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就業規則をGitHubに公開し採用や広報の武器にしている会社の実例

GitHubに会社の就業規則を公開した」という記事を見つけ、その中で、

  • 10人未満の企業に就業規則が必要か否か
  • コスト感
  • 実際に就業規則を自分で作ったメリット

などが書かれていて、企業経営者による就業規則に関する率直なイメージ、自ら作成した上での実感のこもった感想がとても興味深かったので、適宜引用しながら紹介します。

就業規則がまともならアピールになる

就業規則を公開した理由として、

マトモな規則が作ってあれば公開しても特にデメリットはない、むしろマトモな会社アピールができてよい

と書かれています。実際には、賃金の手当の額、服務規律、懲戒関係にその企業の独自の部分があったりするので、すべて公開するのが得策かはわかりませんが、企業の透明性を示す姿勢として、これ以上大きなアピールはないと言えます

就業規則を一旦作成すれば、変更は難しくなります。求人票に良いことばかり書くのとは重みが違います。

零細企業に就業規則は必要か?

従業員が10人未満であれば、労基署への提出義務はありません。ただ、それが就業規則は不要と結びつくかと言えば微妙なところで、仮に明文化なされていなくても、「給与額はどう決めるの?」「残業代は?」「有給日数は何日?」のような取り決めは必要です。

もし、ルールが明文化されていない場合は、従業員側は雇用者が毎回違う事を言っていたとしても従わざるを得ない状況になる可能性があります。

無用な雇用トラブルを避け、かつ、従業員のことを考えるのであれば、ルールの明文化は必須で、それが正に就業規則そのものになります。

確かに法的には、10人未満の事業場には就業規則の作成義務はありません。

ただ、記事にあるとおり、働き方のルールである就業規則そのものを明文化し周知しておくことは極めて重要です。

たった2人でも集団行動をすればルールが生まれます。明文化していないだけで、暗黙のルールが積み上がっていきます。

「無用な雇用トラブルを避ける」というのはまさにその通りですが、「従業員のことを考えるのであれば、ルールの明文化は必須」というのは、むしろ逆で「会社にとってルールの明文化は必須」となります。雇用トラブルの矛先はすべて会社、経営者に向かいますし、雇用トラブルが起きて大変なのは会社ですから。

なお、そもそも1人雇用するだけでも労働条件通知書は必須ですし、その集合体が就業規則になるため、就業規則に委任した方が効率的という観点もあります。

関連:労働条件の明示義務と労働条件通知書について図解解説!

就業規則作成のコスト感

就業規則の作成を社労士事務所に委託すると、ひな形に穴埋めするだけでも30万円程度が相場です。更に会社の実態に合わせていったり、理想とする制度の設計までをやっていくと、最悪ケースで100万円ぐらいはかかってきます。

うちの場合、制度設計をがっつりやった面はありますが、完成まで9ヵ月間、実働工数で2人月分ぐらいはかかっています。売上的には何も生まない2人月分の作業が100万円程度で済むのであれば、どっちが良いのかは微妙なところかと思います。

実際に自らされているので、コスト感は実感がこもっています。

「売上的には何も生まない2人月分の作業が100万円程度で済むのであれば、どっちが良いのかは微妙」という点もその通りで、社労士として大変うれしい言葉です。

テンプレート就業規則の問題点

テンプレートを修正するだけでも、そんなに時間がかかるの?

うちも当初は「世の中にあるテンプレートを修正するだけならすぐに終わるでしょ」という目論見で作業していたのですが、結果は前述の通りです。

まず前提として、就業規則を作ったら、必ず社労士にチェックしてもらう必要があります。これは絶対です。

インターネット上には「就業規則を簡単に作れる」といった無責任な記事が溢れていますが、就業規則は、法的規範性を求められ、裁判になれば会社のルールとして根拠にされます。

