試用期間とは? 試用期間の長さ・賃金・社会保険など法的ルールを徹底解説!

こんにちは。最近めっきり寒くなってきましたが、メール相談のご依頼が急激に増加してホクホクの福岡の社労士・安部敏志です。

寒くなってくると自宅兼事務所のありがたみを痛感します。友人からは外に出て営業すべしと常々言われていますが・・・

回数無制限・月額2万円で人事労務に関するご相談にメールで対応しています←宣伝(^0^)

さて、今回は試用期間について解説します。

就業規則を見ていると、試用期間の長さは1か月、3か月、たまに6か月と様々ですし、労働条件面でも様々な取扱いがなされています。試用期間に関する規定がない会社というのもありますし。。。

スポンサーリンク

試用期間とは

試用期間とは、入社後一定期間の間に、労働者の人物・能力を評価して本採用するか否かを判断・決定する制度として設けられる試みの期間です。

そして、ここは重要なのですが、試用期間については、現行法上、明確な法的規制は存在しません

試用期間の法的性質については、個別の契約ごとの具体的な解釈の問題であるという留保を付けつつも、通常は「解約権留保特約のある雇用契約」としているのが最高裁の立場です。

解約権留保特約のある雇用契約
  • 判例では、試用期間を設けた雇用契約は、契約締結と同時に雇用の効力が確定し、試用期間中に不適格であると認めたときはそれだけの理由で雇用を解約しうるという解約権留保特約のある雇用契約であるとしています。
  • 当該解約権の留保は、後日における調査や観察に基づく最終決定を留保する趣旨で設定されるものと解され、合理性があり、留保解約権に基づく解雇は、通常の解雇よりも広い範囲における解雇の自由が認められるとしています。

一般的な試用期間の長さは? 3か月それとも6か月?

そもそも人物・能力を評価して採用するわけですから、個人的には、試用期間自体を否定するつもりはありませんが、長すぎるのはおかしいと思っています。見る目の問題かと・・・

実際、どれくらいの長さになっているのか、信用できそうな調査結果を調べてみたところ、「従業員の採用と退職に関する実態調査」(独立行政法人労働政策研究・研修機構・JILPT)にありましたので、グラフにしてみました。

trial-term

新卒採用・中途採用のいずれも3か月というのが圧倒的に多い状況です。6か月以上というのも2割弱あって驚きました。

それでは、試用期間の限度となる長さはどれくらいでしょうか?

この件に関する有名な裁判例がブラザー工業事件です。

この事案では、見習社員としての期間が6か月から1年、その後に試用期間として6か月から1年の試用期間が設けられていたもので、最長2年になってしまうため、いくらなんでも長すぎるでしょうという判断がなされたものです。

あくまで感覚的なものですが、いくら何でも1年が限界だろうとは思います。しかも試用期間の延長があってという前提で。

なお、私のクライアントには、原則3か月、延長する場合も6か月までということでお伝えしてます。

ブラザー工業事件(名古屋地判昭和59年3月23日)
  • 労働者の労働能力や勤務態度を評価するに必要な合理的範囲を超えた長期の試用期間の定めは公序良俗に反し無効
  • 「見習社員」から「試用社員」に登用したうえ、6か月ないし1年の試用期間を設ける雇用契約につき、右試用期間に関する特約部分は無効
  • 正社員登用試験(勤怠評価)に不合格となったことを理由とする右試用社員に対する解雇は無効

試用期間は14日?

労働基準法を少し勉強したことがある方は「試用期間って14日でしょ?」という疑問を持つようですが、それは間違いです。

労働基準法第21条第1号第4号には以下の条文があります。

労働基準法第21条
前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、(略)第4号に該当する者が14日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。
四 試の使用期間中の者

この「試の使用期間中の者」と、ただし書きの「14日」という部分から、試用期間=14日と勘違いする人がいるようですが、この第21条はその前条である第20条の解雇の予告について言っているものです。

つまり、労働者を解雇しようとする場合は原則として少なくとも30日前に予告をしなければならないが、試用期間として14日以内なのであれば、その予告は不要ですと言っているわけです。

逆に言えば、試用期間として15日目に入ったのであれば、解雇予告は必要ですよと言っているに過ぎないわけです。

試用期間は社会保険なし?

なぜか「試用期間中は社会保険に加入させる必要はない」と思い込んでいる人がいますが、それは関係ありません。

試用期間というのは会社が定めるものであり、上で解説したとおり、解約権留保の特約があっても雇用契約は交わしているわけですから、除外対象となっていなければ社会保険の加入の対象となります。

以下の記事で解説していますが、除外対象として代表的な例はパートやアルバイトなどの短時間労働者です。

誤解の多い正社員とパートの違いを法的・明快に解説!
正社員とパートの違いについて間違った認識を持っている人が多くいます。月給制と時給制、雇用契約期間、社会保険、すべて無関係です。今回は正社員とパートの違いを法的・明快に解説します。

