労働基準法令により、時間外労働(いわゆる残業)や休日労働に対しては割増賃金の支払いが必要です。
時間外労働・深夜労働には25%以上、休日労働には35%以上の割増率となりますが、意外と就業規則や労働条件通知書・雇用契約書の記載に間違いがあるので要注意です。
割増賃金とは?
割増賃金は、文字通り、通常支払う固定の賃金に割増して払う賃金のことです。
労働基準法令では、
- 1か月の合計が60時間までの時間外労働・深夜労働については、通常の労働時間の賃金の25%以上
- ただし、60時間を超える労働について通常の労働時間の賃金の50%以上(中小企業への適用は2023年4月から)
- 休日労働に対しては、通常の労働日の賃金の35%以上
の支払いが必要と定められています。そして、時間外労働、一般的に残業と呼ばれていますが、残業には以下の図のように実は2種類あることをご存知ですか?

この2種類の残業、つまり「法定労働時間を超えた残業」と「所定労働時間を超えた残業」については、以下の記事で解説しています。
関連:残業代の仕組みと計算方法・ 9割以上の会社が間違う部分を詳細解説
割増賃金率の書き方に要注意
最近ある会社の雇用契約書の「割増率」の部分で、以下のような記載を見て驚きました😱
- 所定時間外超:100%
- 法定時間外超:125%
わかりますか?
実はこの記載は間違っています。当然ですが、お金が関係する部分には細心の注意が必要です。
例えば、10万円の2割増だと、10 + 10 x 20% = 12万円です。これは割増率20%の例です。
しかし、所定時間外超の割増率125%となっていれば、10 + 10 x 125% = 22.5万円になってしまいます。ちなみに、所定時間外超の割増率100%となっているので、20万円支払うことになります。
つまり、上の例は、法令の最低基準にあわせて正確に記載するなら、
- 所定時間外超:0%
- 法定時間外超:25%
と記載しなければなりません。なお、休日労働、深夜労働の割増率については以下の記載となります。
- 法定休日:35%
- 深夜:25%
まとめ
「法定時間外超:125%」と仮に間違って書いたとしても、2倍以上の金額を請求する人なんて常識的にありえない、という指摘はそのとおりです。
ただ、雇用契約・労働契約はれっきとした「契約」であり、しかも作成者は通常会社側です。
契約なので請求されれば払わざるを得ませんし、争うにしても、好意的に見ても契約を安易に考えている会社、悪く言えばアホな会社と世間に広めるだけです。
割増賃金以外にも、就業規則や雇用契約書など人事労務の重要書類について間違って記載を残しているのはリスクでしかありません。
記載内容に不安がある場合は、一度信頼できる社労士にチェックしてもらいましょう。
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