テンプレートをもとに穴埋めして作成した就業規則で本人たちが良ければ、私は無関係なので構いません。

ただ、実務でトラブルになる事案には対応できないでしょう。世の中で労働裁判が頻繁している事実から見ても明らかです。

更に厄介なことに、労働者保護の観点から、就業規則は不利益変更(従業員の不利益に繋がる条項改定)は、従業員の同意がないと、無効と判定されます。つまり、就業規則に脆弱性を抱えていて、悪意のある従業員が存在したら、零細会社であれば普通に破滅です。

労働者保護の観点というより、契約の考え方そのものから不利益変更の考え方が導かれます。

そもそも就業規則の作成義務は会社にありますが、就業規則は会社と従業員の包括的な契約と言えます。企業間の契約でも同様ですが、契約の当事者の一方から「契約を変更したから従え」と言われたらイヤですよね?

双方で同意してこそ契約の変更は可能、というのが常識のはずです。

「就業規則に脆弱性を抱えていて、悪意のある従業員が存在したら、零細会社であれば普通に破滅です。」というのはまさにその通りですね。。。人に関するトラブルで破滅した会社を私も知っています。

就業規則のテンプレートはググれば多々出てきます。厚労省や地方公共団体が配布しているものや、社労士事務所のWebサイトで公開されているものもあります。Web以外には書籍の付録としても配布されています。これらが軒並みそのまま使い物にはなりません。

厚労省や地方公共団体が配布しているものは、あくまでも従業員に不利益が生じないようには考えられています。一方で、雇用者側の視点は欠けた記述となっているため、考慮漏れが多々存在します。

まさに自ら作成された方だからこそ、実感のこもった意見、というより事実を記載されています。

ただ「厚労省や地方公共団体が配布しているものは、・・・雇用者側の視点は欠けた記述となっているため、考慮漏れが多々存在します。」という点は、事実誤認です。

厚生労働省のモデル就業規則は、就業規則の絶対的必要記載事項は当然網羅しており、それは労働基準法の問題だからです。

一方、労働契約の民事的な部分は行政の範囲外であり、行政が介入して例を示すのは困難と言えますし、そこまで行政がすべきなのかという意見もあるでしょう。

就業規則を自ら作るメリット

なんだかんだ言っても、零細企業で30万円だとか100万円だとか払うのは辛いので、その費用が浮くのは大きいです。あと、自分で書かざるを得ない以上、規則の内容を完全に把握することになるので、将来的に規則を改定していく際に雇用側の意向を完全に反映させた改定がやりやすく、委託するにしても「丸投げしか選択肢がない」という状態は避けられます。

このあたりは、外注ではなく自前でシステム作ると~みたいな話にまんま通じる話です。

この点は、本当にその通りです。

よく見る就業規則のパターンは、最初は社労士に作ってもらったけど、その後の改定を会社の担当者自身が行ったというものです。

これは経験のある社労士なら一目でわかります。

中身はちぐはぐ、さらに「管理職には残業手当を付けない」と書いているのに、他の部分で「管理職手当の中に残業部分10時間分を含む」と法的に矛盾することを堂々と書いてあったり。社労士による作成でもたまにあるので始末に負えませんが・・・

なお、社労士に就業規則の作成を依頼する場合、価格だけでなくサービス内容を含めて比較した方が良いです。

ここでのサービス内容とは、いかに内容の説明をしてくれるか、依頼主の質問を受けるか、システムで言えばサポートのようなものです。

就業規則の作成費用が安い社労士事務所は、このサポートを一切しない、しても1回だけということです。就業規則の作成費用には、作成代+講習代が含まれているというイメージを持っていただくのが正しいです。

まとめ

これまでの常識を覆す取組みというのはIT企業ならではですね。ぜひ記事を読んでいただきたいのですが、手堅いお考えの方のようですし、就業規則の作成そのものを楽しんでいる感じがすばらしいです。

また、このような形で経営者に就業規則の重要性が伝わっていくのも一社労士としてうれしいです。

なお、いくつか事実誤認の指摘をしましたが、むしろ応援している気持ちが強いとご理解いただければ。いつかGitHubでプルリクして貢献したいですね👍

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