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常時使用する労働者とは?社労士でも混同する「常時雇用」「常用雇用」などの違い | 早見表で整理

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人事労務の実務において、法令を正確に理解することは欠かせません。しかし、その中でも見落とされがちなのが、この法令は「誰に適用されるのか」という対象者の問題です。

実は、この点は社労士などの専門家でも解釈を間違えていることがあります。そのため、今回は、各法律の定義を早見表で整理したうえで、間違えやすいポイントを具体的に解説します。

「常時使用する労働者」の意味は法律ごとに異なる

まず結論から書くと、

  • 「常時使用する労働者」「常時雇用労働者」「常用雇用労働者」の違いは、各法律の定義・解釈によって決まる

ということです。身も蓋もないように聞こえるかもしれませんが、これは仕方のないことです。法律ごとに目的が異なるため、同じような言葉でも定義される内容が変わってくるのです。

「常時使用する労働者」と聞くと正社員をイメージするかもしれませんが、それは正確ではありません。パートタイム労働者のような短時間労働者を含む場合もあります。

そのため、これらの用語を理解するには、次の2点を1つずつ確認する必要があります。

  • それぞれの法律でどのように定義されているのか?
  • 定義が明確にない場合、どのように解釈されているのか?

法律別「常時使用する労働者」早見表

詳細な解説の前に、全体像を早見表としてまとめておきます。

用語 短時間労働者の扱い
常時使用する労働者(労働基準法) 労働時間を問わず、常態的に働く全員を算入
常時使用する労働者(労働安全衛生法) 原則、労基法と同じ(常態として使用する全員)
常時使用する短時間労働者(安衛法:定期健診の対象) 無期または1年以上見込み+週所定の概ね3/4以上
常時雇用する労働者(障害者雇用促進法:通称「常時雇用労働者」「常用雇用労働者」) 週20時間以上が要件
常時雇用される労働者(労働者派遣法) 2015年改正で役割を終えた用語、現在は「無期雇用派遣/有期雇用派遣」に整理

短時間労働者であっても、常態的に働くのであればカウントするのか、それとも具体的な要件が定まっているのか——このようにきちんと要件を確認する必要があります。

同じような表現であっても、法律によって意味が違うんですね。なんだか混乱しそうです…。
Qちゃん
A先生
はい。だからこそ我々社労士は業務を行う上で、一次情報である法令を確認するのが基本なんです。

それでは、法律ごとに詳しく見ていきます。

労働基準法における「常時使用する労働者」

労働基準法では「常時10人以上の労働者」を使用する使用者に対して就業規則の作成義務を課しています。

東京労働局では、就業規則の作成義務に関する解説として以下の図を示しています。

上の図の一番下を見るとよくわかりますが、正規社員が少なくても、パートタイム労働者やアルバイトを含めて常態的に10人以上となっていれば、就業規則の作成義務がある、つまり「常時10人以上の労働者」に相当するということです。

ここで重要なのは、週○時間以上といった労働時間の違いは考慮されないという点です。

週40時間勤務の正社員も、週20時間勤務のパートも、常態的に働いているのであれば、等しく1人としてカウントされます。労働時間の長短は関係ありません。

この点は、後述する障害者雇用促進法の「常時雇用労働者」のように、個々の労働者の労働時間を要件とする用語との大きな違いです。

まとめると、労基法の「常時使用する労働者」は次のように整理できます。

  • 常時使用する労働者とは、常態として働く人数のことであり、正規社員のほか、パートタイム労働者やアルバイトなど、会社に雇用されるすべての人が含まれる。
では、普段は8人で、繁忙期だけ2〜3人増えて10人を超える場合はどうなるんですか?
Qちゃん
A先生
良い質問ですね。ポイントは「常時」という言葉です。繁忙期の期間によりますが、瞬間的に10人を超えるだけなら、常態として10人以上とはいえないでしょう。

労働安全衛生法における「常時使用する労働者」

次に、労働安全衛生法の「常時使用する労働者」の定義・解釈を解説します。

労働安全衛生法は、もともと労働基準法から分かれて制定された法律です。そのため、労基法と共通する部分が多くあります。

労働安全衛生法における「常時使用する労働者」については、行政通達(昭和47年9月18日基発第602号)が以下の解釈を示しています。

「常時当該各号に掲げる数以上の労働者を使用する」とは、日雇労働者、パートタイマー等の臨時的労働者の数を含めて、常態として使用する労働者の数が本条各号に掲げる数以上であることをいうものであること。

労働安全衛生法では、常時使用する労働者の人数に応じて、安全衛生に関する資格者の選任を義務づけています。

例えば、衛生管理者や産業医の選任義務が課される「常時50人」とは、正社員だけで50人という意味ではありません。日雇労働者やパートタイマーなどの臨時的労働者を含めて、常態として使用する労働者の数が50人以上ということです。

