50人以上の企業が抑えるべき障害者雇用義務と障害者雇用率

こんにちは。福岡の社労士・安部敏志です。

これまでもこのサイトでは、労働者数が50人以上になると、途端に様々な法的な義務が発生することをお伝えしてきました。

50人以上の事業場に義務とされている資格・職務を徹底解説!
社員数50人以上というのは人事労務管理上要注意です。50人以上で選任が義務となる3つの資格・職務を解説します。

今回は、平成28年4月より施行された改正障害者雇用促進法を契機に、50人以上の企業に義務づけられている障害者の雇用、その基礎知識である障害者雇用率について解説します。

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障害者雇用率

障害者を雇用する上で遵守しなければならないのが、障害者雇用促進法という法律です。

同法第43条に基づき、従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める身体障害者・知的障害者の割合を法定雇用率以上にする義務があります。

この法定雇用率のことを障害者雇用率といい、事業主の区分によって以下のように雇用率が異なります。

事業主区分 法定雇用率(H25/4/1以降)
民間企業 2.0%
国、地方公共団体等 2.3%
都道府県等の教育委員会 2.2%

この障害者雇用率を用いて計算することによって、一般の民間企業の場合、障害者を少なくとも1名雇用しなければならないのは50人以上の企業となるわけです。

同様に、国や地方公共団体の場合も計算することで44名以上の組織に雇用義務があるということがわかります。

つまり、この障害者雇用率が変われば、対象企業の規模も変わるということに注意してください。

実際、現在の障害者雇用率(2.0%)というのは平成25年4月に引き上げられたものであり、それまでは1.8%でした。それまでは従業員56人以上の企業に義務づけられていたわけです。

この点が、就業規則のように、法律で「常時10名以上」と規定されているものと異なる部分です。

なお、「詳説 障害者雇用促進法―新たな平等社会の実現に向けて」によると、フランスの法定雇用率は6%、と現在の日本の3倍とのことです。また、3年以上の間、1人も障害者を雇用していない事業主に対しては、納付金さえ支払えばよいという考えを許さないため、最低賃金の1500倍の納付金を課しているということです。

もちろん、障害者の定義や雇用義務の考え方は各国で異なるため、あくまで参考情報として扱うべきではあります。

障害者雇用率の算定式

具体的な障害者雇用率の算定式は以下のとおりです。

短時間労働者の場合は0.5人とカウントするという注意書きがありますが、短時間労働者とは、週所定労働時間20時間以上30時間未満の労働者のことです。

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なお、この障害者の雇用に際しては、機械的に一律の雇用率を適用することになじまない性質の職務もあるということで、業種ごとに、雇用する労働者数を計算する際に、除外率制度というのがあります。

この除外制度は、既に平成16年4月に廃止されていますが、経過措置として残っています。

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参考 除外率制度について(厚生労働省)

障害者の範囲

それでは、そもそも障害者雇用率を計算する上で、雇用対象となる障害者の範囲を知っておきましょう。

  • 身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の所有者

ここで注意点があります。

障害者雇用促進法第43条で義務とされているのは、従業員に占める身体障害者・知的障害者の割合を法定雇用率以上にするというものであり、精神障害者は入っていないということです。

そのため、算定式の分子は「身体障害者及び知的障害者である常用労働者の数」となっており、精神障害者は入っていません。

つまり、精神障害者については、現在法定雇用率の算定基礎の対象となっており、雇用の義務はないということです。

ただし、精神障害者を雇用した場合は、雇用率制度上、身体障害者又は知的障害者を雇用したものとみなされることになっています。

なお、平成30年度からは精神障害者も法定雇用率の算定基礎の対象に加えられることになっています。

障害者雇用状況報告

従業員50人以上の企業には、毎年6月1日時点で、障害者の雇用に関する状況(障害者雇用状況報告)をハローワークに報告する義務があります。

毎年、報告時期になると、ハローワークから従業員50人以上規模の事業所に報告用紙が送付されますので、必要事項を記載し、7月15日までに返信することが求められています。

