正社員とパートの違いを法律的・実態面から詳細解説!

こんにちは。福岡の社労士・安部敏志です。

あなたは正社員とパートの違いについて正しく理解していますか? 法律的にきちんと説明できますか?

まさか以下のような理解をしていませんよね?

  • 正社員は月給制、パートは時給制である
  • 正社員は社会保険に加入する、パートは社会保険に加入しない
  • 正社員には有給休暇がある、パートには有給休暇がない

今回は、誤解の多い正社員とパートの違いについて解説します。

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1. 正社員とパートの違い(法律面)

まず、法令上、正社員という定義はありません。

その一方、パートタイム労働者というのは、パートタイム労働法により、通常の労働者よりも1週間の所定労働時間が短い労働者と定義されています。

パートタイム労働法第2条(定義)
「短時間労働者」とは、1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比し短い労働者をいう。

ちなみに、パートタイム労働法の正式名称は「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」ですが、行政自身も「パートタイム労働法」と言っているので通称と言うより公称ですね。

つまり、法令上、正社員とパートの違いというのは、「通常の労働者」と「通常の労働者よりも1週間の所定労働時間が短い労働者」かどうかということです。

  • 正社員 = 通常の労働者
  • パート = 通常の労働者よりも1週間の所定労働時間が短い労働者

正社員とパートの法律的な違いというのは、これだけです。

たまに、雇用契約期間(無期契約と有期契約)の違いや、社会保険の適用の有無で、正社員とパートの違いを説明する人がいますが、それは間違いです。

なお、ここまで「パート」として説明してきましたが、アルバイト、嘱託、臨時社員、準社員といった呼び名は関係ありません。

あくまで、「通常の労働者よりも1週間の所定労働時間が短い労働者」に該当すれば、法律的にはすべてパートとなります。この点は要注意です。

会社によっては、パートは主婦層、アルバイトは学生、嘱託は高年齢者などと区分けしていますが、それは単に会社がそのように決めているだけです。

2. 正社員とパートの違い(実態面)

次に実態面での違いを解説します。

一般的な会社で、正社員とパートの違いとしてあるのは以下のようなものでしょう。

  • 給与形態の違い(月給制と時給制)
  • 職務内容の違い
  • 転勤・配置転換の有無
  • 残業時間の有無
  • 賞与の有無
  • 退職金の有無

ただ、先程解説したように、法令上での正社員とパートの違いは労働時間の長さのみです。

そのため、上の例で列挙した正社員とパートの違いというのは、あくまで会社の中でそのように決めているだけであって、多くの会社がその慣習に従っているだけのものです。

先日、コストコが管理職以外の全員が時給制ということで話題になっていましたが、正社員が時給制であっても構いません。

また、パートに賞与や退職金を支給するどうかも会社で決めているだけです。私のクライアントで、パートに賞与や退職金を支給している会社もありますし。

さらに、会社によっては、正社員とパートの職務内容に大きな違いがない場合もあります。

まあ、これは近年大きな話題となっている「同一労働同一賃金」の関係で、別の問題が生じますが。

3. 雇用契約期間の有無は正社員とパートの違いに関係ない

また、正社員とパートの違いとして、雇用契約期間を例に、

  • 正社員は期間の定めのない雇用契約(無期契約)
  • パートは期間の定めのある雇用契約(有期契約)

と整理して解説する人がいますが、それも違います。

何度も繰り返しますが、正社員とパートの違いは所定労働時間の違いのみです。

雇用契約期間の有無は関係ありません。

これは、いわゆる契約社員と呼ばれる人との違いであり、以下の図のように、比較する軸が異なります。

この違いを説明しても「いやいや、うちの会社のパートはすべて有期契約だから」という人もいるので困ったものですが、「無期契約のパート」もいます。

これは私の過去のクライアントの話ですが、介護施設などでは慢性的な人手不足もあって、短い時間しか働けない人でも長く働いて欲しいということから、無期契約のパートは多くいました。

本当は正社員になって欲しいのですが、ご家庭の都合などもあって正社員と同じ時間は働けないという理由です。

なお、契約社員という言葉も一般的に用いられていますが、実は「契約社員」という用語も法律的な定義はないんです。。。

「契約社員とは?」という切り口で、正社員との違いについて以下の記事で詳しく解説していますのでご参考ください。

契約社員と正社員の違い・5年ルールなどの契約社員に関する基礎知識!
契約社員の定義、正社員・パートとの法的な違い、無期転換ルールなどの契約社員に関する基本的事項を詳細に解説します。

