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働き方の見直しの第一歩として、時間単位年休制度の導入はオススメです。今回は時間単位の年次有給休暇制度の運用時における7つの注意点を解説します。
時間単位年休制度の運用時の注意点
時間単位年休制度は、あくまで年次有給休暇制度の一部であることから、1日単位の年次有給休暇制度と考え方は同じですが、運用時には以下の7点に注意する必要があります。
- 残日数・残時間数の管理
- 時季変更権との関係
- 年次有給休暇の計画的付与との関係
- 半日単位の年次有給休暇の取扱いとの関係
- 時間単位年休を取得できる事業場からできない事業場に異動した場合の取扱い
- 1年の途中で所定労働時間が変更された場合の取扱い
- 時間単位年休に対して支払われる賃金
なお、時間単位年休制度の基本と導入時のポイントは以下の記事で解説しています。
関連:1時間単位で年次有給休暇を取得できる時間単位年休の基本と導入
(1) 残日数・残時間数の管理
例えば、所定労働時間が8時間で20日間の年休があり、時間単位で5日まで取得できると労使協定で締結している場合の残日数・残時間数の管理は以下のようになります。
残日数(うち時間単位で取得可能な日数) | 残時間数 | |
---|---|---|
最初 | 20日(5日) | |
3時間の年休を取得した | 19日(4日) | 5時間(8-3) |
1日の年休を取得した | 18日(4日) | 5時間 |
6時間の年休を取得した | 17日(3日) | 7時間(5+8-6) |
5時間の年休を5回取得した | 14日(0日) | 6時間(7+8+8+8-25) |
14日の年休を取得した | 0日 | 6時間 |
6時間の年休を取得した | 0日 | 0時間 |
(2) 時季変更権との関係
時間単位年休についても、1日単位の年次有給休暇と同様に、企業の時季変更権 の対象となります。
ただし、従業員が時間単位による取得を請求した場合に1日単位に変更することや、1日単位による取得を請求した場合に時間単位に変更することは、時季変更に当たらず認められないとされているため注意が必要です。
また、事業の正常な運営を妨げるか否かは、従業員からの具体的な請求について個別的、具体的に客観的に判断されるべきものです。
そのため、あらかじめ労使協定で、以下のように定めることは認められていません。
- 時間単位年休を取得することができない時間帯を定めておくこと
- 所定労働時間の中途に時間単位年休を取得することを制限すること
- 1日の中で取得することができる時間単位年休の時間数を制限すること(例えば1日2時間までなど)
(3) 年次有給休暇の計画的付与との関係
年次有給休暇の計画的付与は、労使協定により年休の時期に関する定めをするものです。
そのため、従業員が時間単位による取得を請求した場合に、従業員が請求した時季に与えることができる時間単位年休とは考え方がなじまないものであることから、計画的付与として時間単位年休を与えることは認められていません。
(4) 半日単位の年次有給休暇の取扱いとの関係
半日単位の年次有給休暇の付与をしている企業はありますが、実はこの運用は法律上の制度ではありません。
ただし、年次有給休暇の取得促進の観点から、
- 本来の取得方法による休暇取得の阻害とならない範囲で適切に運用されている場合には問題がない
と従来から取り扱われており、この時間単位年休制度との関係でもその取扱いに変更はないことが行政通達でも示されています。
そのため、半日単位の年次有給休暇を取得しても、時間単位で取得できる時間数に影響はありません。
(5) 時間単位年休を取得できる事業場からできない事業場に異動した場合の取扱い
従業員の年休取得の権利が阻害されないように、異動の際は1日単位に切り上げる等の措置を労使で話し合い労使協定により定めておくことが望まれるとされています。
(6) 1年の途中で所定労働時間が変更された場合の取扱い
時間単位年休として取得できる範囲のうち、日単位で残っている部分について1日が何時間に当たるかは変更後の所定労働時間によることとなります。
日単位に満たず時間単位で保有している部分については、所定労働時間の変動に比例して時間数が変更されることとなります。
例:所定労働時間が8時間から4時間に変更され、年休が3日と3時間残っている場合は、3日と3/8日残っていると考え、以下のとおりとなります。
- 【変更前】3日(1日あたりの時間数は8時間)と3時間
- 【変更後】3日(1日あたりの時間数は4時間)と2時間(比例して変更すると1.5時間となりますが、1時間未満の端数は切り上げます。
(7) 時間単位年休に対して支払われる賃金
時間単位年休1時間分の賃金額は、
- 平均賃金
- 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
- 標準報酬日額(労使協定が必要)
をその日の所定労働時間数で割った額になります。
ただし、1から3のいずれにするかは、1日単位による年次有給休暇の場合と同様にしなければならず、就業規則に定めておくことが必要です。
まとめ
時間単位年休制度の運用時における7つの注意点は以上です。
時間単位年休を実施するためには、
- 従業員の過半数を代表する者と労使協定の締結
- 就業規則への記載
が必要です。特に就業規則への追加の際には、既存の年次有給休暇の規定との整合性に注意してください。
もし、就業規則の作成や見直しなどに不安があれば当事務所までご相談ください。
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