障害者雇用義務を果たさない事業主に対しては、ハローワークが以下の図の流れで行政指導を行うことになっています。

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障害者を初めて雇用する中小企業を対象とした奨励金

障害者雇用の経験のない中小企業が初めて障害者を雇用するときに受け取れる奨励金というものがあります。

対象は、労働者数50-300人の中小企業ですが、補助金や助成金と異なり、奨励金というのは大きなポイントです。

条件をすべて満たした場合、120万円をもらうことができます。

また、助成金や奨励金の数がありすぎてわからないというご相談も多いので、当事務所では一覧にまとめています。

障害者の雇用を進めたい、それに伴って得られる助成金や奨励金について知りたいという方は、当事務所までご連絡ください。

なお、障害者雇用の助成金・奨励金については、一般的な助成金と異なり、助成金の受給後にも様々な手続きが発生しますのでご注意ください。助成金獲得を目的とする会社に依頼したところ、助成金獲得業務に関係ないアフターフォローは知りませんと断られてトラブルになっている事案のご相談を最近受けましたのでご注意ください。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

以下の記事でご紹介していますが、平成28年の障害者雇用状況に関する統計によると、民間企業による実雇用率(各事業主における、全労働者の中の障害者の割合)は1.92%と過去最高を記録したということですが、法定雇用率である2.0%にはまだ達していません。

公的機関は当然達成しているだろうと思ったら、国・都道府県・市町村は達成しているものの、教育委員会は未達成のようで、まったくけしからんことです。

障害者雇用の状況をグラフで解説! 法定雇用率達成企業は半数以下・・・
障害者雇用の最新の状況、実雇用率、法定雇用率の達成企業の割合をわかりやすくグラフにまとめて解説します。

また、前述のとおり、ハローワークによる指導に従わない場合、最後は企業名を公表されます。27年度は該当企業なしということでしたが、26年度は、障害者の雇用状況に改善が見られない企業として、8企業が、社名、本社所在地、代表者氏名を公表されています。

参考

障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく企業名公表等について(厚生労働省H27.3.31発表)

さらに、100人超の企業で、今回説明した障害者雇用率を達成できない場合、1人につき月額5万円徴収される障害者雇用納付金制度というのがあります。詳しくは以下の記事で解説していますのでご参考ください。

100人超の企業は要注意の障害者雇用納付金とは?
今回は、100人超の障害者雇用率を達成できない企業に対して、いわば罰金的に徴収する納付金、上回る企業に支給される調整金について解説します。

なお、平成28年4月より、改正障害者雇用促進法に基づき、企業は新たに、障害者に対する差別の禁止、合理的配慮、苦情処理・紛争解決援助を求められております。詳しくは以下で解説していますでのご参考ください。

改正障害者雇用促進法の3つのポイントを詳細に解説!
平成28年4月から義務づけられた改正障害者雇用促進法について既に対応済ですか?今回は改正内容のポイントについて指針・Q&Aを活用して詳細に解説します。

障害者雇用についてわかりやすい本をお探しなら以下の2冊がオススメです。

今日からできる障害者雇用」は、Q&A形式でわかりやすく解説しており、はじめて障害者雇用を検討する企業の総務・人事担当者にとってオススメの本です。他社の障害者雇用制度の調査を行う際のポイント、経営層の了解を取り付けるための準備など実務的な視点を踏まえています。

詳説 障害者雇用促進法―新たな平等社会の実現に向けて」は障害者雇用政策の歴史、裁判例、障害者雇用促進の解説、障害者基本法・障害者差別解消法との関係、これからの障害者雇用政策など多岐に亘る内容を含んだ本です。特に私が驚いたのは、法改正を担当した厚生労働省の課長が執筆していることです。

特にP320の脚注では以下のように記載がありますが、その思いはよくわかります。

政策形成過程はマスメディアが絵解きするほど単純な図式にはなっていない。政策形成過程に関わるプレイヤー(行政実務者だけでなく審議会委員等を含む)が、七転八倒、試行錯誤して議論を収束させていることを広く理解してほしいとの思いが筆者にはあった。

企業の総務・人事担当者がここまで理解する必要はありませんが、専門家なら一読の価値がある良書です。

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この記事を書いた人


安部敏志

あべ社労士事務所代表・社会保険労務士

従来の顧問契約とは異なり、中小企業の人事労務担当者の育成を主要業務とする。専門記事の執筆やセミナー・社内研修の講師にも対応。

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