つまり、正社員と呼ばれる人の中にも有期契約と無期契約がありえるし、パートと呼ばれる人の中にも、有期契約と無期契約がありえるということです。

ただ、実態として、正社員の中には無期契約の労働者が多いというだけです。

4. 社会保険の適用の有無は正社員とパートの違いに関係ない

また、正社員とパートの違いとして、社会保険の適用の有無を例に解説する人もいますが、それも違います。

この間「パートとは週の所定労働時間が30時間未満の人である」と説明している人がいて驚きました。

社会保険のいわゆる4分の3基準と完全に混乱しているのでしょうが、上の説明だと、社会保険の適用基準に関しても解説が間違っています

通常の労働者(一般的には正社員)の所定労働時間が36時間だったら、社会保険の非加入者となりうるのは27時間未満になりますから。。。

週の所定労働時間が30時間未満と言われているのは、一般的に週の所定労働時間が40時間になっている会社が多いからです。

なお、平成28年10月1日から、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の被保険者資格の取得基準(いわゆる4分の3基準)は以下のように明確化されています。

平成28年10月1日以降の取り扱い
1週の所定労働時間および1月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上
従来の取り扱い
1日または1週の所定労働時間および1月の所定労働日数が常時雇用者のおおむね4分の3以上(この基準に該当しない場合であっても就労形態や勤務内容等から常用的使用関係にあると認められる場合は被保険者となります。)

で、本題に話を戻すと、パートは正社員より所定労働時間が短い、これはパートタイム労働法の規定どおりですね、そして会社として、常時雇用者(一般的には正社員)の所定労働時間や所定労働日数を4分の3未満にしているから、社会保険に加入していないということです。

別にパートだから社会保険に未加入で良いわけではないということです。

イメージとしてはこのようになります。

social-insurance-adoption

なお、一般社員の所定労働時間・所定労働日数が4分の3未満であっても、以下の5つの要件を全て満たす場合は、被保険者になるので要注意です。

  • 週の所定労働時間が20時間以上あること
  • 雇用期間が1年以上見込まれること
  • 賃金の月額が8.8万円以上であること
  • 学生でないこと
  • 常時501人以上の企業(特定適用事業所)に勤めていること

まとめ

いかがでしたでしょうか?

正社員とパートの違いについて正しく理解できましたか?

最近、とあるご縁により、新たに起業しようとしている個人事業主への支援を行っていますが、その方がとても混乱していたのがこの記事を書いたきっかけです。

どうも怪しい解説が溢れているようですが、必ず一次情報である法律を踏まえてきちんとできる専門家に相談するようにしてください。

なお、以下の記事では、1995年から2015年までの正規・非正規従業員の割合を時系列でグラフにしています。

非正規従業員の割合は年々増加し、今や約4割、そしてその7割がパートです。

非正規労働者の働き方については以前から問題になっており、昨今は同一労働同一賃金の話題がクローズアップされていますが、パートの雇用について真剣に考える時期が来ているということですね。

正規・非正規従業員の推移・割合、短時間労働者の国際比較をグラフにしてみた
今回は、パート・アルバイトなどのいわゆる非正規従業員に関する実態として、雇用者全体の中の割合とその推移、短時間労働者に関する国際比較などの統計情報を紹介します。

また、人事労務の2018年(平成30年)問題をご存知でしょうか? 詳しくは以下の記事で解説していますが、無期転換ルールの対応をきっかけにして、多くの会社で限定正社員制度の導入が始まっています。

今回、解説した正社員とパートに加えて、今後はこの限定正社員という雇用形態についても考えた法が良いですね。

限定正社員とは? 限定正社員制度の3つのパターンを詳細解説!
限定正社員の定義、3つの限定パターン、限定正社員のよくある誤解について、法律・行政の例示を参考に、詳しく解説します。

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この記事を書いた人


安部敏志

あべ社労士事務所代表・社会保険労務士

中小企業の人事労務担当者の育成を中心に業務展開。専門記事の執筆やセミナー・社内研修の講師業も実施。

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