この考え方は、労働基準法と同じです。

定期健康診断の対象となる「常時使用する労働者」に要注意

ここからは、社労士などの専門家でも間違えやすい点を解説します。

労働安全衛生法第44条では「常時使用する労働者」に対して定期健康診断を義務づけています。

労働安全衛生法第44条(定期健康診断)
事業者は、常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。

パート労働者等の短時間労働者が「常時使用する労働者」に該当するか否かについては、行政通達(平成19年10月1日基発第1001016号)で解釈が示されています。

労働安全衛生法の一般健康診断を行うべき「常時使用する短時間労働者」とは、次の(1)及び(2)のいずれの要件をも満たす者であること。

(1) 期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年(労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第45条において引用する同規則第13条第1項第2号に掲げる業務に従事する短時間労働者にあっては6月。以下この項において同じ。)以上である者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者を含む。)であること。

(2) その者の1週間の労働時間数が当該事業場において、同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。 なお、1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3未満である短時間労働者であっても上記の(1)の要件に該当し、1週間の労働時間数が、当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数のおおむね2分の1以上である者に対しても一般健康診断を実施することが望ましいこと。

そもそも、上の文章についても、専門家でなければ理解が難しい文章かもしれません。

しかし、問題はそれだけではありません。社労士のような専門家であっても、次のように考えてしまう人がいるのです。

  • 「通常の労働者の所定労働時間の4分の3未満」の労働者は「常時使用する労働者」に該当しない、と書いてある。
  • だから「4分の3未満」の労働者は、労働安全衛生法全体の適用においても「常時使用する労働者」に該当しない。

この解釈は誤り、大間違いです。

ここで示されている「3/4以上」という基準は、あくまで定期健康診断の対象となる「常時使用する労働者」を判断するための要件であって、労働安全衛生法全体に適用されるものではありません。

つまり、衛生管理者や産業医の選任義務における人数のカウント(常時50人など)では、3/4未満の短時間労働者も常態として使用していれば算入されます。一方、定期健診の対象判断では3/4以上という個別要件が課される——同じ「常時使用する労働者」という言葉でも、場面によって意味が変わるのです。

同じ法律の中でも、条文によって「常時使用する労働者」の意味が違うことがあるんですね。これは間違いそうです…。
Qちゃん
A先生
実際、このように勘違いしている人は多いです。通達の一部だけを切り取って「4分の3未満は安衛法上の労働者ではない」と勝手に拡大解釈してしまうんです。法律の構造を意識して読むのは基本的なことなのですが…。

法律の構造を理解したうえで解釈する習慣があれば、このようなミスは避けられます。解釈の一部だけを見て、全体を理解したつもりにならないこと——これは「常時使用する労働者」に限らず、法令解釈全般に通じる大切な姿勢です。

障害者雇用促進法における「常時雇用する労働者」

障害者雇用促進法では、法定雇用率の対象となる労働者を「常時雇用する労働者」と定めています。条文上の文言はこの「常時雇用する労働者」です。

ただ、行政資料や実務の解説では、この労働者を指して「常時雇用労働者」や「常用雇用労働者」と呼ぶことがあり、表記が揺れています。「常時」と「常用」という違いが気になるかもしれませんが、両者に厳密な使い分けはなさそうです。

実際、厚生労働省による平成22年7月の政策レポートでは、短時間労働者の扱いに関する制度改正を解説するなかで「常時雇用労働者」と「常用雇用労働者」が同じ意味で使われています。条文が「雇用する労働者……の数が常時……」という構造であることをふまえると、いずれも条文上の「常時雇用する労働者」を言い換えた通称と理解すればよいでしょう。

では、その「常時雇用する労働者」とは具体的に誰を指すのか。厚生労働省の関連法人である独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の資料によると、以下のとおりです。

  • 雇用期間の定めがなく雇用されている労働者
  • 雇用(契約)期間を定めて雇用されている労働者であって、その雇用(契約)期間が反復更新され、雇入れのときから1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる労働者
  • 過去1年を超える期間について引き続き雇用されている労働者であって、1週間の所定労働時間が20時間以上の労働者

ここで注目すべきは、週20時間以上という労働時間の要件がある点です。

労基法・安衛法の人数カウントでは労働時間を問わなかったのに対し、こちらは個々の労働者の労働時間が判断基準に含まれている点にご注意ください。

正確に言葉を使うべき行政が表記揺れを起こすのは困りますね。
Qちゃん
A先生
ですね。だからこそ我々社労士は行政の資料であってもうのみにせず、必ず一次情報で確認することが重要とも言えます。

労働者派遣法における「常時雇用される労働者」——2015年改正で姿を消した用語

労働者派遣法の「常時雇用される労働者」は、少し事情が複雑です。

この用語はかつて重要な意味を持っていましたが、平成27年(2015年)の法改正によって、実質的に役割を終えています。順を追って説明します。

かつては「特定労働者派遣事業」の判定基準だった

2015年の法改正より前、労働者派遣事業は次の2種類に分かれていました。

  • 一般労働者派遣事業(許可制)
  • 特定労働者派遣事業(届出制)

このうち特定労働者派遣事業とは、派遣労働者が「常時雇用される労働者」だけで構成される派遣事業のことでした。つまり「常時雇用される労働者」とは、この2区分を分けるための判定基準だったのです。

