以降の部分を見ていただく方が理解が早いでしょう。
これまでの育児休業の延長では、
- 開始時点が、1歳または1歳6か月時点
に限定されていました。そのため、夫婦が途中で育児休業を交代することができませんでした。
しかし、令和4年10月から育児休業の開始日が柔軟化されることによって、育児休業期間の延長中であっても、夫婦が途中で育児休業を交代することができるようになります。
まとめ
法改正に伴い、会社の実務的な対応としては、まず就業規則(育児・介護休業規程)の見直しが必要になります。
ただ、それ以上に重要なのが運用です。
育児休業開始日の柔軟化によって、夫婦が途中で育児休業を交代できるようになりますが、それはあくまで従業員からのそのときの要望によって発生します。
- 夫婦がともに同じ会社で働いている場合
- 夫婦が別々の会社で働いている場合
の2パターンがありますが、夫婦が別々の会社で働いている場合、夫婦が途中で育児休業を交代できるようになると、育児休業の開始・終了日の設定だけでも、夫婦の希望、夫の会社・妻の会社の業務の調整が必要になります。
夫婦、夫の会社、妻の会社で、一気に話し合いができると良いのでしょうけど・・・これに、育児休業開始予定日の繰上げ、育児休業終了予定日の繰下げの希望もあると、さらに調整が必要になります。
会社としては、育児休業の全体像の理解が不可欠であることにご留意ください。
- 毎年のように改正される労働法令への対応に頭を悩ませている
- 総務や経理などの他の業務を兼務しているので、人事労務業務だけに時間を割けない
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