試用期間と最低賃金

これまたなぜか「試用期間は給料がどれだけ安くてもいい」と思い込んでいる人がいますが、それは違います。

また、誰から聞いたのか「最低賃金を下回ってもいい」と発言している人に会ったことがありますが、それも違います。

法律は正確に理解しましょう。おそらく最低賃金法の以下の条文の一部分のみをどこかで聞いたのでしょう。。。

最低賃金法第7条(最低賃金の減額の特例)
使用者が厚生労働省令で定めるところにより都道府県労働局長の許可を受けたときは、次に掲げる労働者については、当該最低賃金において定める最低賃金額から当該最低賃金額に労働能力その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める率を乗じて得た額を減額した額により第4条の規定を適用する。
(略)
二  試の使用期間中の者

この条文をざっくり説明すると、試用期間中の人については都道府県労働局長の許可があれば最低賃金より低い賃金でもいいよということです。

で、ポイントは「許可」です。許可というのは原則禁止だけど特別な場合には許しますよという意味です。

許可を受ける自信があるならやってみてください。私のクライアントだったら全力で止めますが。

試用期間と解雇

冒頭で、試用期間の法的性質については「解約権留保特約のある雇用契約」と説明しましたが、留保解約権の行使がどこまで認められるのかという点を理解しておくことは重要です。

留保解約権に基づく解雇は、通常の解雇よりも広い範囲における解雇の自由が認められると考えられています。

その一方、試用期間中の労働者というのは、他の企業への就職機会を既に放棄している状態です。

そのため、判例では、留保解約権の行使は、解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存在し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許されるとしています。

具体的には、以下の場合には、留保した解約権を行使することができるとされています。

  • 採用決定後における調査、または、試用中の勤務状態等により、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合であり、
  • 引き続き企業に雇用しておくことが適当でないと判断することが、解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に相当であると認められる場合
三菱樹脂事件(最大判昭和48年12月12日)
  • 労働者が採用試験の際に、面接試験で虚偽の回答をしたため、企業が試用期間の満了に当たり本採用を拒否したことについて、裁判所は雇入れの拒否を認めた事案
  • 秘匿の事実の有無、違法にわたる行為の有無等に関する事実関係に照らして、入社後における行動、態度の予測や人物評価等に及ぼす影響を検討し、企業の採否決定に有する意義と重要性を勘案し、総合的に合理的理由の有無を判断しなければならないとした
日本基礎技術事件(大阪高判平成24年2月10日)
  • 技術者として採用された新規学校卒業者を、6ヶ月の試用期間を4ヶ月が経過した時点で留保解約権により解雇したことについて、裁判所は解雇を有効とした事案
  • 原告(労働者)が起こした事故は原告や周りの者の身体生命に対する危険を有する行為であり看過できないこと、原告の時間や規則を守る意識が薄いこと、再三の注意にかかわらず睡眠不足とそれによる集中力の低下が生じていたことを総合すると、4ヶ月経過したところであるものの、今後指導を継続しても、能力を飛躍的に向上させ技術社員として必要な程度の能力を身につける見込みがない
  • 使用者は、改善の機会を十分に与え、本採用すべく十分な指導、教育を行っていたため解雇回避の努力をしていた

まとめ

いかがでしたでしょうか?

試用期間に関する理解は深まりましたか?

なお、「従業員の採用と退職に関する実態調査」の調査では、試用期間のルールを何によって定めているのかという設問があり、回答は以下のようになっています。

  • 就業規則:79.2%
  • その他の社内規程:9.3%
  • 労働協約:8.8%
  • 慣行であり、特に文書の規程等はない:7.5%

試用期間に関して明確な法的規制が存在しない以上、会社としてルールを定めるしかなく、そのために就業規則の規定には十分注意しておく必要があります。

なお、試用期間以上に甘く考えられがちな内定についても以下の記事で解説していますのでご参考ください。

内定の法的効果を徹底解説! 内定取消ってほぼ無理ですよ・・・
今回は、この採用内定に関する法的性質について判例・裁判例を用いて解説します。これを読んでいただけると内定取消ってほぼ無理なことがわかります。
試用期間とは? 試用期間の長さ・賃金・社会保険など法的ルールを徹底解説!
本記事以外の人事労務情報も満載の
Facebookページを、
いいねしてチェックしよう!
スポンサーリンク

フォローする

人事の秘訣を知りたくありませんか?

人事の秘訣を知りたくありませんか?

本音満載で人事の秘訣を毎週お伝えしています。

過去の配信情報など、さらに詳しい情報をお知りになりたい場合は、こちらをご覧ください。

注意
*は必須項目を示しています。なお、氏名の欄には本名を漢字で入れてください。「たこ」など明らかにふざけた名前を登録している方がいますが、見つけ次第削除しています。


この記事を書いた人


安部敏志

あべ社労士事務所代表・社会保険労務士

国家公務員I種職員として労働基準法・労働安全衛生法等の立案や企業への徹底的な指導に従事した経験を武器に、退職後は逆に会社を守る立場として経営者・人事担当者からの人事労務管理に関するご相談に対応。

最近は記事の執筆やセミナー講師の依頼にも積極的に対応。仕事内容がわかりにくいとよく言われるので、業務内容・実績を紹介するページを作成しました!

ご相談・ご依頼はこちらから

error: Content is protected !!