当時、厚生労働省の労働者派遣事業関係業務取扱要領では、「常時雇用される労働者」を以下のように定義していました。

「常時雇用される」とは、雇用契約の形式の如何を問わず、事実上期間の定めなく雇用されている労働者のことをいう。具体的には、次のいずれかに該当する場合に限り「常時雇用される」に該当する。

  1. 期間の定めなく雇用されている者
  2. 一定の期間(例えば、2か月、6か月等)を定めて雇用されている者であって、その雇用期間が反復継続されて事実上1と同等と認められる者。すなわち、過去1年を超える期間について引き続き雇用されている者又は採用の時から1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる者
  3. 日々雇用される者であって、雇用契約が日々更新されて事実上1と同等と認められる者。すなわち、2の場合と同じく、過去1年を超える期間について引き続き雇用されている者又は採用の時から1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる者
  4. なお、雇用保険の被保険者とは判断されないパートタイム労働者であっても、1から3までのいずれかに該当すれば「常時雇用される」と判断するものであるので留意すること。

ここで注目したいのは、雇用保険の被保険者かどうかは問わないとしている点です。

「常時雇用」という言葉から「週20時間以上」といった社会保険・雇用保険の加入要件を連想してしまいそうですが、ここでの判断基準はあくまで「事実上、期間の定めなく雇用されているか」でした。

同じ「常時雇用」でも、社会保険・雇用保険の加入要件とは判断軸が違ったわけです。

2015年改正で2区分が一本化され、用語も置き換わった

ところが、平成27年(2015年)9月30日施行の改正で、この一般・特定の2区分は廃止され、すべて許可制の「労働者派遣事業」に一本化されました。経過措置を経て、平成30年(2018年)9月30日以降は、旧・特定労働者派遣事業を行うことはできなくなっています。

これに伴い、区分の判定に使われていた「常時雇用される労働者」という概念も役割を終えました。現在は、その役割を「無期雇用派遣」と「有期雇用派遣」という区分が引き継いでいます。

  • 無期雇用派遣(いわゆる常用型派遣):派遣元と期間の定めのない労働契約を結ぶ。派遣先での就業が終わっても雇用関係は続く。
  • 有期雇用派遣(いわゆる登録型派遣):派遣のたびに期間の定めのある労働契約を結ぶ。派遣期間が終わると雇用関係も終わる。

派遣労働者の保護を強めるため、「常時雇用かどうか」というあいまいになりやすい基準から、「契約期間に定めがあるか・ないか」という明確な基準へと整理し直された、と理解するとよいでしょう。

じゃあ、今でも「常時雇用される労働者」で検索して出てくる古い解説は、うのみにすると危ないですね。
Qちゃん
A先生
まさに、そこが落とし穴です。ネット上には改正前の記述がそのまま残っていることが多いため、一次情報、つまり今の取扱要領や条文に当たって「その用語が今も生きているのか」を確認する、この一手間が、本当の専門家と偽の専門家を分けるところだと思います。

まとめ

今回は専門的かつ細かい部分の解説となりましたが、冒頭にも書いたとおり、実務において法律を正確に理解することは重要です。

実は、私自身もこの記事を整理する過程で、改めて気づかされた点も正直ありました。法律によって対象となる範囲が微妙に異なっていたり、言葉は違うのに実質的に同じだったりと、改めて整理すると奥が深いものです。

最後にポイントをまとめます。

  • 「常時使用する労働者」「常時雇用労働者」「常用雇用労働者」など、似た用語が多数あるが、法律の定義・解釈によって対象者は異なる。
  • 迷ったら、まず「人数を数える話」なのか「個々の労働者の要件を見る話」なのかを区別する。
  • 同じ法律の中でも、条文(場面)によって意味が変わることがある(安衛法の定期健診がその例)。
  • 必ず、それぞれの法律の定義・解釈、そして一次情報を確認する。
  • 用語そのものが法改正で廃止・整理されることもある(派遣法の「常時雇用される労働者」がその例)。だからこそ、その都度、最新の一次情報に当たることが欠かせない。

顧問先からの質問は、こうした用語の違いを意識しないまま投げかけられることがほとんどです。

「常時使用する労働者って、パートも入りますか?」と聞かれたとき、すぐに「どの制度の話ですか?」と切り返せるかどうか、その一歩が、専門家としての信頼につながります。

法規制の内容だけでなく、その対象者が誰なのかという点まで正確に押さえておきたいところです。

なお、今回の「常時使用する労働者」の微妙な違いと同じようにややこしいのが、企業(法人)と事業場の違いです。法令による規制の対象となっているのが、企業なのか、それとも事業場なのか。これも人事労務を行う上で正確に理解しておくべき論点です。

関連:労働基準法の「事業場」とは?企業・部門との違いと間違えやすい実務ポイント

また、「労働者」の定義というのも、簡単なようで実は奥が深いものです。「労働者性」の判断基準については、以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご参考ください。

関連:労働者性を判断する2つの基準と労働者の定義を詳細解説!

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