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解雇と雇止めの違い、雇い止めで揉めないための対応策とは?

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「雇止め」という言葉をご存じですか?

今回は、解雇と雇止めの違い、雇止めの留意点について裁判例・法令を踏まえて解説します。

解雇と雇い止めの違い

正社員、いわゆる無期契約の労働者というのは、雇用期間に定めがありません。ということは、解雇という会社による意思表示、または退職という労働者の意思表示によってのみ労働契約が終了することになります(死亡退職など特別な場合もありますが)。

そして「雇用期間に定めがある」契約社員については、契約期間が終了すれば、原則として自動的に労働契約が終了します。期間と年齢という違いはありますが、定年退職のようなものです。

この「期間に定めのある」契約社員と会社が契約期間の終了をもって労働契約を解除することを「雇い止め」と言います

わかりやすく書くと、以下のようになります。

  • 解雇:会社の意思表示により労働契約が終了
  • 雇い止め:期間満了により自動的に労働契約が終了

もちろん、会社または労働者が、労働契約を更新・継続するという意思を示し双方で合意すれば、そのまま継続して働くことになります。

頻繁に揉める「雇い止め」

契約社員は、あくまで一時的・臨時的な労働者という位置付けです。

しかし、契約社員であるにも関わらず、実態は「期間の定めのない」労働者のように扱っている企業も残念ながら存在します。

解雇よりも、期間満了による雇い止めの方が簡単なため、ほとんどの労働者を有期雇用契約にし、契約期間の延長を繰り返す方法です。

これはもはや制度の悪用です。

実際、雇い止めに関する訴訟は多く、状況によっては「期間の定めがある」労働者を「期間の定めのない」労働者とみなす判例もあります。

例えば、以下の事件は、2か月更新を5回から23回にわたり更新されてきた有期契約の労働者ですが、もはや「期間の定めのない労働者」と同一であると認め、雇い止めではなく解雇であると示しています。

東芝柳町工場事件(昭和49年 最高裁第一小法廷判決)
各労働契約は、期間の終了ごとに当然更新を重ねて実質上期間の定めのない契約と異ならない状態で存在しており、雇止めの意思表示は実質において解雇の意思表示に当たり、その効力の判断に当たっては解雇に関する法理を類推すべきものであるとした原審の判断を是認した。

参考:厚生労働省・有期労働契約に関する判例・裁判例

有期契約の繰り返し更新により5年を超えたときに適用される無期転換ルール

また、行政はこのような判例を受け、平成24年に労働契約法を改正しています。

特に契約社員を雇用している企業に大きな影響が生じるのは、有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申し込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるという改正内容であり、これは平成25年から施行されています。

これは無期転換ルールと呼ばれるもので、以下の記事で詳細に解説しています。

関連:無期転換ルールの対応時期は全員が2018年ではありません!

口頭で期待を持たせてもダメ!

また、「いずれは正社員にする」「ずっと更新するから」と期待を持たせる言動を行った場合には、一度も更新をしていなくとも雇い止めが無効とされる場合もあるので注意が必要です。

これは口頭、口約束だったとしても、期待させたと判断される可能性がありますので注意してください。

そもそも、無期契約労働者でも、有期契約労働者でも、労働者を採用する際には、労働条件通知書の交付が義務づけられています。

この労働条件通知書では、期間の定めのある労働者、つまり有期契約労働者の場合には、契約期間の更新の有無を明示することが求められており、ここで「更新する場合があり得る」を選んでいれば、自動的に契約満了とはみなされません。

関連:労働条件の明示義務と労働条件通知書について図解解説!

まとめ

契約社員という雇用形態は、企業にとって、正社員よりも金銭的に負担の小さなものであることは間違いありません。

しかし、労働者側にとっては正社員に比べて雇用の安定面で劣るため、労働者保護の観点から、手続き面で負担が増すのも当然です。

決して契約社員という雇用形態そのものがダメなわけではありません。

必要な手続きをしっかりしておかないと、後で揉めますし、揉めたときの司法、行政の判断は労働者保護の面が強くなるので、注意してください、ということです。

人事労務管理を行うときに、どのような雇用形態がベストかというのは会社や労働者によって異なりますので、後々のリスクも考え、雇用形態を考えてきましょう!

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